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ほじくり出される過去

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第二章

「俺じゃなくて」
「今原因を確認しています」
「支持率暴落について」
「少し待っていて下さい」
「政策も確認しますので」
「ああ、やれ」
 ミッチェルはスタッフに強い声で告げた。
「今からな」
「そうしますので」
「少しお待ち下さい」
「そして必ずです」
「市長に当選することになりますので」
「それならいいがな」
 ミッチェルはここでも忌々し気に言った、だが次の日だった。
 街頭で演説そして対立候補への攻撃を行う彼にだ、白人の若い青年が前に来て強い声で言って来た。金髪をリーゼントにしたソバカスのあるジーンズの青年だ。
「あんた日系人収容所を知ってるか」
「何だこいつ」 
 ミッチェルはその青年を見て言った。
「収容所?」
「あんた二次大戦はじまった時に西部にいたな」
「その方面の司令官だった」
 ミッチェルはその通りだと答えた。
「それから欧州に行った」
「そうだな、西部じゃ日系人はカルフォルニアとかから追い出されてだ」 
 青年は彼に強い声で言った。
「砂漠の収容所に入れられてたな」
「あれか、あんなの当たり前だろ」
 ミッチェルは何も思わずに答えた。
「あいつ等はジャップだ」
「日系人だからか」
「戦争をやってたんだぞ」
 それ故にというのだ。
「それなら日本に協力してだ」
「破壊工作と科していたっていうのか」
「そうだ、ジャップはジャップだ」
 また何も思わずに答えた。
「何をするかわかったものか、だから砂漠に送ったんだ」
「そう言うんだな」
「何が悪いんだ、それの」
「証拠はあったのか」
 青年は何も思わないミッチェルにこの事実を指摘した。
「工作を行う」
「証拠?戦争をしている中で言っていられるか」
 これがミッチェルの返事だった。
「戦争をしているんだぞ、それにジャップだぞ」
「何をするかわからないっていうんだ」
「そうだ、そんな連中拘留して当然だ」
 ミッチェルは強い声で言った。
「何をするかわからないからな」
「その日系人の人達は戦争で活躍してもか」
「そんなこと知るものか」  
 青年に言い返した。
「ジャップだぞ、勝手に死んでいろ」
「洒落にならない損害出してもか」
「合衆国の為に戦えたんだ、光栄に思え」
 ミッチェルは怒鳴った。
「それで合衆国に迎えてやったんだ、感謝しろ」
「そうか、わかった」
 青年はここまで聞いて眉を顰めさせて言った。
「あんたという人間がな」
「俺がか」
「そうだ、楽しみにしていろ」
 こうミッチェルに言うのだった。
「これからのことをな」
「俺が市長になることをか」
「せいぜい楽しみにしていろ」
 この言葉を残して去った、ミッチェルはその後姿を侮蔑に満ちた目で見送ってからスタッフに言った。
「気にするな」
「何でもないですか」
「ああした奴は」
「そうですか」
「そうだ、その戦争で俺は英雄になったんだ」
 ミッチェルは胸を張って言った。 
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