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今度こそ、成し遂げてみせる【未完】

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第2話

 〈ヒルデコピーSIDE(三人称含む)〉

 某在日米軍基地。

 友里が任務達成の電子ハンコを押す。
 彼女に後ろには、シンフォギア装者の少女二人とカウンターサイド能力者ヒルデが居た。
 
 友里がハンコを押したことで、これにてソロモンの杖を護送する任務は本当に無事終了した瞬間だった。

 「これで搬送任務は完了となります。ご苦労様です」
 
 「ありがとうございます」

 友里は朗らかな雰囲気で向こうの代表と握手を交わす。

 ソロモンの杖が入っているケースは、ウェル博士の後ろに立つ軍人が両手で持っている。
 
 護送任務がやっと終わった。
 嬉しい限りだ。

 「御三方、確かめさせていただきましたよ。皆さんがルナアタックの英雄だと呼ばれることが、伊達ではないことがね」

 ウェル博士が一歩前に出て、響とクリス、私へ話しかけて来た。
 響とクリスは、佇まいと正した。
 
 この男、苦手だ。
 喋り方も苦手だ。
 浮かべている笑顔も苦手だ。

 私のセンサーが感じるのだ。
 この男、悪役ではないかと。

 まぁ、私は大人だからな。 
 敬意を込めて、白髪ウェルと呼ばせて貰おう。
 大人な私は内心で留めているのは、なんて素晴らしき心を持っているのか。褒めて欲しいくらいだ。

 「英雄!私達が!?」

 響は態度でも分かるくらい、だらしない表情となっていた。
 …おい、響?

 「いやぁ~、普段誰も褒めてくれないので、もっと遠慮なく褒めてください!」
 
 ヒルデは絶句した。
 マジか。

 響はシンフォギア=ガングニールを纏える。
 それは私は勿論、響の事を知る者一同は知っている。

 誰かの為に力を使える事そして自身の身を削る行為に、一種の優越感を感じているのだろう。
 自分は特別なんだと。

 「寧ろ、褒めてちぎってください♪」
 
 だがな、響。
 褒めて褒めて〜、とおちょくるのは、な?
 
 「ホラホラ〜♪痛いっ!?」

 テンションが上限突破寸前だった、響の頭を軽く叩いた。
 響は後頭部を痛そうに抑える。
 そんな声に出さなくとも…。

 「痛った(いった)〜、何するんですか、ヒルデさん〜」

 「馬鹿者が、調子に乗りすぎだ」

 「そうだぞ、そういうところが褒められないんだよ」

 「二人共、酷い!」

 全く悪びれていない響。
 …すぅ〜。

 「次は拳骨を食らわせてやろうか?」

 「ヒルデ、それはアタシもやるぜ」

 「すみませんでしたー!」

 「彼にも謝罪だ」

 「すみませんでした、ウェル博士!」

 しっかり反省するように。
 しなかったら拳骨だ。

 「ハハハ、いえいえ、元気で宜しいですね」

 白髪ウェルは微塵も気にしていない。
 寧ろ、微笑ましく響の事を見つめていた。
 彼は続けて言う。

 「世界がこんな状況だからこそ僕たちは英雄を求めている!そう―」

 穏やかな表情から一転して、狂気に等しい表情となる。

 「-誰からも信奉されるっ!偉大なる英雄の姿をっ!!」

 「アハハ、それほどでも〜」

 反省しているんだよな、響?
 こんな風に響は浮かれているが、クリスと安里は訝し気な顔で白髪ウェル博士を見つめていた。奇遇だな二人共、私も訝しむ顔をしているぞ。

 「皆さんが守ってくれた物は、この僕が、必ず役立ててみせますよ」

 「不束なソロモンの杖ですが、どうぞよろしくお願いします!」

 「頼んだからな」

 「頼んだぞ」

 響とクリス、そして私は、白髪ウェルの発言にそう応えた。
 こんな胡散臭い男にソロモンの杖を託すのは遺憾だが、これでも優秀な博士と二課は言っていたからな。
 
 役立てなければ、私が管理してやる。
 管理局だけに!……寒いな。

 「では、僕はこれにて」

 ウェル博士は軍人と共に、基地内へと向かっていった。
 
 かくいう二課一行も基地の門へと歩を進め、やがては門を通過し基地外へと出た。
 門を通過した頃、1機の軍用ヘリが基地から飛び去った。

 「無事に任務も完了だぁ、そして…」

 クリスはニヤリっと口を三日月に変えた。

 「うん!この時間なら翼さんのステージにも間に合いそうだ!」

 楽しみでしょうがない響。
 1分でも早く、行きたくてしょうがない。
 彼女はうずうずとしていた。

 響を呆れたように見つめていたクリスも、楽しみで仕方なかった。

 そんな様子を微笑ましく見守っていた安里は、口を開いた。

 「みんなが頑張ってくれたから、司令が東京までヘリを出してくれるみたいよ」

 「マジっすか!」

 響が喜んだ瞬間、突然基地から爆発が起き、大型のノイズが出現した。
 タイミングピッタリ過ぎる。

 「マジっすかぁ…!?」

 二度目。
 だがその気持ちは分かる。
 大型のノイズが現れたのだからな。

 「大マジだ、大急ぎで行くぞ!」

 安里をその場に残し、響とクリスは急いで基地へと向かう。
 私は安里を守る義務がある為、行くことは出来ない。二人共、すまんな。

 こうして、響とクリスが基地に着いた時には大多数の軍人は炭化しており、基地も滅茶苦茶となり、ウェル博士とソロモンの杖が行方知れずとなってしまった。

 〈ヒルデコピー2SIDE(三人称含む)〉

 「そうか、白髪ウェルとソロモンの杖が行方知れずとなってしまったのか」

 『あぁ、全く、何処に言ったのやら』

 同僚であるコピーから念話がやって来た私は、夜飯を作りながら話をしていた。
 コピーによると某在日米軍基地の事態収拾は終え、現在は二課のヘリに乗り、東京の某ステージに向かっているとのことだ。

 東京の某ステージ。
 二人の歌姫が歌う場所であり、夢の祭典が行われる場所でもある。
 
 『ではそろそろ切るぞ』

 「了解だ」

 …ふぅ、危なかった。
 さて、料理のほうは……これは、出来上がったので、いいんだよ、な?

 出来上がった料理を、用意していた二つの皿に盛る。

 リビングに持っていき、机に置く。
 
 コップに水を注ぐ、二人分を。

 「夜飯が出来たぞー!」
 
 『はーい! 今行きまーす!」

 さて、私は先に食べておくか。
 いただきます。……微妙な味だった。 
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