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電気花

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第一章

               電気花
 家の物置を掃除しているとだった。
 久慈秋信、定年して今は穏やかに暮らしている彼はあるものを見付け妻の真美子に言った。二人共皺だらけの穏やかな顔で白髪である。
「懐かしいものを見付けたよ」
「懐かしいもの?」
「これだよ」
 こう言ってあるケースを出した。
「昔買った」
「あら、まだあったのそれ」
 真美子は夫が出したものを見て少し驚いた声をあげた。
「忘れていたわ」
「わしもだよ、あったことすらな」
「忘れていたわね」
「そいうだったよ」
 まさにというのだ。
「本当に」
「捨てたともね」
「思わなかったな」
「これはね」
「そんなものだから」
 夫はさらに言った。
「まだ動くか」
「わからないわね」
「試しにな」
 それでというのだ。
「動かしてみるか」
「そうするのね」
「まだ掃除中で」 
 家のというのだ。
「それが終わって盤飯食ってな」
「お風呂に入って」
「ゆっくりしてからな」
 それからというのだ。
「観ようか」
「そうね、ゆっくりとね」
「そうしよう」
 夫婦で笑顔で話してだった。
 そのうえで実際に二人で家の掃除をしていった、その出したものは居間に置いておいた。そうして二人でだった。
 晩飯を食べて風呂に入ってだ、夫はそれをダンボールの箱から出した、すると百合に似たガラスの花があった。
 その花を見てだ、夫は妻に話した。
「それじゃあな」
「これからね」
「コンセントを入れて」
「お部屋も暗くして」
「そうして」
 そのうえでというのだ。
「スイッチを入れようか」
「そうしましょう、ただ」
 ここで妻は言った。
「何年前のものかしら」
「何十年でしょ」
「それだけか」
「四十年はね」
 それだけはというのだ。
「昔でしょ」
「ああ、幹夫が十歳の時だったか」
 二人の息子でもう立派な初老の管理職だ、子供の頃の面影はなくでっぷりと太り奥さんから成人病にならない様に言われている。
「買ってやったな」
「そうだったわね」
「だからな」
「もう四十年ね」
「それ位前のものだな」
「今動くかしら」
「それを試すか」
 こう妻に言うのだった。
「これから」
「そうしましょう、あの頃はね」
「よく三人で見たな、時々ね」
 妻はその頃のことを懐かしく思い出しつつ話した。
「リビングで灯りを消して」
「真っ暗にしてな」
「その中でスイッチ点けて見たな」
「そうしたわね」
「それであの頃みたいに」
「動けばいいわね」
「本当にな」
 そんな話をした、そしてだった。
 夫は実際にそうしてみた、勿論灯りは消してそうした。すると花は静かに動きだしそれと同時にであった。
 赤く輝きだしそれからだった。 
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