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金木犀の許嫁

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第十四話 真田家の人その六

「沢山の金銀財宝を持って帰ったのよ」
「痛快ね」
「その時大助様も一緒だったそうよ」
「幸村様のご子息の」
「あの方も薩摩に落ち延びられて」
 大坂の陣の最後の時に切腹して果てたと公の歴史ではある。
「それでよ」
「世界を巡られたのね」
「幸村様や十勇士と一緒にね」
「そのお話が本当なら」
「そうされたそうよ」
「夢があるわね」
「でしょ?ただ言葉はね」
 これはというと。
「多分海外だし」
「通じなかったわね」
「そうだったと思うわ」
 こちらはというのだ。
「やっぱりね」
「それは仕方ないわね」
「漢文の素養あったら中国語は読めるでしょうけれど」  
 当時の教養人の常識ではあった。
「南蛮の人とお付き合いあったら」
「スペイン語とかポルトガル語もなの」
「わかって」
「海外に出ても」
「それでもね」
 そうしてもというのだ。
「まだね」
「やっていけたの」
「そうじゃない?言葉が通じないとね」
「やっていけないわよね」
「幾ら強くても」
 そうであってもというのだ。
「言葉が通じないとね」
「駄目よね」
「せめて通訳の人がいないと」
「何も出来ないわね」
「だからご先祖様達が世界を巡っておられたなら」
 それならというのだ。
「本当にね」
「言葉が問題ね」
「そうだった筈よ」
 間違いなくというのだ。
「その時はね」
「そうなのね」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「いや、歴史ではっきり書かれることはないでしょうね」
 真昼は夜空に難しい顔になってこうも話した。
「ご先祖様達が生きておられたってことは」
「大坂の陣から」
「あくまで史実ではね」
「あの戦いで死んだことになっているから」
「幸村様も秀頼公もね」
「秀頼公のお子さんも」
「処刑されたってなっていて」
 そうであってというのだ。
「それが変わることはね」
「ないのね」
「そうだと思うわ」
 絶対にというのだ。
「それはね」
「そうなのね」
「こうしたことは変わらないのよ」
「歴史の」
「研究によって定説となっていたことが変わったり」
 例えば織田信長は比叡山を焼き討ちしたと言われているが実はこの山の一部が燃えた位でそうしたことはしていないという。 
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