私 あの人のこと 好きなのかも やっぱり好きなんだよ 昔からー
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翌週の日光での店も終わって、夏休み最後の土曜日に、伊織利さんと合わせて遊びに行く約束をしていて、那須の茶臼岳に登ろうよと私が提案していた。
電車で西那須野駅まで行って、バスでロープウェイの乗り口まで。登ると言っても、ロープウェイで山頂近くまで行って、山頂まで2Kmほどの往復だけなのだ。だけど、伊織利さんは2度目なのでと「結構 石もゴロゴロしていて 厳しいんだよ」と、ラグビーのスパイクを持ってきていた。山頂駅に着いたら、それに穿き替えていて、確かに私は、スニーカーだったので、何度も滑っていた。ジーンの短パンにハイソックス姿の私の手を引っ張ってくれたり、後ろからお尻を支えてくれたりしていたのだ。彼も当たり前のような顔をして私のお尻を・・・。
この日は晴れていて、周りの山々とか噴煙が上がっているのも見られて、私には初めて見る光景だった。しばらくは、山頂の岩に座って、私は彼とこんなところに二人で居られるなんて思っていた無かったから・・・出会いの時からのことを想い返していたのだ。
「そろそろ 降りようか? やっぱり 少し冷えてきた」と、伊織利さんの言葉で、降り始めて、今度は滑って苦労している私を上から繋ぎとめるようにして降りてきた。
「うん やっぱり スパイクは正解だよ」と、悦に入っていたのだ。
途中バスを乗り換えて、南が丘牧場に着いて、私が持ってきていたおにぎりを食べていた。伊織利さんはどこかのお店で食べればいいよって言っていたけど、私は、バイトの給料が入るようになって、生活費の仕送りは断っていたのだ。だから、そんなに余裕は無かったので、外食なんかしないで節約と思っていた。お母さんだって、私の学生寮費に生活費もってなると苦しいのはわかっていたから、負担を掛けたくなかったのだ。それでなくても、私が家を出るってなった時も、最後は送り出してくれたから感謝していたのだ。それでも、夏には、こっちに戻る時、何かに困った時に使うのよって幾ばくかのお金を渡してくれていた。
「うまい! マオのおにぎり 最高おー この梅干しもおいしいね」
「そう 良かったぁー その梅干しね 三方のだよ 知り合いの家 いつも 送ってくれるんだって 夏に帰った時 貰ってきたの」
「そうか あそこは梅林があるもんなー 紀州のと違って、少し小振りで梅干しは塩が強いんだよ だから、おにぎりには合うんだ あそこは、鰻も有名なんだぜー」
「ふ~ん 詳しいんだね マオは行ったことないよ」
「そうかー 今度 帰省したら連れて行くよ 三方五湖って 山の上から見るときれいだよ 確か あの地方は ウチの先祖が住み着いたらしい それで、叔父さんが梅農家を継いでいるんだよ お父さんはその家を出たんだけどね」
「ウン 行きたい あのねー さっき 山の上で、マオは一瞬 夢を見ていたみたい イオと林の中を手を繋いで歩いていて、突然 樹に囲まれた静かな池のほとりに出るんだぁー そのまま 池に・・・ そこで、現実に戻ったの だけど、あれは、確かにイオだったよ 温かい感じ・・・」
「・・・俺 ・・・中学の時 越してきたやろぅ? その時に 誰か女の子と手を繋いで、林の中を歩いて、池が見えたら・・夢から覚めていた。 時々 そんなことがあった その女の子は誰かわからないけど・・・ そんなわけ無いよなぁー マオと同じ夢なんてー」
「・・・イオ ・・・マオはね イオと最初 出会った時 イオを見て 懐かしい感じしたのよ イオは そんな風に思わなかった?」
「・・・した マオが俺のことを呼んでいると思った」
「やっぱり イオとマオは ず~っと 昔から結ばれているんだよー それが、生まれる前からかも」
「マオなぁ 恐いこと言うなよー ただの 偶然だよ! 今は、気持ちが通じてるから そう思うだけだよ」
「そうなんかなぁー でもね イオに抱き締められてる時もだけど 向こうのイオの部屋でも 懐かしい匂い感じるのよねぇー」
「ちょつと 待てよー その部屋ってなんだよー 入ったのか?」
「ごめんなさい おば様がね パッチワークのベッドカバーお見せするからってー 伊織利さんの部屋だったのね その時 懐かしい匂いがした気が・・」
「じゃぁ 見たのか? あの書いたもの」
「うん 俺が好きでいるのも勝手やろー ず~っと って」
「だから あの時 ウチの勝手やー って言っていたのか」
「うん その時 決めた! マオは伊織利さんの側に居るべきなんだと」
「マオ ・・・ 昔はどうだったのかとかは関係無い! 今が マオのことが好きだ 離さないよ」
「うん マオも好き! ずぅ~っとネ」
その後、伊織利さんがせっかくだからと、馬に乗せてくれて、帰って来てからも、彼の部屋で、肉団子の甘酢あんかけ。二人で団子を丸めて、オーブントースターで焼いて、ピーマン、たまねぎで甘酢あんを作って・・・帰る時も、ちゃんと彼に抱き締められて私達なりに愛を確かめていた。私は、それで、やっぱり無理やり追いかけてきて良かったと 幸せを噛み締めていたのだ。
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