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媽祖

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第三章

「賊達を倒して」
「そのうえで」
「そうなりました、それに」
 若い官吏はさらに話した。
「ご子息の方々も」
「無事ですか」
「お二人も嵐に遭われましたが」
 それでもというのだ。
「やはりです」
「無事にですか」
「港に着かれました」
「そうですか」
「左様です、このことをです」
「伝えてくれたのですね」
「はい」
 そうだというのだ。
「そうした次第です」
「わかりました」
 こう官吏に答えた。
「そのことは」
「はい、それでは」
 官吏はここまで話してだった。
 黙娘の母に一礼してから役所に戻った、その話の後でだった。
 程なくして兄達と父は家に帰って来た、母は彼等を出迎えてから彼女に言った。
「これはね」
「私が夢の中でなの」
「三人を助けたからよ」
 嵐からそれぞれが乗っている船をというのだ。
「それでよ」
「助かったのね」
「そうよ」 
 まさにというのだ。
「そうなったのよ、これはね」
「これは?」
「あんたが持っている力は並のものじゃないから」
 だからだというのだ。
「仙人様のところに行って修行すべきね」
「そうしたらいいの」
「そうしたら」
 母はさらに言った。
「女神様になれるかも知れないわね」
「嵐から船と人を護る」
「その女神様にね」
「それなら」
「お父さんと話すから」
 このことをというのだ。
「それでね」
「仙人様のところに行くのね」
「そうしなさい、いいわね」
「私結婚もしていないし」
 そろそろという歳だった、丁度。
「それなら」
「ええ、あんたもそう思うならね」
「お願いするわ」
 彼女自身もこう言った、そしてだった。
 黙娘は両親に言われ峨嵋山に入りその山の仙人に弟子入りし修行に励んだ、そうすると母が言った通りにだった。
 彼女は仙人どころか女神にさえなった、そして天界に上がり海の女神として船を人を護る様になった。
 これが今も道教で信仰されている媽祖の人であった時の話である、異説もあるがここではこの話を紹介させてもらった。一人でも多くの人が読んで頂けたら幸いである、


媽祖   完


                   2023・11・12 
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