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リュカ伝の外伝

作者:あちゃ
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平和的な使い方を心がける

(グランバニア王都:陸軍演習場・特設展示会場)
ピピンSIDE

彼がルディー君かぁ……
サラボナ通商連合の主席代表で大物商人であるルドマン殿を祖父に持つ少年。
だが、あの大商人の血筋とは思えぬ言動……まるで、そう私が忠誠を捧げる王家の血筋。

まぁ彼等のはしゃぎ様はさておき……
今回の新規発明品である魔道車の展示会……元を辿れば我が軍部からの強い要望により発生した。
新生国家のアリアハンが提供してくれて作られた魔道運搬車(トラック)魔道人員輸送車(バス)は実に魅力的な性能を持っていた。

私は元より軍部のほぼ全員がアリアハン製の魔道車を軍で使用出来るようにと陛下に嘆願したが、リュカ様もアリアハン王も彼の技術の軍事利用を嫌がり、直ぐには開発は始まらなかった。
だがリュカ様は魔道車の有用性を意識していたらしく、軍事利用だけでの発展を避けるべく開発製造する方針を考えて居られた。

その結果が民間企業への呼びかけである。
国内の民間企業及び財のある個人等に話を持ちかけ、開発製造を促した。
私は詳しくないから詳細は分からないのだが、発明に当たる基礎部分は殆どがリュカ様の発案らしい。

その為なのか、各社(今回の展示会では3社)の(魔道車)には大きな性能差は無い。
有るのはリュカ様の指示でヴァージョン別に差別化した状態だけだ。
簡単に言うと各社とも3つのタイプに分けて(魔道車)を制作販売しているって事だ。

そのタイプというのが、『セダン』『SUV』『ボックスバン』の3種類。
名称の語源についてはリュカ様が『いいんだよそんな細かいことは! 分かり易く区別するだけなんだから、これで慣れろ!』との事。何時も通りである。

“セダン”タイプは最も標準的な(魔道車)
運転席と左隣に助手席があり、後部座席には3人が乗り込める5人乗りの車だ。
外側からのアクセスになるが後部座席の更に後部には貨物を入れるトランクルームがある。

次に“SUV”と呼ばれるタイプだが、搭乗人員はセダンと変わりないが、車高を高くすることにより車内とトランクルームの区別をなくし、収容力を増やした。
更にタイヤと車底の隙間を多くし、王都内の様に舗装された道以外でも力強く走行できるようになっている。その為のパワーもセダンよりある。

最後に“ボックスバン”タイプだが、見た目が長い箱に車輪を付けた物だ。
セダンより縦に長く、SUVの様に車高が高い。
搭乗人員数は購入者の意思によって変更が可能。

基本の運転席と助手席の合計2名は変わらないが、後部は3人乗りシート1組が基本で、最大3組まで増やした9人乗りまで可能。その為、荷物はSUVとほぼ同じになる為、荷物を多く運搬したい者は後部座席の数を減らして購入する。簡単な算数である……11人乗りよりも5人乗りの方が空いたスペースに荷物を載せられる。

取り敢えず各社は優先的にセダン・SUV・ボックスバンの3種車を完成させた。
(株)レックス・ニットサン(株)・フォンザ(株)以外の企業も開発を頑張ったのだが、資金力等の影響で今一歩だけ出遅れた様子。

そんな中で資金力も技術力も圧倒的な企業が生まれる。
完全国営企業のGM(グランバニア・モーターズ)である。
リュカ様が社長になるのだと思っていたら、基本的に軍部の要望を愚見化させる為の起業だからという事で何故だか私が社長に任命(押し付け?)された。

『社長』……響きは素晴らしいが、私は経営のことも魔道車開発のことも一ミクロンも解ってない。
『そんな男が就任して良いのか?』と勿論私も言いましたよ。
するとリュカ様は『良いんだよ誰でも。面倒臭ーからガタガタ言うな』と何時もの様に仰られた。

流石に私もちょっとだけ“ムッ”ときたので、『誰でも良いのであれば、全てに置いて優秀なウルフ宰相閣下の方が良いと思いますが!?』と反抗。
するとその時の会議に集まっていた者等の視線がウルフ閣下に集中。

上手い具合に押し付けることが出来たか? ……と一瞬だけ期待するも、『お前……俺がどれだけ忙しいか知らねーの?』と光が消え去り瞳孔が開きまくった虚無の瞳を向けられ論破されたのだ。(すげ)ー怖かった(泣)

とは言え、民間企業と国営企業で開発を分けた(形式的に)のには理由がある。
リュカ様が軍の発言力が増すことを嫌ったというのが一番の理由だろうが、民間車と軍用車で仕様を分けることが目的とのことだ。

民間車と軍用車の違い……
それは当然だが見た目の違いが一番大きい。
民間車にも道なき道を走行することに特徴を持たせたSUVがあるが、軍用車はその比ではない。

基本的に道など整備されてない荒野・岩場・砂漠・沼地・雪原等を走行することになる為、パワーが違うのだ。エンジンのパワーだったかな?
更に戦闘で使用する……つまりは攻撃を受けることにも考慮に入れて外装は強固に作ってある。その為、重量も当然増える。

しかもフル装備の兵士を6人乗せることが出来る。
運転席に1人・その左側の助手席に1人・そして後部には4人が搭乗出来る。
そして行軍に必要な物資を後部座席の更に後ろに相当量搭載可能で、アタッチメントの装着により屋根や側面にも物資や人員を乗せることが出来るのだ。

これでもかと盛り沢山の軍用車Hanmmer(ハンマー)だが、結局は民間も同じ様な(魔道車)を作ってしまうのでは?
そう考える者も居るだろう。

だがそれが出来ない……現段階の技術力ではあり未来の技術力では如何(どう)なってるのか判らないが、それでも現段階では難しい……らしい。
専門的な知識を持ち合わせてない俺には“らしい”としか言えないが、天才美少女のリューナさんが言っていたので間違いない。

そしてそれが如何(どう)言うモノなのかを俺なりに理解した内容では『エネルギー問題』が一番のネックだとのこと。
エネルギー……はて? あの車輪付きの箱は何を食って生きているのだろう?

答えは簡単。
この(グランバニア)では皆が日常的に使用している“魔道力”である。
魔法の力を結晶化させた水晶に充填し必要に応じて色々な魔道機器に供給する……“魔道結晶(バッテリー)”と呼ばれている物だ。

魔道結晶(バッテリー)と言っても用途によって大きさも形も変わってくる。
例えば小さい物では一般成人男性の小指くらいの魔道結晶(バッテリー)がある。
それには初級火球魔法の“メラ”10発程の魔力を充填することが出来る。

勿論、魔道機器に供給する場合もメラ10発分しか供給出来ない。
ではこのメラ10発でどのくらい魔道機器が作動するのだろうか?
分かり易い例で言えば王都内に整備されている魔道灯が1本……このメラ10発分で1週間から10日間点灯している。

では今回の主役である(魔道車)に話を移すと、先程のメラ10発分では3km(キロメートル)も走行出来れば上等。
搭乗人員・積載貨物等で重量が増せば1km(キロメートル)も動かないだろうとのこと。

それでは使い物にならん。
軍用車の方は馬鹿みたいに重量だけは増しているのだ。
その点を解決せねばならないだろう。

では天才達は如何様(どのよう)に解決したのだろうか?
魔道結晶(バッテリー)を大きくする!』
これが解決案である。申し訳ないが素人の俺にも考え付きます。

今回開発された民間車の魔道結晶(バッテリー)は、しっかり鍛え上げた屈強な兵士の太股くらいのサイズな魔道結晶(バッテリー)……
しかもそれが3本も搭載されている。

これでカタログスペック上は500km(キロメートル)から550km(キロメートル)もの走行が可能とのこと。
一体メラ何発分なのかリューナさんに訊いたが『メラなんかで充填してたら私はお婆ちゃんになっちゃいますわ(笑)』と教えてくれた。

リュカ様が統治を始めて直ぐから若者の育成に尽力すべく魔技高校(魔法機械技術高等学校)等を建てたが、その功をなしてか我が国(グランバニア)には魔力が多い者が多数存在する。また魔法は使えないが、魔力は帯びている者も居ることが判っている。

で、ここからが本題。
俺が社長(置物)である我が社GM(グランバニア・モーターズ)が完成させた(魔道車)Hanmmer(ハンマー)はどのくらいの魔道結晶(バッテリー)を何本搭載していて走行距離は如何程なのだろうか?

結論を言うと、魔道結晶(バッテリー)は搭載していないのである。
民間車の3倍も4倍も重い(魔道車)を、しかも悪路を想定して走行させる為の魔道結晶(バッテリー)なんて相当大きく、そして多数必要になる。

そんな事をすれば更に重量を増やすことになり、しかも人員・物資等の積載量が減ってしまう。
それでは意味が無いのだ。
そこで真の社長(?)であるリュカ様がアイデアを出してくれた。

ドライバー(運転手)魔道結晶(バッテリー)にしようぜ!』
はい。天才の考えることは凡人の俺には理解出来ませんでした。
勿論もっと具体的に話してはもらいました。

つまりは魔法が使える者もしくは魔力を帯びている者しかドライバー(運転手)になれない仕様にしたんですね。
なので民間車の様に魔道結晶(バッテリー)が幅を利かせている訳では無く、逆に魔道結晶(バッテリー)が存在しない分、動力系を大きく高性能にして民間車と軍用車の差別化を図ったのです。

一応この仕様は戦術面でも少しは考慮されており、魔道結晶(バッテリー)残量が無くなり充填しようとした時、『マホトーン』という魔法で封じられていると充填出来ないのだが、Hanmmer(ハンマー)ドライバー(運転手)から一方的に魔力を吸い上げていくので、マホトーンは意味が無いとのこと。リュカ様は『“利力の杖”ってあるだろ。アレと同じ』と言っていた。そんな杖があるんですか?

ピピンSIDE END



 
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