王子な娘
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第三章
「乙女だな」
「女の子か」
「いや、外見や喋り方や服装は王子様でもな」
スーツの上着とスラックスに革靴の彼女に言った、茂は赤のセーターに黄色いズボンという恰好である。
「趣味はな」
「乙女でか」
「それでな」
ヘンゼルとグレーテルのお菓子の家の様な作りのチョコレートケーキを食べつつさらに言った、命はアイスクリームとバナナが中にあり生クリームをたっぷりと乗せたクレープを食べている。二人共飲みものはウィンナーティーだ。
「食べものもな」
「お菓子もだな」
「好きでな」
それでというのだ。
「よく食べるな」
「太らない様に身体を動かしながらな」
「そのことはいいけれどな」
それでもとだ、命にさらに言うのだった。
「色々ギャップがあるな」
「そうか」
「王子でもな」
そうであってもというのだ。
「乙女な一面もあるんだな」
「そう言うか、駄目か」
「駄目じゃないさ、人はそれぞれの顔があるだろ」
茂は命に笑顔で言った。
「俺だって結構少女趣味がな」
「あるのか」
「少女漫画だって読むしな」
「そうなのか」
「それも結構好きだからな」
それでというのだ。
「別にお前に乙女な趣味があってもな」
「いいか」
「ああ、それじゃあな」
「まずはこのお店で食べてか」
「そしてな」
そのうえでというのだ。
「映画観に行こうな」
「そして楽しもう」
「それじゃあな、王子様な娘に乙女な一面があってもいいし」
茂はさらに言った。
「男が少女漫画読んでもな」
「いいか」
「人はそれぞれの顔があるからな」
「君がそうしたことを言う人でよかった」
「そうか?」
「隠していなくてもな」
命はそれでもと茂に告げた。
「私のそうした一面も受け入れてくれてな」
「いいのか」
「だから告白も受けた」
彼がそうした人間だからだというのだ。
「それならな」
「これからもか」
「付き合ってくれ」
「ああ、俺でよかったら」
「それならな」
二人で話してだった。
共に甘いものを楽しんでから映画を見た、その映画を観て命は目をきらきらとさせていた。茂はそんな彼女の隣にずっと笑顔でいた。それでだった。
命は彼と一緒にいるのだった、その顔は王子であったが心は乙女な一面もあった。そんな彼女の恋愛も青春もこれからだった。
王子な娘 完
2023・12・13
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