おぢばにおかえり
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第八十三話 回廊ひのきしんその二十五
「どうしても」
「それでなんです」
「ここが一番しんどくて」
「ここを抜けたら」
新一君は汗を拭きつつ言いました。
「また楽になりますね」
「そうそう、その楽になった時だけじゃなくて」
私は新一君に笑顔で応えました。
「坂を越えたね」
「その時も嬉しいんですよね」
「どうして坂になっているか」
私はこのことをお話しました。
「下に人が通る場所があるから」
「それで、ですよね」
「廊下が坂になってるのよ」
「そこを歩いてる時は何も思わないですが」
「もっと言えば廊下を歩いてる時もでしょ」
私は新一君に言いました。
「何も思わないでしょ」
「そうですね、本当に」
「それがね」
これが、です。
「ひのきしんをさせてもらうと」
「わかりますね」
「そうよ、このことはね」
「覚えておくことですね」
「ええ、やることによって」
その人がその時にです。
「色々認識が変わるのよ」
「そういうものですね」
「それが世の中というか」
新一君にどうも偉そうなことを言っているかも、こうまんかもと思いながらお話しました。こうしたことは気を付けないとも思いつつ。
「人のやることかしら」
「その時その人で変わりますね」
「同じ場所でもね」
「もっと言えばやる人にもよって」
「それぞれの事情もあってね」
私は新一君に答えてお話しました。
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