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金木犀の許嫁

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第三十七話 織田作好みのカレーその五

「大坂の陣でも戦って」
「幸村公はそれ以前も大坂におられたけれど」
「その時もおられたけれど」
 そえでもというのだ。
「そうしたことは知らなかったよ」
「神戸にいるとね」
「神戸のことは詳しくなっても」
 それでもというのだ。
「大阪はね」
「知らなくなるわね」
「そうなるね」
「私もね」
 夜空は自分のことも話した。
「実はあまりね」
「知らないんだ」
「そうなの」
 こう言うのだった。
「まだまだね」
「結構知ってるんじゃ」
「いや、まだまだよ」
 佐京に笑って話した。
「本当にね」
「そうなんだ」
「そう、だからね」
 それでというのだ。
「まだまだ勉強yが必要ってね」
「思ってるんだ」
「そうなの。それでその船場にね」
 そこにとだ、夜空はあらためて言った。カレーでお腹は膨れたがそれでも鰻丼を食べられると思ってだ。
「今から行きましょう」
「それじゃあね」 
 佐京は笑顔で頷いた、そうして船場にもだった。
 二人で行った、そしてその店に行き鰻丼を食べたが。
「このお店もね」
「美味しいわね」
「うん」
 佐京は夜空と向かい合って座って食べながら笑顔で頷いて言った。
「とてもね」
「やっぱり名店の後を継いだ」
「そうしたお店だから」
「それでね」 
 その為にというのだ。
「美味しいのよ」
「伝統を受け継いでいるから」
「だからよ」
 夜空は食べながら答えた。
「美味しいのよ」
「伝統だね」
「やっぱりあるのよ、伝統って」
 こう呼ばれるものはというのだ。
「それでね」
「味もだね」
「受け継がれてね」
 そうであってというのだ。
「それでね」
「こうして今も食べられるんだね」
「そうなのよ」
 こう話すのだった。
「今もね」
「有り難いね」
「難波の方にはもうないけれど」
「こうして今も食べられる」
「いいことよね」
「そうだね、ただね」
 ここで佐京は少し苦笑いになった、そうしてその鰻丼を食べながらこんなことも言ったのであった。 
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