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金木犀の許嫁

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第三十九話 めでたい幽霊がその八

「幽霊になってわ」
「それでヒロポン買ったんですね」
「その時からな」
「幽霊だとですか」
「言われて実際そうやしな」
「幽霊で」
「それでや」
 そうであってというのだ。
「ほんまな」
「今はですね」
「幽霊としてな」
「楽しんでおられますね」
「死んでからずっとな、それでその幽霊の暮らしがな」
 まさにそれがというのだ。
「今は気に入ってるわ」
「そうですか」
「存分にな」 
 そうであるというのだ。
「そやからこれからもな」
「こうしてですか」
「暮らしていきたいわ」
 愛する大阪の街でというのだ。
「そう考えてるわ」
「そうですか」
「存分にな。あとな」
「あと?」
「ここのコーヒーも美味いけどな」 
 織田は今度はコーヒーの話もした。
「大阪は他にもな」
「美味しいコーヒーのお店ありますか」
「よおさんな」
 こう夜空に話した。
「あるで」
「そうなんですね」
「そやからな」
「色々なお店で飲むこともですか」
「ええで」
「そうなんですね」
「コーヒーですか」
 佐京は織田の今の話を聞いて考える顔になって言った。
「実はあまりです」
「飲んでないか」
「今までは」
「好きになったら飲んだらええ」
 これが織田の返答だった。
「そうなったらな」
「コーヒーをですか」
「目は覚めるけどな」
 コーヒーを飲めばというのだ。
「そやけど薬かというと」
「違いますね」
「そや、楽しく飲むもんやろ」
「そうですね」
「そやからな」
 だからだというのだ。
「好きになったらな」
「飲めばいいですか」
「その時にな」 
「そうなのですね」
「カレーもそやろ」 
 織田は笑ってこの料理もと話した。
「自分等自由軒行ってきたな」
「はい、美味しかったです」
 夜空が答えた。
「いづも屋と夫婦善哉も行きました」
「そやな、あそこのカレーも好きやからな」
「食べるものですね」
「私はあそこのカレーが好きやからな」
 だからだというのだ。 
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