氷の都
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第二章
「この街は奇麗ですね、ですから」
「ですから?」
「はい、この街の写真をです」
フェレンツに笑顔で話した。
「是非です」
「撮りたいですか」
「そう思いました、ですが」
ここでだ、コルテスはカメラを出そうとしたところで自分の手を止めた、そのうえで言うのだった。
「止めましょう」
「またどうして」
「この街の歴史を思い出しましたので」
「ああ、そうですか」
フェレンツもその言葉に頷いて述べた。
「それはありますね」
「そうですね」
「この街は築いた時にです」
「多くの犠牲が出ましたね」
「北極圏の泥濘の場所に街を築いたのです」
「それも十七世紀初頭に」
「それではです」
そうしたことを行えばというのだ。
「寒さによって。しかも疫病と餓えもあり」
「多くの犠牲が出ましたね」
「そうして築かれロシア独特の血生臭い陰謀劇に)
政治のそれにというのだ。
「暴動が起これば」
「すぐに武力で鎮圧でしたね」
「そちらでも血が流れ」
この街においてはというのだ。
「そして第二次世界大戦では」
「ドイツ軍に包囲され」
「餓えによってです」
「多くの犠牲が出ましたね」
「そうでした、そうした街なので」
「若し写真を撮れば」
「イギリス人が好きなお話になります」
幽霊話で有名な彼等の、というのだ。
「そうなります」
「そうですね」
コルテスも頷いて応えた。
「若しかすると。まあ私は共産主義であるので」
「幽霊はですね」
「信じていないことになっています」
笑っての言葉だった。
「宗教を否定していて」
「無神論で」
「そしてそうした存在もです」
幽霊といったものをというのだ。
「非科学的であるので」
「信じておられないですね」
「そうなっていますので」
だからだというのだ。
「信じないということで」
「やっていかれますか」
「はい、ですが」
フェレンツに笑顔で話した。
「写真を撮らずとも」
「それでもですか」
「スマートフォンで動画や画像を撮って」
「そうされてですか」
「そしてです」
そのうえでというのだ。
「キューバに送ります、そしてです」
「そうしてですか」
「皆に紹介します」
母国キューバにいる彼等にというのだ。
「そうします」
「そうですか」
「キューバは暑い国ですね」
「そうですね、ですから観光も」
「我が国の重要な産業です」
こう言うのだった。
「ソ連があった頃は」
「ソ連人民にとってキューバ旅行は最高のプレゼントでしたね」
「そうでしたし今もです」
「観光を言われていますね」
「暑くて景色が奇麗で」
そうした国でというのだ。
「陽気で親しみやすい国民と音楽とスポーツと」
「色々ありますね」
「トロピカルなフルーツにジュースにカクテル」
「それがキューバの観光ですね」
「スポーツ観戦も出来ます、ただ」
コルテスは笑ってこうも言った。
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