和楽器バンドは異端か
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第一章
和楽器バンドは異端か
五人組のバンドグループ千秋楽は八条芸能音楽部門に所属している、和楽器を演奏している所謂和楽器バンドであるが。
その彼等を見てだ、音楽評論家の得光一男小さな細い目と醜くはれ上がった顔を持ちやや癖のある黒髪で人類史上最悪の邪教巨人真理教今や三十年連続勝率一割チーム打率や防御率、得点、失点といった成績は全部門十二球団ワーストというチームを応援し他チームを憎んでいるという輩が偉そうに言った。
「あんなの邪道だよ」
「和楽器バンドはですか」
「そうだよ」
歌舞伎町のバーで太鼓持ちのちんけな落語家崩れやはり巨人真理教信者でしゃもじを持って他の人の家に上がり込んでご飯を漁るだけが能の卑しい顔の輩に酔って全裸になりながら言うのだった。
「もうね」
「着物着て和楽器演奏して」
「着物の着方は出鱈目で」
それでというのだ。
「和楽器は伝統あるものでね」
「それで、ですね」
「バンドに使うなんてね」
「駄目ですよね」
「そうだよ、あんなのは」
ウイスキーをボトルでそのままあおりながら言った。
「邪道もいいところでね」
「あっては駄目ですね」
「大体バンドなんてのはね」
得光はその落語家屑亭与根輔に言うのだった。
「馬鹿がやるものでね」
「教養のない」
「日本の音楽を正しく知っているのは」
ここから全裸のまま偉そうに話した、そのうち与根輔も全裸になり店の者が止めても裸のまま話しだした。
全裸の話は兎も角彼等が偉そうに言っているのは千秋楽の面々の耳に入った、だがヴォーカルの稲田哲茶髪をセットし真ん中で分け太い眉できりっとした顔の彼は言った。
「それで?」
「だよな」
「それだけだよな」
「音楽評論家が言ってもな」
「俺達は俺達だよ」
リーダーの口髭の大男前川喜久雄、他メンバーの眼鏡のオールバックの杉原康太、アフロの資格お顔の宮口忠義もスキンヘッドでサングラスの大谷力也も言った。五人共それぞれ楽器を演奏し着物を現代風にアレンジして着ている。
「このスタイルでいくぜ」
「和楽器演奏してロックやるぜ」
「ポップスもラップもブルースもな」
「どんな音楽もやるぜ」
「日本の伝統を守りつつな」
そうしてとだ、稲田は言った。
「そのうえでだ」
「ああ、伝統は変わってくものだ」
「時代と共にな」
「皇室も時代によってかわってるだろ」
「日本の伝統も変わっていってるんだ」
時代によってというのだ。
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