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花を求めて

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第一章

                花を求めて
 フランス王フランソワ一世は極めて大柄で体格も堂々としている、王としては優れているが彼には一つの趣味があった。
「わしの好きなものは知っておろう」
「お花ですね」
「その通りだ」
 廷臣の一人に笑って話した、小さめの目に黒い顔の下の方や口元を覆っている髭が実に印象的である。
「わしは兎に角だ」
「お花がお好きで」
「だから昨日もだ」
 廷臣に笑ったまま話した。
「三人程な」
「相手に選ばれましたね」
「そうしたのだ」
 こう言うのだった。
「そして楽しんだ」
「そうでしたね」
「王妃に寵妃にな」
 それにというのだ。
「その他にもな」
「美女となればですね」
「誰でもだ」
 それこそというのだ。
「わしは相手に選ぶぞ」
「そうされますね」
「誰かの妻であろうとも構わぬ」
 一切というのだ。
「わしは王だ、だからな」
「この国の女ならですか」
「誰でも相手に選べる、だからだ」
「これからもですか」
「相手に選ぶぞ、先日だ」
 廷臣にこうした話もした。
「とある貴族の屋敷に入ってな」
「その奥方とですか」
「楽しんでその貴族が妻が他の男と聞いて飛んで来たが」
 浮気相手を成敗せんとだ。
「わしが出てやって無礼者、と一喝してやってだ」
「終わりでしたか」
「そうであった」
 誇らしげに笑って話した。
「それでな、では今日も明日もな」
「お花をですか」
「その手に取って楽しもう」
 こう言ってだった。
 王は日々国中の美女それが誰であっても相手に選んで楽しんでいった。その話を聞いて彼と常にあらゆることで対立している神聖ローマ皇帝カール五世スペイン王でもありそちらではカルロス一世と呼ばれる彼はその面長の顔、鷲鼻で目が小さく顎がやけに前に出て髭に覆われたそれを顰めさせて言った。
「好きな者ではないが今のうちに悔やみの言葉を考えておくか」
「フランス王は長くないのですか」
「そうなのですか」
「非常に頑健な身体ですが」
「それでもですか」
「間違いなくな。かく言う朕も身体はよくないが」 
 ビールを飲みつつ話した。
「この酒のせいでな」
「あの、ビールがお好きですが」
「痛風はそのせいだとか」
「宮廷の医師も言っています」
「だが好きだからな」
 そのビールがというのだ。
「飲んでいる、だがフランス王はな」
「長くないですか」
「そうなのですか」
「あの頑健な身体でも」
「そうだ、今のうちに悔やみの言葉を考えておくか」 
 こんなことを言うのだった、そしてだった。
 フランス王は日々様々な美女達との快楽の日々を楽しんでいた、まさに王の力を以て誰の妻であっても娘であっても相手にさせた。 
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