戦前の野球
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第二章
ここで二人は隻を立った、試合が終わった今いても球場の職員の人達の掃除の邪魔になると思ってだ。
それで球場を後にしてだ、阪神の駅に向かいつつさらに話した。
「そうしてね」
「日本だけじゃなくて」
「台湾と半島からも来て」
「野球していたのよね」
「だったら」
呉はここでこう言った、丁度球場の中の出口に向かう道を進んでいる。
「台湾の野球選手も」
「戦前だったらね」
伊月もこの時代ならと答えた。
「学生時代はね」
「高校野球に参加していたかも知れないわね」
「そして」
そのうえでというのだ。
「そこからね」
「日本のプロ野球に入っていたかもね」
「日本人としてね」
「阪神だと」
呉は今自分達がいる甲子園球場を本拠地としているチームのことを話した、昭和十年から存在しているチームだ。
「郭季さんね」
「ピッチャーだったわね」
「あの人も助っ人じゃなくて」
「日本人でね」
「普通に入団していたわね」
「当時は台湾の人達も半島の人達も」
どちらの人達もというのだ。
「日本人で」
「それでね」
「学校に通っていて」
「野球をしていたから」
「だからね」
そうであってというのだ。
「もうね」
「普通にね」
「日本人として野球していたわね」
「昔のままだったらね」
こう二人で話した、そしてだった。
球場を出たところでだ、呉は伊月に話した。
「呉ちゃんと同じ苗字の人だけれど」
「呉さん?」
「阪神にもね」
甲子園球場を見上げつつ話した。
「台湾からの選手がいて」
「呉っていったの」
「ダイナマイト打線あったでしょ」
「阪神の代名詞ね」
「実際はね」
伊月はダイナマイト打線という存在には少し苦笑いで話した。
「阪神ってピッチャーよね」
「そっちのチームよね」
呉もまさにと答えた。
「打つシーズンなんてね」
「圧倒的に少ないでしょ」
「ピッチャーのチームでしょ」
「先発、中継ぎ、抑え全部ね」
「何時でも揃ってるわね」
「左右でね」
「ピッチャーには困ることがないわね」
阪神はというのだ。
「殆ど」
「弱い時だってね」
「投手陣はよかったわね」
「今だってね」
伊月は今日の試合を振り返って話した。
「ピッチャーが踏ん張って」
「それでね」
そうであってとだ、呉も応えた。
「今日勝ったわね」
「だからダイナマイト打線はね」
阪神の代名詞の様になっているがとだ、伊月は話した。暮を甲子園球場からある場所に誘いながら。
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