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富士の樹海は出る

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第一章

                富士の樹海は出る
 橘信哲は大学に通いつつ趣味で山歩きやツーリングをしている、この時彼は大学の友人である衣川力也と一緒に富士の樹海の道ハイキングしていたが。
 その途中休憩と取っている時にだ、彼は衣川に言った。
「樹海でも道があってそこを通ってるとな」
「別に問題ないさ」
 衣川はこう答えた、二人共長身で登山服である。橘は面長で太い眉に鋭い目を持っていて短い黒髪だ。衣川は胡瓜の様な顔で目は細い。茶色にした髪をやや伸ばしている。
「それならな」
「そうなんだな」
「本当に道を通ったら」 
 それならというのだ。
「大丈夫だよ」
「だから俺達もか」
「ああ、整備された道を歩いてな」
 そうしてというのだ。
「外れないでな」
「歩けばいいか」
「間違っても」 
 衣川は橘に真顔で話した。
「道を外れたらな」
「駄目だな」
「その時は迷って」
 そうなってというのだ。
「そうしてな」
「大変なことになるな」
「ああ、有名だよな」
「ここは迷うことでな」
「だからな」 
 それでというのだ。
「本当にな」
「ちゃんとした道を歩くことだな」
「遭難したくなかったらな」 
 衣川の言葉は強く橘も遭難なぞしたくないので素直にその道を通っていた、そうして共に歩いて楽しんだが。
 その途中でだ、道の右手の森の木々の中にだった。
 橘は見た、それはだった。
 長い黒髪でこちらを怨めしそうに見ている若い女性だった、やけに汚れた服である。その女性を見てだった。
 橘は即座にだ、隣にいる衣川に言った。
「おい、誰かいるぞ」
「何処にだ?」
「あそこにだよ」
 女性がいるその場所を指差して言った。
「いるだろ」
「いるな、これはな」
 衣川もその女性を見た、そのうで橘に言った。
「すぐにここを去るぞ」
「あの人見ないでか」
「あの人から離れるんだ」
 真剣な顔でのことだった。 
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