猫がいると
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第一章
猫がいると
その寺には多くの猫がいる、保護猫達を引き取り寺全体で育てもう二十匹はいる。その状況を見てだ。
大学を出て僧侶の資格を得て今は住み込みで修行中の新田孝仁法名を明青という彼は師匠の明赤を法名とする山本文治に尋ねた。二人共髪の毛があり明るい顔立ちであり中背ですらりとしているが山本の顔には年齢を感じさせる皺がある。
「あの、このお寺の猫達は」
「全て保護猫ですね」
「猫達を救ってですね」
「寺で飼うこともです」
「御仏の道ですね」
「命です」
山本は新田に寺の境内を共に掃除しつつ話した。
「ですから」
「皆引き取って」
「育てています」
「一生ですね」
「そうです、猫達はです」
その彼等はというと。
「元々です」
「寺にいましたね」
「仏具を荒らす鼠達を取ってくれるので」
だからだというのだ。
「ですから」
「それで、ですね」
「古来よりです」
「お寺にはいましたね」
「今は鼠もいませんが」
「このお寺にもですね」
「猫がこれだけ多いと」
見れば猫達が多くいる、ただ脱走して外に出て捕まったり交通事故に遭わない様にリードを付けている、長いリードがそれぞれの柱に括られている。
「流石に」
「この寺は古来よりです」
「こうして多くの猫を置いて」
「鼠を退けています」
「最初から来ない様に」
「猫が多いと」
そうであるならというのだ。
「最初からですね」
「鼠は寄り付きません」
「そうなりますね」
「鼠も愚かではないので」
その為にというのだ。
「天敵の多い場所にはです」
「近寄らないですね」
「左様です」
そうだというのだ。
「ですから」
「鼠はいないですね」
「そうです、あとです」
「あと?」
「脱走しない様にリードを付けていますが」
猫達の首にはというのだ、見れば猫の毛は色々で白や黒、茶色もいれば虎毛にサビ猫に三毛猫もいる。
「これは古来はです」
「普通でしたね」
「はい」
そうだったというのだ。
「こうして飼っていました」
「そうだったんですね」
「ですが紐を付けていますと」
「はい、昔はリードでなく」
「紐でして」
それを首に付けていたというのだ。
「そうでしたが」
「それじゃあ自由に動けなくて」
「鼠を捕るにも動きが制限されますね」
「そうですね」
「ですから豊美秀吉が」
天下人としてあまりにも有名なこの人物がというのだ。
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