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バスの運転手のファインプレー

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第一章

               バスの運転手のファインプレー
 オレゴン州ポートランドでバスの運転手をしているマイケル=トーマス彫のある顔に小さな黒い目と黒に近いダークブラウンの髪の毛を後ろに撫で付け中背で引き締まった体格の彼はその男を見てだった。
 すぐに怪しいと思い運転席のすぐそばの常連の客に言った。
「バス停に来たけれどな」
「変だね」
 客もその男、歩いてバス停から来た自棄に胡散臭そうな彼を見て応えた。
「どうにも」
「犬を連れていても」
 雄のラブラドール=レッドリバーをそうしている。
「何かな」
「リードがなくて」
「首輪を持っていて」
「何かおかしいな」
「ああ、けれどバス停に来たしな」
「乗せるか」
「そうするよ」
 こう言ってだった。
 トーマスはバスをバス停の前に停車させた、そしてだった。
 バスの扉を開いたが男は一人で乗ろうとした、それでトーマスは驚いて言った。
「あの、犬は」
「ああ、うちの犬だから」
 男はそれでと答えた。
「別にバス停に置いてもいいよ」
「いえ、貴方の犬なら」
 トーマスは男の言葉に驚いて返した。
「尚更一緒でいないと」
「乗せていいんだ」
「いいですよ、このバスは」
 犬をというのだ。
「別に」
「それじゃあね」
「はい、どうぞ」
 こう言ってその犬を乗せて走りはじめたが。
 客がだ、トーマスに眉を顰めさせて囁いてきた。
「おい、あいつな」
「どうなんだ?」
「犬を他の乗ってる人に売ろうとしているぜ」
「何っ!?」
 トーマスはその話に思わず眉を顰めさせた、そのうえで言った。
「増々怪しいな」
「そうだよな」
「ああ、自分の犬を売るか」
「バスに監視カメラあるよな」
「撮ってるよ」
「じゃあ警察にもな」
「後で言うな、絶対に怪しいな」
 その男はというのだ。
「どう考えても」
「全くだな」
 そうした話をしてだった。
 終点に着いてだ、トーマスはそこまでいた男に問うた。客も終点まで行くつもりだったのでそこにいた。
「あの、その子ですが」
「俺の飼い犬だよ」
「何時から一緒ですか?」
 テニスボールを噛ませて吠えない様にしていることにも妙なものを感じつつ問うた。
「それで」
「去年かな、半年前かな」
「覚えてないですか」
「どうだったかな」
「家族なのに覚えてないですか、じゃあ」 
 トーマスは男の返事にさらに胡散臭いものを感じつつさらに問うた。
「その子の名前は」
「何だったかな」
「家族の名前を憶えていないですか」
「さて」
「あの、ちょっと見せて下さい」
 こう言ってだった。トーマスは客と共にだった。 
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