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金木犀の許嫁

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第三十九話 めでたい幽霊がその六

「ほんまな」
「外国からの観光客の人達についてはですか」
「偉そうに言える筈がない、働いてる先のお金持ち逃げしたり使い込んだり」
「そうした人もですね」
「いてな」
 大阪にはというのだ。
「私も書いてきた」
「だからですか」
「観光客がどうとか言わんわ、むしろな」
「来て欲しいですか」
「この道頓堀でも大阪の何処でもな」
 それこそというのだ。
「観てな」
「楽しめばいいですね」
「それで大阪がどう変わってもな」
 それでもというのだ。
「大阪や、大好きや」
「この道頓堀も変わってますね」
 夜空は織田にこのことを尋ねた。
「そうですね」
「ああ、私が生きてた頃とな」
「そうですね」
「特に空襲があったやろ」 
 織田はこのことも話した。
「それでな」
「ああ、大阪中が焼け野原になって」
「それでな」
 その結果というのだ。
「ほんまな」
「その時を考えると」
「色々なもんが出来て色々な人が来てくれるなら」
 そうであるならというのだ。
「ええわ」
「そうなんですね」
「賑やかで雑多で飾らんで」
 そうであってというのだ。
「笑いが絶えんで食べものが美味い」
「そうならですね」
「大阪はどんな風になってもな」
「お好きですか」
「そして大阪が今私が言うた街でない筈がない」
 賑やかで雑多で飾らず笑いが絶えず食べものが美味いというのだ、織田はコーヒーを右手に笑って話した。
「そやからな」
「織田作さんはずっとですね」
「大阪が好きでな」
 そうであってというのだ。
「おるで」
「そうなんですね」
「そしてな」
 そのうえでというのだ。
「楽しんでいくわ」
「この街を」
「そうするわ。あともうヒロポンはやってへん」
 このことも話した。
「そもそも売ってへんさかいな」
「今はですね」
「もう死んでな」
 そうなってというのだ。
「その時にな」
「ヒロポンは禁止になったんですか」
「あれは危ないさかいな」
 織田はヒロポンの話もした。
「今で言う覚醒剤やろ」
「そうなんですよね」
 夜空が暗い顔で応えた。
「中毒になってしかも身体を蝕む」
「打ったら確かに元気が出てな」
 そうなりとだ、織田は話した。
「結核でボロボロの身体でもや」
「書けますね」
「そや、しかしな」
 夜空にそれでもと話した。 
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