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金木犀の許嫁

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第八話 同居をはじめてその七

「人としてよくなれるから」
「意識することですか」
「自分を磨こうと」
 その様にというのだ。
「人は磨けば磨く程よくなる」
「どんどんですね」
「際限なく。あとどんな偉くても人は神様じゃない」
「そのこと大事よね」
 夜空は佐京の今の言葉に応えた。
「本当に」
「うん、人は神様じゃない」
「だから偉いかっていうと」
「偉い筈がない」
「誰でもね」
「それでこの世で一番偉いとか思うなら」 
 それならというと。
「馬鹿」
「そう言うしかないわよね」
「自分がどう思っていても」
 それでもというのだ。
「他人から見たら」
「馬鹿よね」
「それ以外の何でもない」
 それこそというのだ。
「醜悪な」
「馬鹿なのね」
「だから」
 そうであるからだというのだ。
「本当に」
「努力しないとね」
「幸せになれない、それに」
「それに?」
「誰かも幸せに出来ない」
 こうも言うのだった。
「自分が幸せじゃないと」
「自分が不幸になって人が幸せになるのは」
「それは多分」
 佐京は夜空の今の話を聞いて言った。
「本当の幸せじゃない」
「そうなの」
「自分が幸せになって」
 そうしてとだ、佐京はさらに話した。
「その幸せを人に分けられる」
「そうでないとなのね」
「本当に幸せじゃない、人は自分が持っていないものをあげられないから」
「幸せでないなら」
「不幸なら不幸しかあげられない」
 そうしたものだというのだ。
「だから修行して」
「いい人になって」
「そして幸せになって」
 そうもなってというのだ。
「人にも分ける」
「幸せを」
「そう。間違っても何も努力しないで堕ちるところまで堕ちたら」
 その場合はというのだ。
「幸せになんてなれないから」
「それでよね」
「人に幸せに与えられない」
「そうなのね」
「多分そこまで堕ちたら餓鬼」
 人間でなくだ。
「餓鬼はいつも餓えて渇いて」
「苦しんでいて」
「不幸だから」
 そうであるからだというのだ。
「人に幸せなんて」
「与えるどころじゃないわね」
「そう思う。努力して」 
 そしてというのだ。 
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