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極道のお嬢様

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第二章

「お家もヤクザ屋さんじゃないのね」
「お祖父ちゃんは住職でね」
「そうなのね」
「ただ。檀家の人で県内一の組の人がおられて」 
 それでというのだ。
「ボディーガードもね」
「してくれるのね」
「それだけよ」
「そうなのね、わかったわ」
「あの、それでいいの?」
 佳織は戸惑いつつ真礼に尋ねた。
「私がヤクザ屋さんじゃないってだけで」
「それで悪いの?ヤクザ屋さんと悪いことしてないでしょ」
「別にね」
 それはとだ、佳織も答えた。
「普通のお寺で観光地で」
「だったらいいじゃない、ヤクザ屋さんじゃなかったら。それに佳織ちゃんが悪いことしたって聞いたことないし」
 実はそうした話はない、上品だがクールで何もしない静かな娘である。
「それならね」
「そうなのね」
「うん、いいわ」
 笑顔で言ってだった。
 真礼はそれでよしとした、学校の娘達もヤクザ屋さんでないならそれでいいとなった。そして佳織と距離を近付けていった。
 やがて佳織は大学を卒業すると他の寺に嫁いで彼女の兄が住職となったが。
 嫁いだ先の檀家にOLになった真礼がいて笑顔で話した。
「檀家さんは色々で」
「そこにヤクザ屋さんがいることもあるのね」
「ええ、それはね」
「現実よね」
「それで昔は賭場とかテキ屋でね」
「どっちもヤクザ屋さんだし」
「関係があったのよ」
 そうだったというのだ。
「それでお付き合いがあって今もね」
「そういうことよね」
「けれどあの時私がヤクザ屋さんじゃないって言ってくれて」
 それでとだ、佳織は微笑んで話した。
「嬉しかったわ」
「大したことじゃないでしょ」
「私にとっては大したことだったのよ」
「ヤクザ屋さんじゃないって言ってくれて」
「誤解されてたから」
 このことを知っていてというのだ。
「それでよ」
「そうだったのね」
「ええ、それでこれからは」
 檀家としてというのだ。
「宜しくね」
「こちらこそね」
 二人で笑顔で話した、そして今度は同級生ではなくその関係で付き合っていくのだった。


極道のお嬢様   完


                  2024・2・23 
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