蛮人と思えば
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第二章
「油断はできん」
「はい、では」
「用心を重ね」
戦おうと話す彼等だった。そして朝鮮半島に入り。
日本軍と幾度も激しい戦を繰り広げた。李の予想通り日本は強かった。
鉄砲の数も尋常ではなく槍は長い。しかも刀の切れ味は恐ろしいまでだった。
具足は動きやすいうえに頑丈だ。数も陣形もしっかりとしている。
その彼等と幾度も戦い李は野営の陣中でまた部下達に言った。
「強いと予想はしておったがな」
「予想以上ですな」
「これだけ強いとは」
「まさか」
「うむ、尋常な強さではない」
李は水を飲みながら部下達に話す。
「女真よりも強いやもな」
「そして倭寇よりも」
「さらにですな」
「女真はともかく倭寇は所詮は賊よ」
正規の軍ではないというのだ。
「軍勢とはまた違う」
「だからですか」
「さらに強いですか」
「そうじゃ。とにかく日本は強い」
李は苦々しげながらも確かな声で言う。
「だがそれ以上に頭もよいな」
「確かに。戦上手ですな」
「陣もいいですし」
「馬の使い方も巧みです」
「そうした意味でも強いですな」
「不意を衝くのもしょっちゅうですし」
「狡賢いのではない」
李はまた言った。
「智謀じゃ。それがあるわ」
「蛮人とは思えませんな」
ここで部下の一人がこんなことを言った。陣中は何重にも衛兵が立てられ周りには柵がある。全ては日本軍に備えてだ。
「どうも」
「ふむ」
李もその部下の言葉を聞いて声をあげた。
「そうやも知れぬな」
「将軍もそう思われますか」
「女真や倭寇とは明らか違う」
「ですな。孫呉の兵法にも通じていますし」
「動きがその都度理に適っておる」
「ではやはり」
「捕虜達の身なりも態度も卑しくはない」
そこからも言う李だった。
「若しやと思うがな」
「日本の者達は蛮人ではありませぬか」
「そうやも知れぬ。だがはっきりそうとは言えぬ」
それはまだだというのだ。
「どうもな。だからじゃ」
「だから?とは」
「少し調べたい」
部下達を見回して言った。
「ではじゃ」100
「どうされますか、それでは」
「調べられるにしても」
「日本に使者を送る」
そうするというのだ。
「そして陣中を見るとしよう」
「将軍ご自身が行かれるのですか」
「そうされますか」
「うむ、そうする」
自ら入るというのだ。
「わしのこの目で確かめる」
「しかしそれはかなり」
「危ういのでは?」
部下達は彼の今の言葉に怪訝な顔で返した。
「若し蛮人なら将軍はその場で首を刎ねられます」
「礼節を知らぬ蛮人なら何をするかわかりませぬぞ」
「ですからそれはどうも」
「危険だと思うのですが」
「何、若し襲い掛かって来るなら斬りそして去るまでよ」
李とて武人だ。己の剣と馬の腕には自信があり言う。
「そうするまでじゃからな」
「ではそのうえで」
「将軍もですか」
「日本の陣地に入りそして見る」
そうするというのだ。この話をしてだ。
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