金木犀の許嫁
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第十三話 無理はしたら駄目その九
「脚気のことでね」
「陸軍に白米がいいと言って」
「それでよ」
「白米だけだと脚気になるのに」
「脚気菌があるって言ってね」
これは彼がドイツで細菌学を学んで来たからだ、そちらの権威であるコッホの下で優秀な人物と言われていた。
「必死によ」
「脚気菌を探していてね」
「お食事に原因があるとはね」
「夢にも思わないで」
「それでよ」
その為にというのだ。
「本当にね」
「沢山の脚気患者を出したのよね」
「犠牲者も多かったから」
日露戦争で陸軍は万単位の脚気患者を出しているのだ。
「そう考えるとね」
「あの人藪医者ね」
「そうよ、歴史に残るレベルのね」
「何か色々問題のある人だったっていうけれど」
「あり過ぎるわよ」
真昼はその通りだと答えた。
「ドイツ崇拝凄くて権勢や爵位にこだわって」
「そんな人だったのね」
「お子さんにキラキラネーム付けて」
その走りだったというのだ。
「ドイツの名前に無理に漢字当てはめてたから」
「そこにドイツ崇拝出てたわね」
「それでね」
そうした有様でというのだ。
「本当にね」
「困った人だったのね」
「そうだったのよ、だからね」
その為にというのだ。
「参考にするのはどうかってところ多いけれど」
「風邪のことはなの」
「あの人の言ったことで数少ない」
「頷けることね」
「だからね」
そうであるからだというのだ。
「夜空ちゃんもね」
「ちゃんと寝ることね」
「風邪の時はね」
まさにというのだ。
「そうしてね」
「わかったわ」
夜空もそれならと頷いた。
「そうするわね」
「そう。風邪の時はひたすら寝る」
佐京も言ってきた。
「お薬飲んで食べてお風呂に入って」
「それで寝ることね」
「俺も森鴎外さんの脚気とかお子さんのお名前のこと知っていて」
そうしてというのだ。
「好きじゃないけれど」
「それでもなのね」
「風邪のことはその通りだから」
寝るべきだというのだ。
「寝ておいて」
「佐京君もそういうのね」
「うん、ただ」
「ただ?」
「好きじゃないって言ったけれど」
「鴎外さんのことは」
「はっきり言えば嫌い」
夜空に正直に答えた。
「脚気のことから」
「そうなのね」
「お陰で沢山の人が犠牲になったから」
「本当にそうだったのよね」
「だから嫌い」
森鴎外はというのだ。
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