金木犀の許嫁
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第十八話 忍の家その十
「大嫌いな親戚の人が亡くなって」
「それでなんだ」
「お墓に遺骨入れられたけれど」
「その遺骨を」
「出して」
お墓からというのだ。
「無縁仏に放り込めって言う人いたらしいけれど」
「それそのままだよ」
「死体に鞭打つよね」
「せめて亡くなったら」
そうなればというのだ。
「もう水に流す」
「お亡くなりになって罪は洗い流される」
「そうなったって考えて」
そうしてというのだ。
「流石に遺骨までは」
「そうしたら駄目よね」
「お墓を暴いて」
「遺骨にまで何かしたら」
「死体に鞭打ったら」
まさに伍子胥の様にだ。
「後で報いが待っている」
「死体に鞭打った人に」
「絶対にそうなるし」
事実伍子胥の最期は無残なものだった、それは史記にもある。
「周りもよくは思わない」
「怨みばかりの人は」
「憎しみはその人を支配して」
憎しみを持つ者をというのだ。
「やがて滅ぼす」
「だから復讐鬼になったら」
「絶対に碌なことにならない」
こう言うのだった。
「最期は無残なものになる」
「そうなるわね」
「それが憎しみで」
そうであってというのだ。
「憎しみに囚われたら」
「いいことはないわね」
「うん、そう思うから」
佐京はそれ故にと夜空に話した。
「俺も気を付けてる」
「憎しみに心を囚われない様に」
「そう」
「佐京君も人を憎むのね」
「俺も人間だから」
それ故にというのだ。
「やっぱり」
「人を憎むこともあるのね」
「そう」
まさにというのだ。
「それで後で反省する」
「人を憎んだらいけないって」
「そう」
「そうなのね」
「復讐鬼になったら」
その時はというのだ。
「嫌だし」
「最期はいいものじゃないから」
「そう思うから」
だからだというのだ。
「本当に気を付けてる」
「そうなのね」
「そして」
そのうえでというのだ。
「怨むことも」
「気を付けてるの」
「そう」
夜空に顔を向けて答えた。
ページ上へ戻る