金木犀の許嫁
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第三十八話 狭い道を歩いてその十一
「皆さん残念だったと思うけれど」
「戦ってそうして」
「その戦国時代を終わらせたよ」
「そうだったわね」
「けれど本心は戦わないで」
「皆で平和に暮らしたかった」
「太平の世でね」
「そうだったわね」
「けれどそれが出来なくて」
それでというのだ。
「薩摩に逃れてから」
「出来る様になったわね」
「多分戦のない時がね」
幸村と十勇士達にとってはというのだ、そしてその時期は実は長いものであったことも事実である。
「一番幸せだったよ」
「その時が」
「皆で和気藹々としていられて」
「皆さんお酒が好きで」
「そう、よく十一人で集まってね」
そうしてというのだ。
「車座になって飲まれたそうだよ」
「そうなのね」
「車座になって」
そうしてというのだ。
「そのうえで」
「そうよね」
まさにというのだ。
「楽しく飲まれていたわね」
「伝え聞くところによるとね」
「そしてそうした時が」
「一番幸せだったのね」
「そうだったらしいよ」
「そうなのね」
「戦で有名になるより」
そこで天下無比の武名を挙げてもというのだ。
「無名でもね」
「平和で楽しく暮らせたら」
「よかった筈だよ」
幸村達はというのだ。
「本当にね」
「だったら」
夜空は佐京の話をここまで聞いて言った。
「子孫の私達もね」
「平和に暮らせたらいいね」
「それで別にね」
「恰好よくなくてもいいね」
「ええ、別にね」
これといってというのだ。
「その筈よね」
「恰好よくなくてだらしないところがあっても」
「それでいい加減でもね」
「平和で仲良く暮らせて」
「そしてね」
そのうえでというのだ。
「仲良く出来て」
「二人で」
「それで最後ほっと出来たら」
まさに織田作之助の作品の様にというのだ。
「もうね」
「いいね」
「そう思うわ」
まさにというのだ。
「私はね」
「それがいいね、努力していい人になることだけれど」
佐京はそれでもと応えた。
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