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怪我をしても好きだから

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第一章

                怪我をしても好きだから
 中学の部活で卓球をしている江藤育美は怪我をした、しかも利き腕をだ。
「お姉ちゃんもう無理じゃない?卓球」
「やれるわよ」
 きっとした顔でだ、育美は一年下で同じ卓球部にいる妹の季美に言い返した。二人共茶色の髪の毛で細目で気の強そうな顔立ちである。ただ育美はポニーテールだが季美はツインテールにしていて姉は長身で妹は小柄だ。
「これ位でね」
「諦めないの」
「後遺症残るかもって言われたけれど」 
 交通事故でギプスをしているその手を見て言うのだった。
「回復したらリハビリもして」
「前みたいになの」
「卓球やるわ」
「利き腕怪我しても」
「そうよ、やるわよ」
 こう言ってだった。
 育美はまずは怪我の回復に専念してギプスが取れてだった。
 また動ける様になるとリハビリも開始して。
「またなの」
「そうよ、この通りよ」 
 育美は季美に卓球をしつつ話した。
「出来る様になったわよ」
「一年かかったけれど」
「後遺症もあったけれど」
 心配された通りにというのだ。
「それでもよ」
「こうしてなの」
「普通にね」  
 まさにというのだ。
「出来る様になったわ」
「まさか」
「辛かったわよ、リハビリは」
 姉は妹に話した。
「それでレギュラーでもなくなったけれど」
「いいの」
「ええ、卒業して高校でもね」
「卓球するのね」
「好きだからね」 
 それでというのだ。
「やっていくわ」
「そうするのね」
「ええ、これからもね」
「そうなのね」
 季美は今は姉の言葉をただ普通に凄いと思うだけだった、そして部活では姉と違いレギュラーになっていた。
 そのまま卓球を続け高校でもだったが。
 一年の夏にだ、今度は彼女がだった。
「因縁かしら」
「私も交通事故に遭うなんて」 
 入院して見舞いに来た姉に苦い顔で話した。
「両脚が複雑骨折で」
「それで選手としては」
「駄目かもってね」 
 その様にというのだ。
「言われてるわ」
「私の時より状態悪いわね」
「けれど続けるから」
 姉にきっとした顔になって言った。
「お姉ちゃんもカムバックしたし私もね」
「卓球好きだから」
「お姉ちゃんがそうしたみたいに」
 まさにそうした風にというのだ。
「絶対にね」
「カムバックするのね」
「ええ」
 こう言うのだった。
「そうするから。リハビリ出来る様になったら」
「その時は」
「リハビリやって」
 そうしてというのだ。 
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