夜の荒野
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第一章
夜の荒野
カウボーイは荒仕事である、何百頭もの牛達を目的地まで連れて行く。荒野を猛獣や強盗団それに自然環境とりわけ牛達の暴走に気を付けつつ馬に乗って荒野を進んでいく。
その様にして荒野を進むことも多い、この時ビリー=オーネル両親がアイルランドから来てすぐに生まれた彼もその荒野にいた、カウボーイの恰好をして馬に乗ってだった。
荒野の彼方に沈む赤い大きな太陽を見つつだ、仲間達に言った。やや小柄でまだ幼さの残る顔立ちのくすんだ茶髪に薄い青の目の青年である。
「じゃあな」
「ああ、これでな」
「今日は休憩だな」
「飯食ってな」
「交代で寝ような」
仲間達も応えた、そうしてだった。
彼等は休憩に入った、一緒に来ている料理人が作ってくれたベーコンを焼いたものと林檎それに固いパンを口に入れてだった。
ブリキのコップで水を飲んだ、オーネルはそれが終わってから隣にいるダグラス=ホーンアフリカ系の自分と同じ歳の大柄な彼に言った。
「この調子だと三日後だな」
「ああ、目的の街まで着くな」
ホーンは口の中に入ったベーコンの切れ端を指で取りつつ応えた。
「そうだな」
「いい感じだな」
「今のところコヨーテが出てもな」
「牛の回りうろついてすぐに消えるしな」
「盗人達も出ないしな」
「いいな、いつもこうだといいけれどな」
オーネルは笑って話した。
「特に牛が暴れないとな」
「ああ、一匹暴れだすとな」
ホーンは夜になり次第に膝を突いて眠りに入ろうとしている彼等を見つつ話した。
「もうそれがな」
「群れ全体に及ぶからな」
「ああなるとな」
「急いで全員で銃を上に撃ちまくってな」
「音で驚かせるしかないからな」
「それでも大人しくならないとな」
オーネルはその時のことを話した。
「もうな」
「ああ、俺達も牛の群れに踏み潰されるからな」
「群れの突進の前にいたらな」
その時はというのだ。
「乗ってる馬ごとだ」
「ミンチだ」
「本当にそうなるからな」
「今回それもなくてな」
「いいな」
「ああ、しかしだ」
ここでだ、オーネルは顔を顰めさせた、そのうえでホーンに話した。
「今夜は冷えるな」
「格別にな」
ホーンも顔を顰めさせて応えた。
「冷えるな」
「そうだよな、こうした時はな」
「毛布をいつもより多く出してな」
「くるまって寝ないとな」
「さもないとな」
そうしなければというのだ。
「もうな」
「風邪ひいちまってな」
「まともに仕事出来なくなるからな」
「今夜は毛布沢山出して」
「そしてな」
そのうえでというのだ。
「寝ような」
「そうしような」
こう話して実際にだった。
二人も他のカウボーイ達も自分達の食料や荷物それに予備の銃や弾丸を入れてある幌馬車からだった。
毛布をいつもより多く出した、そうしてそれにくるまってだった。
順番で寝ることにした、一人起きて見張りをすることが決まっていたのでそうした。そうしてだった。
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