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アモンの知恵 

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第一章

                アモンの知恵 
 アモンは神々の中では目立たない、だが。
 その力は案外強く神々の中では一目置いている者もいる、顔立ちは整っている青年の姿をしている。
 彼は何も喋らずだ、そのうえでだ。
 常に黙々と話していた、その彼にだ。
 神々の主である太陽神ラーはある時彼に尋ねた。
「そなたの知恵だな」
「何がでしょうか」
「目立たずだ」 
 青い肌の青年の彼に言った、見ればその頭には二本の羽が付いた縁のない帽子があり銅の鎧を着けている。
「これといって話さず常に学んでいる」
「書を読み」
「それがだ」
 彼のそうした振る舞いがというのだ。
「まさにな」
「私の知恵ですか」
「目立たずにいればだ」
 そうすればというのだ。
「何かされることもない」
「他の神々から」
「目立つからだ」
 そうであるからだというのだ。
「何かとな」
「攻撃されたりすると」
「そうだ、しかしだ」
 それがというのだ。
「そなたの様にだ」
「目立たないならですね」
「気付かずだ」 
 そうしてというのだ。
「何もされない、そして喋らないとな」
「そうもすれば」
「尚更だ」
 まさにというのだ。
「目立たずな」
「何もされないと」
「そしてその中でな」
 ラーはアモンにさらに話した。
「学んでいくとな」
「書を読み」
「何かと見分を広め」
 そうしてというのだ。
「多くのものを知っていくとな」
「よいというのですね」
「己が高まっていく、それがだ」
「私の知恵ですか」
「自覚はしているか」
「いえ」
 アモンはラーに静かな声で無表情で答えた。
「私はそうした性分であるだけで」
「そなたがしたい様にか」
「振る舞っているだけなので」 
 だからだというのだ。
「これを知恵とはです」
「思わっていないか」
「はい」
 こう答えたのだった。
「私は」
「そうか、しかしな」
「それでもですか」
「それがそなたの知恵だ、その知恵をだ」
 ラーは無表情の神に微笑んで話した。
「これからもな」
「備えておくことですか」
「そうすればな」
 ラーはさらに話した。
「そなたは大きな力を持つ様になる」
「この私が」
「そして神々の危機を救う時も来るだろう」
 こう言うのだった、だがアモンはやはり目立たず喋らず黙々と学んでいくだけだった。そして多くの力を備えていっていたが。
 ある時エジプトを雨が降らず大きな旱魃が襲った、神々はそれを見て何とかしようとしたがその時にであった。
 アモンは神々にだ、こう言った。
「これなら」
「この状況なら?」
「どうだというの?」
「ナイル川の流れる水を増やせば」 
 そうすればというのだ。
「それで済む」
「旱魃をなくせる」
「そしてエジプトを救える」
「それが出来るから」
 こう言うのだった。
「心配しなくていい」
「そうなのか」
「それならナイルの水を増やそう」
「それでエジプトが救われるなら」
「そうしてみましょう」
 神々は頷いた、そして実際にそうしてみるとそれで旱魃はなくなりエジプトは救われた。そしてだった。 
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