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政略結婚の相手は

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第一章

               政略結婚の相手は
 お見合いすると言われてだ、山口県では結構大きな製粉会社で工場を幾つか経営している家の息子佐藤有朋は父に言った。
「あの、相手ってパンを作ってる」
「ああ、山口ベーカリーの娘さんだよ」
「同じ系列の会社じゃない」
 父に眼鏡をかけた穏やかな顔で言った、黒髪を真ん中で分けていて後ろを切っている。背は一七二位ですらりといている。
「八条グループの下の」
「それでお前大学まで八条大学だったしな」
「同級生、同じクラスにそっちの社長の娘さんいたし」
「桂理恵さんか」
「うん、同じ山口で結構仲良かったけれど」
「その桂さんがだよ」
 父はまさにと返した。
「お前のな」
「お見合い相手なんだ」
「ああ、はっきりと言うとな」
「製粉会社でパンの製造会社で」
「もうな」
 それこそというのだった。
「政略結婚だよ」
「会社と会社の」
「そうなる、けれどお互いにいい歳だよ」
「結婚にはね」
「しかも仲良かったな」
「小学校から一緒で同じ山口出身で」
 それでというのだ。
「同じクラスだった時もね」
「仲良かったな」
「そうだったよ、大学出てから付き合いなかったけれど」
「今はないか、しかしずっと付き合いあったしな」
「お見合いして」
「結婚しろ、お互い気に入ったらな」
「気に入らなかったら?」
 その場合のことも話した。
「結婚しなくていいとか」
「いや、仲が良いな」
 父はこのことを言った。
「それならな」
「いいか」
「ああ、もう結婚は約束されてるだろ」
「友達と夫婦は違うんじゃないか?」
「仲が良いのは一緒だろ」
「そんなものかな」
「そうだろ、まあ兎に角な」
 今はというのだった。
「お見合いしてくれ」
「それじゃあ」
 政略結婚や知っている相手とのお見合いをいうものに違和感を感じつつも特に断る理由もなくそれでだった。
 佐藤はお見合いを受けることにした、それで山口県の中で有名なホテルにスーツで行くとそこに桃色と赤の振袖姿の一五二程の背で丸い感じの顔で楚々とした顔立ちの顔の黒髪を肩の高さで切りそろえた佐藤と同じ位の背の女性がいてだった。
 頭を下げてだ、挨拶をしてから言ってきた。
「まさかね」
「ああ、りっちゃんとお見合いとかな」 
 佐藤は桂を彼女の仇名で呼んで応えた。
「まさかだよ」
「私もよ、相手があっ君とかね」
 桂も彼を仇名で呼んで言った。
「思わなかったわ」
「お互い大学出てから会っていないけれど」
「それでもね」 
 それでもというのだ。 
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