| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ド派手メイク

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
次ページ > 目次
 

第二章

「歌舞伎はもっと派手ですね」
「そうだね」
「それで私入鹿で」 
 この役でというのだ。
「隈取青ですが」
「隈取は血の色を再現してるよ」
 石田はこのことも話した。
「流れるね」
「それでこの役青ですけれど」
 隈取がとだ、萌絵は話した。
「公家悪はそうですね」
「蘇我入鹿は公家悪でね」
 歌舞伎の役の一つだ、文字通りに悪役の公家である。
「そうだよ」
「流れる血を表現ですね」
「そう、公家悪もね」
「それが青なら」
 それならとだ、萌絵は言った。
「公家悪の血は青で」
「そこも人間じゃないね」
「凄い役ですね」
「萌絵ちゃんはその役を演じるんだよ」 
 石田は笑って話した。
「そのことを意識してね」
「それで、ですね」
「演じるんだよ、だからね」
 それでというのだった。
「頑張ってね」
「わかりました」 
 確かな顔と声になってだった。
 萌絵は石田に頷いて応えた、そしてだった。
 舞台で蘇我入鹿を演じた、すると素顔から想像出来ない位に強烈な悪役だったと評判だった。そうしてだった。
 舞台が終わった後でだ、石田に打ち上げの飲み会でこんなことを言った。
「今回色々と勉強になりました」
「歌舞伎のことで」
「はい、設定もあらすじも隈取も」
「面白いよね、歌舞伎って」
「そうですね、また機会があったら」 
 ビールのジョッキを片手に言った。
「やりたいですね」
「そうだね、裏方もどうかな」
「やりたいです、歌舞伎に関われるなら」
「やっていきたいね」
「そう思う様になりました」
「歌舞伎は今は男の人の世界だけれど」
「こんな面白いもの女の人もしたいです、大体です」 
 ジョッキ片手に言うのだった。
「元々はじめたのは出雲の阿国で」
「女の人だね」
「ですから」
「うん、女の人もね」
「やっていいですね」
「そこは変えていくといいね」
「はい、そうしていきたいです」
 萌絵は明るく強い声で言った、そして大学卒業後就職してから女性歌舞伎を提唱した。それが女歌舞伎の復権出雲の阿国以来のそれにつながるのだった。


ド派手メイク   完


                    2024・5・19 
次ページ > 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧