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保育園にいたのは座敷童

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第一章

               保育園にいたのは座敷童
 この保育園では一つ深刻な問題が起こっていた、それはどういった問題であるかというと。
「またですよ」
「子供が多いんですよ」
「数えてみると」
「どうしても」
「一人多いのよね」
 園長先生の園田古奈美色黒で面長で黒髪をショートにした細い目の長身ですらりとした初老の女性が応えた。
「数えたら」
「はい、そうなんですが」
「見たら多くないんです」
「数えたら多いのに」
「そうしたら」
「おかしなことがあるものね」
 園田も首を傾げさせた、そしてだった。
 彼女も数えた、するとだ。
「やっぱりよ」
「一人多いですよね」
「子供が」
「見たら皆いてです」
「多くもないのに」
「それが数えたらです」
「どうしても一人多いわ」 
 保育線の保育士の人達に話した。
「私が数えてもね」
「変ですね」
「どういうことなんでしょうか」
「訳がわからないですね」
「どうにも」
 保育園の先生達は頭を抱えていた、それは保護者達も同じで。
「何かおかしいわね」
「うちの子が遊んでるっていう子だけれど」
「そんな子いるかしら」
「あの保育園に」
 自分達の子供から聞いた話に首を傾げさせるのだった。
「着物着た男の子?」
「そんな子いるかしら」
「いないわよね」
「あの保育園にね」 
 こう話すのだった、それでだった。
 園田はその話を聞いてだ、また首を傾げさせたのだった。
「着物着た男の子ってうちにいないわね」
「いないですよ」
「着物って何時の時代ですか」
「皆洋服ですよいつも」
「着物着てる子なんてうちの保育園で見たことないですよ」
 保育士達もいないと口々に言った。
「それこそ一人もですよ」
「そんな子いないですよ」
「着物なら目立ちますが」
「そんな子いないですよ」
「そうよね、どういうことかしら」  
 園田はどうしてもわからなかった、それでいるという子供達に聞いてみた、すると子供達は皆言うのだった。
「うん、いるよ」
「わっちゃんだよね」
「わっちゃんとてもいい子だよ」
「いつも楽しく遊んでるよ」
「わっちゃん?誰なの?」
 園田はその仇名を聞いてもわからなかった。
「一体」
「ほら、あそこにいるよ」
「鉄棒のところにね」
「今逆上がりしてるよ」
「わっちゃん何でも出来るんだよ」
「鉄棒?」
 そこを見るとだった。
 園田は子供達が鉄棒の周りできゃっきゃっと笑顔でいるのが見えた、だが。
「逆上がりしてる子なんて」
「いるよ、わっちゃん」
「今度は前から回ってるよ」
「三回転もしたよ」
「鉄棒凄く上手だよ」
「誰もいないけれど」
 やはり園田には見えなかった、そしてそれは。 
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