氷漬けの生きもの
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第一章
氷漬けの生きもの
コールドスリープの技術を聞いてだ、小学五年生の高塚泰は言った。色白で耳が大きく猿顔で黒髪は短く中肉中背である。
「それじゃああれか」
「あれって何だ」
「いや、氷漬けにしたらな」
その話をした中一の兄の和也に話した、兄弟で実によく似た顔立ちだ。
「氷が溶けたら生きてるか」
「コールドスリープがあるならか」
「生きたままそうなったら」
それならというのだ。
「氷が溶けたら」
「それはないだろ」
即座にだ、兄は弟に言った。家のテレビでその技術の話を観ながら。
「流石にな」
「無理か」
「コールドスリープは科学のな」
この分野のというのだ。
「技術が使われていてな」
「それでか」
「ああ、だからな」
それでというのだ。
「ただ凍らせるんじゃないんだ」
「色々な技術が使われてか」
「長く保たれるんでな」
そうであってというのだ。
「ただ生きたまま氷漬けになってもな」
「死ぬか」
「凍った時点でな」
まさにその時点でというのだ。
「身体が冷え切って内臓とか脳味噌の動きも止まってな」
「ああ、そうなったら死ぬな」
泰もまさにと頷いた。
「そうなったら」
「そうだろ」
まさにというのだ。
「それでな」
「氷漬けだと死ぬか」
「そうだよ、コールドスリープはな」
この技術はというのだ。
「本当にな」
「凍らせるだけじゃないか」
「そうだよ」
兄はまた弟に話した。
「そうだと」
「そうなんだな」
「ああ、また別だよ」
こう言うのだった、泰は兄のその言葉を覚えていた。
それで大人になってだった、就職し結婚し。
息子の大和、子供の頃の自分そっくりの外見の小学五年生の彼をだ。
動物園の象の資料館に連れて行くとだ、こう言われた。
「マンモスって寒いところにいたんだ」
「そうだよ」
息子にその通りだと答えた。
「象だけれどな」
「象って暑いところにいるよね」
「今はな」
こう息子に答えた、隣には小柄で茶色のショートヘアの垂れ目でスタイルのいい小柄な妻の楓が立っている。
「そうだよ」
「そうだよね」
「けれどな」
そのマンモスの文章を一緒に読みつつ話した。
「マンモスがいてな」
「寒いところにいたんだね」
「そうだったんだ」
こう息子に話した。
「かつてはな」
「そうなんだね」
「そしてな」
父は目の前の氷漬けのマンモスも見て話した。
「ああしてな」
「氷漬けになることもあったんだ」
「ああ、ただな」
「ただ?」
「もう死んでるからな」
今は理科の先生になっている兄との会話を思い出して話した。
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