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金木犀の許嫁

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第四十話 昔の忍者その十一

「自由軒や夫婦善哉のことも」
「色々お話することあるわね」
「全部織田作さん関係だけれど」
「織田作さん自身のこともね」
「まさかね」
 夜空は真顔で言った。
「お会いするなんて思わなかったけれど」
「織田作さんご自身にね」
「そのこともね」
「お話しようね」
「電車の中でね」
 二人でこう話して道頓堀からだった。
 大坂の地下鉄に乗りそれから二人で話した、席に並んで座ってそのうえでそれぞれ神妙な顔になって話している。
「まさかだったね」
「ええ、織田作さんにお会いしてね」
「じっくりお話するなんてね」
「白華ちゃんが見てね」
「本当¥におられるのかって思ったら」
「それがね」
「俺達の前にね」 
 喫茶店の中でというのだ。
「出て来てくれるなんて」
「思わなかったわね」
「本当に幽霊になっていたんだね」
「ええ、めでたい幽霊ね」
「そうなっていたなんて」 
 それはというのだった。
「まさかと思っていたけれど」
「実際にだったわね。お亡くなりになっても」
「それでも魂は不滅だね」
「魂はあって」
 そうしてというのだ。
「人と幽霊の違いは」
「身体のあるなしだけなのよ」
 夜空は佐京に言った。
「ただね」
「それだけだね」
「何の違いもないわ」
「実際織田作さんそのままだし」
「明るくてね」
「俺達の学校でも」
「八条学園って幽霊のお話も多いけれど」
「悪い幽霊のお話ないしね」
 自分達が通っている学校にはというのだ。
「全くね」
「ええ、幽霊は怖くないのよ」
「問題はその人がどうか」
「心が怨念に凝り固まったら」
 そうなればというのだ。
「怨霊になるわ」
「日本には怨霊のお話も多いけれどね」
「吉備津の釜とかね」
 上田秋成の雨月物語にある、してはいけないと占いで出た結婚をした結果浮気性の男が怨霊と化した妻に殺される話だ。
「あるからね」
「そうだね、幽霊が怖いんじゃなくて」
「人が怖いのよ」
「だから織田作さんは幽霊でもね」
「親しみが持てたわね」
「そうだったね」
 まさにというのだ。
「本当に」
「ええ、それで織田作さん由縁の場所を巡って」
「よかったね」
「そうね」
 夜空も微笑んで頷いて答えた。 
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