金木犀の許嫁

「本当に」
「自覚ないけれど」
「それがです」
「違うのね」
「はい、本当に」
　かな恵は今も羨ましそうに言うのだった。
「そう思います」
「成程ね」
「あとです」
　かな恵はさらに言った。
「先輩今婚約されてますよね」
「いや、婚約まではね」
　夜空はすぐに否定した。
「してないわ」
「そうですか」
「同居してるけれど」
「それ同棲ですよね」
「いや、お姉ちゃんも一緒だから」　
　かな恵にこのことも話した。
「だからね」
「同居ですか」
「同棲じゃなくてね」
　それでというのだ。
「同居よ」
「そうですか」
「それで婚約はしてなくて」　
　またこのことを話した。
「許嫁なの」
「今はそうですか」
「そう、だからね」
　それでというのだ。
「何もないわ」
「そうなんですね」
「手をつないでもね」
「いないですか」
「言うけれどキスなんてね」
「してないですか、じゃああれは」
「あれってまさか」
「子供が出来る」
　かな恵は神妙な顔になり小声で囁いた。
「そうしたことは」
「ないから」
　夜空はかな恵に顔を真っ赤にさせて答えた。
「そういうのは就職してからよ」
「そうですか」
「そうお互いにね」
「約束してますか」
「そうなの、私も佐京君も真面目いや奥手？」
　自分でこう考えて述べた。
「そうでね、お互い大学を卒業して」
「それからですか」
「就職してからね」
　それからというのだ。
「結婚して」
「ううん、それ言ったら私達もです」
「鈴木ちゃんもなの」
「はい、私達もです」
　かな恵も話した。
「そうお話してます」
「鈴木ちゃん彼氏さんいるわね」
「幼馴染みでして」
「それからなのね」
「付き合ってます、ですがそうしたことは」
「就職してからなのね」
「手はつないでますけれど」
　このことは夜空達とは違っていた。
「そうです、ただわかることは」
「何？」
「いや、十代の男の子ですから」
　交際相手はというのだ。