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英雄伝説~黎の陽だまりと終焉を超えし英雄達~

作者:sorano
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第7話

街を周りながら4spgをこなしていた二人は七区にあるカフェを出るとカフェについての会話をしていた。



~七区・イーディス中央駅通り~



「やれやれ、新作ラテがまさかの材料切れとはな……」

「残念でしたね。珈琲も美味しかったですけど。」

「夕方には販売再開するとか言ってたしあとでまた覗いてみるか……?……まあいい、とっとと行くか。あんまりウダウダ、長居したくない場所だしな。」

「あはは……よっぽどギルドが苦手なんですね。(ううん、どちらかというとあの時の―――)」

遊撃士協会の支部がある中央駅通りを長居したくない様子のヴァンにアニエスは苦笑しながら呟いた後心の中である事を思い返していた。

「?どうしたんだ――――――」

「よう、やってるみたいだな?」

アニエスの様子が気になったヴァンが訊ねたその時逞しい声が二人に声をかけてきた。



「っ……」

「……?」

声を聞いた二人が声が聞こえた方向に視線を向けると声の主はエレインとジャケットの遊撃を連れたジンだった。

「お、お前は……!」

「ヴァン?それに――――――」

ヴァンを目にしたジャケットの遊撃士は表情を厳しくし、エレインはヴァンに視線を向けた後不思議そうな表情でアニエスに視線を向けた。

「エレインさんと……あの大きな人は、確か――――――」

「チッ……遅かったか。」

一方ジンに見覚えがあるアニエスは目を丸くし、ヴァンは舌打ちをして気まずそうな表情を浮かべて呟いた。



「ハハ、こうして顔を合わせるのは3年ぶりだな。そちらのお嬢さんは初めましてになるな。俺は――――――」

「カルバード両州のギルドの重鎮、”不動”。泰斗流の奥義皆伝にしてA級以上っつう噂の御仁だ。」

そしてジンがアニエスに名乗ろうとしたその時、ヴァンがアニエスにジンの事を軽く説明した。

「おっと、そう来たか。ジン・ヴァセックだ。重鎮ってガラじゃないけどな。”解決事務所”だったか?話はちょくちょく聞いている。先日の件でも世話になったようだ。改めて礼を言わせてもらうぜ。」

「こっちの仕事のついでに恩を売らせてもらっただけさ。―――――あんたとは3年前の時を最後に2度と会いたくなかったが。こうなっちまった以上、せいぜいお手柔らかに頼むぜ。」

(3年前……?)

ジンとヴァンの会話から出て来た気になる言葉にアニエスは不思議そうな表情を浮かべた。

「ほう……?ハハッ、よくわからんがこちらこそよろしくだ。」

「ちょ、ジンさん……!なに和やかに話してるんですか!?言ったでしょう、ここ数年、俺達の陰で動いているヤツがいるって!商売敵、いや―――――場合によったら取り締まりの対象かもしれませんよ!?」

ヴァンと和やかに会話しているジンにジャケットの遊撃士はヴァンを睨みながらジンに指摘した。



「っ……」

「ま、否定しきれねぇな。」

遊撃士の指摘にアニエスが複雑そうな表情を浮かべている中、ヴァンは溜息を吐いて呟き

「ふう……そこは嘘でも否定しておきなさい。ジンさん、彼についてはよろしくする必要も気にかけておく必要もないでしょう。こちらの規約スレスレで動いていそうですし、尻尾を掴むのは難しいと思います。先日の件みたいに、必要があれば最低限のやり取りをするだけで十分かと。」

エレインは呆れた表情で溜息を吐いた後ジンに指摘した。

「おっ、わかってるねぇ。」

「―――――貴方は黙っていなさい。」

ジンへの指摘にヴァンが笑顔で肯定するとエレインはジト目でヴァンを睨んだ。

「………はい。」

「エ、エレインさん……」

(……やっぱり……)

エレインに睨まれたヴァンが疲れた表情で頷いている中ジャケットの遊撃士は困惑し、アニエスは何かを察した。



「ハッハッハッ、成程なぁ。こいつは見込み以上だったようだ。となると―――――お前さん、ザイファは持ってるな?」

一方ジンは呑気に笑った後ザイファを取り出してヴァンに確認し

「まあ、持ってるけどよ。……なんだ、連絡先でもってか?」

「北カルバード遊撃士協会を含めた連絡先を交換、ついでに”委託依頼”を受け取ったわよ。」

確認されたヴァンがザイファを取り出すとメアがジンから送られたデータについての報告をした。

「おいっ!?」

「ジンさん……!?」

「ま、まさかコイツに――――」

メアの報告を聞いたヴァンは表情を引き攣らせて声を上げ、エレインは驚きの表情で声を上げ、ジャケットの遊撃士は信じられない表情を浮かべた。

「いや~、ちょっと大きめの依頼が幾つも入っちまった所でな。これから俺やエレインなんかは数日、旧首都を留守にするんだよ。そこで言っちゃあなんだが――――少々、ギルドの案件を手伝わないか?”手配魔獣”みたいな単純なヤツを手分けしてもらえたらってのもあるが……”俺達じゃ動きにくい案件”なんかも回せると思うぜ?」

「っ………」

「な、な………」

「……………………」

「ハッ……こっちも見誤ってたようだ。クマみたいなガタイしてとんだ狸かキツネじゃねえか。いいだろう――――ギルドの規定の2割増しなら引き受けてやる。ただし趣味じゃねえ案件は受けねぇ。それでいいな?」

ジンの提案にエレインは息を呑み、ジャケットの遊撃士は口をパクパクさせ、アニエスは目を丸くして黙り込み、ヴァンは鼻を鳴らした後ジンを見つめて条件つきで提案を受ける事を答えた。



「おうよ、二つほど送ったがその心配はないと思うぜ。できれば一つは頼みたいところだが。お前さん達に縁がある場所だしな。」

「はん……?まあ、確認してみるけどよ。」

「お、俺は納得できませんよ!なんだってこんな胡乱(うろん)なヤツに―――――」

「まあまあ、お前さんも含めて全員手持ちで一杯一杯なんだからよ。この件については俺が回しておく。エレインもそれで構わないな?」

ジャケットの遊撃士の反論を聞くとジンは宥めながら答えた後エレインに確認し

「……ふう、わかりました。」

確認されたエレインは溜息を吐いて了承した。

「そろそろ列車の時間だ。またなアークライド、お嬢ちゃんも。―――――先に切符を取っておく。挨拶したいんなら手早くな。」

「え、ちょっと………」

「くっ……………………」

ジンはヴァンとアニエスに声をかけた後その場から去りジンの言動にエレインが困惑している中ジャケットの遊撃士は唇を噛み締めてヴァンを睨んだ後ジンの後を追って行った。

「ふう……まったく。――――相変わらず年上受けがいいわね?同性限定ではあるけど。」

「失礼な、お姉様にもモテモテだっつーの。しかし”不動”か―――――3年前よりも数段以上やりやがるな。”剣帝”のような化物相手に一人でやり合えたってのも納得だぜ。」

「………まあいいわ、こちらも時間がないことだし。ちなみに”A”については完全黙秘。まだしばらくは掛かるでしょう。」

「ま、だろな。」

「……………………」

エレインの話を聞いたヴァンは納得し、アニエスは真剣な表情で黙り込んでいた。

「改めて―――――アニエスさんだったかしら?彼に何かを依頼したという。」

「あ、はいっ……!先日はお世話になりました。」

「ふふっ、特に何かができたわけじゃないけれど。それはともかく――――どうして今日も、彼と一緒に?制服ではないけれど……依頼の続きといったところしかしら?」

「いや、そいつは――――――」

「その、依頼についてはヴァンさんに継続してお願いしているんですが……それとは別に、事務所のお手伝いをさせてもらう事になりまして。今日がアルバイトの初日なんです。」

エレインの質問にヴァンが答えを濁そうとするとアニエスが先に答えた。



「え―――――……どういう事、ヴァン?」

アニエスの答えに呆けたエレインは真剣な表情でヴァンを見つめて問いかけた。

「まあ、聞け。俺は反対したんだ。だがこう見えても強引というか強情でな。事情もあって仕方なくっつーか――――――」

エレインの問いかけにヴァンは苦笑しながら答えたが

「事情もあってじゃないわ!いったい何を考えているの!?”3年前の貴方の同行者達”と違って彼女、普通の民間人なんでしょう!?貴方の裏の仕事に巻き込んだら―――――」

エレインは話を遮ってヴァンを睨んで怒鳴った。

「エレインさん……!まだですか、もう発車時刻ですよ!」

するとその時ジャケットの遊撃士が大声でエレインを呼んだ。

「エレイン……?」

「おおっ、あの有名な―――――!」

するとその時通行人達がエレインに注目し始め、その様子を見たジンは頭を抱えた。

「……そのうち詳しい話を聞かせてもらうから覚悟しなさい。アニエスさん、くれぐれも気を付けて。ヴァン――――しっかり彼女を守るのよ。」

一方エレインは気まずそうな表情を浮かべてから気を取り直して二人に声をかけた後ジン達の元へと向かった。



「え、えっと………」

「ったく、あの様子じゃ納得するまで突っ込んできそうだな。今の内に躱し方を……………………」

「……………………その、やっぱり随分親しくされているんですね?」

エレインの躱し方についてブツブツ呟いている様子のヴァンを少しの間黙って見つめていたアニエスはヴァンに訊ねた。

「いや、だから只の昔馴染みだっての。お互い旧首都にいたってのにこの前、3年振りに会ったくらいだ。」

「そうなんですか……………………それにしては…………」

「?エレインはともかく、妙な縁ができちまったようだな。”不動のジン”――――――まさか仕事をこっちに押し付けてくるとは。」

「お名前は聞いたことがあります。国内外でも有名な遊撃士ですよね?えっと、ヴァンさんの端末に二つ依頼を送ったそうですけど……」

「仕方ねえ、一応確認するか。」

アニエスの指摘にヴァンは溜息を吐いてザイファを開いて依頼内容を確認した。



「これって……」

「……なるほどな。もう一つも確かに”裏”向きだが、ジャコモが殺られたリバーサイドの整備路――――――警察の封鎖解除が遅れたせいで奥に放置された手配魔獣ときたか。」

依頼内容の一つである手配魔獣の場所が地下鉄の整備路である事にアニエスは目を丸くし、ヴァンは納得した様子で呟いた。

「……はい。」

「一応、今日のエリア内ではあるが完全に予定外の追加オーダーだ。ここらで切り上げてお前は先に事務所に戻ってるか?何ならもうバイトを上がってもいい。」

「いえ、当然手伝わせて下さい。大切なアルバイト初日――――――何とかやり遂げてみたいんです。」

「ハッ、いいだろう。そんじゃ裏解決業務、再開だな。」

その後業務を再開した二人は遊撃士協会の委託依頼の内の一つをこなした後もう一つの委託依頼である手配魔獣の撃破の為に整備路に入った。



~リバーサイド駅・地下鉄整備路~



「……手配魔獣、でしたか。指定されているエリアはあの現場の先なんですよね?」

「ああ。途中までのルートは確保済みだし、一気に行くとするか。」

「はい。あ、その前にヴァンさんに依頼したあの日に紹介できなかった”切り札”を今紹介しますね。」

「あん?そういや、”切り札”があるみたいな事を言っていたが……”紹介”って。おい、まさかとは思うが……」

「―――――来て、メイヴィスレイン。」

アニエスの申し出に眉を顰めたヴァンだったがある事を察すると目を丸くしてアニエスを見つめるとアニエスがメイヴィスレインを召喚した。

「え、えっと………ヴァンさんに依頼する数日前に事情があって私と”契約”をしてくれた天使のメイヴィスレインです。」

「天使階級第五位”力天使(ヴァーチャーズ)”メイヴィスレインです。アニエスが貴方の元で働く以上、アニエスの呼びかけに応じて私も手を貸す事もあるでしょうから、以後見知りおきを。それと私への呼び方もそちらの好きして下さって構いません。」

気まずそうな表情を浮かべたアニエスがメイヴィスレインを紹介すると、メイヴィスレインは名乗った後静かな表情で答えた。



「……あー………何があってその天使と”契約”したかについて聞くつもりはないが……俺に依頼する数日前に”契約”したって事は、薬物強化(ドラッグブースト)した”A”の末端相手に俺がバケモノ化しなくても、メイヴィスレインをあの時呼んでいたら制圧できたんじゃねぇのか?」

少しの間黙り込んだヴァンは疲れた表情でアニエスに問いかけ

「は、はい……あの時は気が動転していて、メイヴィスレインの事が頭になくて……後でメイヴィスレインにも怒られました。」

「ま、過ぎたことだし、逆に考えればメイヴィスレインを呼ばなかったからこそ”ゲネシス”やバケモノ化を知る事ができたから別にいいけどよ。――――――それにしても”力天使”みたいな天使の中でも相当なバケモノと契約できるなんざ、相当ツイてるじゃねぇか。」

申し訳なさそうな表情で答えるアニエスに気にする必要は無い事を指摘したヴァンは苦笑しながらメイヴィスレインを見つめた後アニエスに視線を向けて指摘した。

「えっと……”天使という種族”の事について知っているメンフィル帝国出身のアラミスの先輩もメイヴィスレインの事を天使の中でも相当な実力者みたいな事を言っていましたけど、そんなに凄く強いんですか?」

「ああ。知っての通り人間以外の種族―――――”異種族”は異世界(ディル=リフィーナ)の存在だが、その中でも”天使族”はメンフィル帝国にとっても希少な存在でな。メンフィル帝国は”天使族”にとっては”宿敵”に該当する種族も受け入れている上、皇族――――――”マーシルン家”もその”天使にとっての宿敵の種族”である関係で元々メンフィル帝国に所属している天使の数は少ない事で、当然ゼムリア側で活動している天使もそれよりも更に数が絞られるんだが……”力天使(ヴァーチャーズ)”はそのゼムリアで活動している天使達の中でもトップクラスの実力の持ち主の上、メイヴィスレイン以外の”力天使”はいずれも世間では有名な人物と契約しているからな。」

「そ、そんなに凄いんですか……えっと、ちなみにそのメイヴィスレイン以外の”力天使”と契約している人達って”世間でも有名”という事はもしかして、私でも知っている人達なんでしょうか?」

ヴァンの話を聞いたアニエスは驚いた後興味ありげな様子でヴァンに訊ねた。



「ああ。俺が知っている”力天使”と契約している人物はアニエスを除けば二人で、一人は”初代特務支援課リーダー”だ。」

「あ、聞いたことがあります。その人って、クロスベルがまだ自治州だった頃からクロスベル警察の特別な部署のリーダーだった人で、いくつもの難事件を解決し、世間でも有名な大事件をも解決した事から”六銃士”に次ぐクロスベルの”英雄”とされている人ですよね?」

「ああ、そしてもう一人の方は”初代特務支援課リーダー”すらも霞む程”英雄”として有名な人物でな。――――――もう一人の方は”エレボニア総督”だ。」

「ええっ!?そ、その人って当時18歳という若さで3年前の世界大戦――――――”ヨルムンガンド戦役”を終結に導いて世界を救った事から、”現代のゼムリアの大英雄”と称されているあの”灰の剣聖”――――――リィン・シュバルツァー総督ですよね……!?」

ヴァンの口から語られたある人物――――――リィンの事を聞いたアニエスは驚きの表情で声を上げてヴァンに確認した。

「エレボニア総督には他にも異名はあるが、今だと”灰の剣聖”の異名が世間一般で有名だな。――――――しかし、それなら奥に行くついでにメイヴィスレインとの連携を実戦で慣らしておいた方がいいかもしれねぇが……そっちは問題ないか?」

「ええ。この世界に来てからまだ日が浅いとはいえ、しばらく実戦から離れていましたので勘を取り戻すのにもちょうどいい機会ですし……それにこの世界の魔導具の機能を確認するにもちょうどいい機会ですので、構いません。」

アニエスの確認に答えたヴァンはメイヴィスレインに視線を向けて訊ね、訊ねられたメイヴィスレインは頷いて答えた後ザイファを取り出した。

「おいおい、導力技術がない異世界(ディル=リフィーナ)の出身なのに戦術導力器(オーブメント)――――――それも最新式(ザイファ)まで持っているのかよ。アニエスといい、最近のアラミスはアラミスの関係者になら誰にでも最新式(ザイファ)を備品として配布しているのかよ?」

「あはは、さすがにそれはないと思います。そもそもメイヴィスレインの事を知っているのはさっきもそうですが以前の話にも出た”頼りになる先輩”で、メイヴィスレイン用のザイファを手配してくれたのもその先輩ですから。」

メイヴィスレインがザイファを持っている事に驚いた後疲れた表情で訊ねたヴァンの疑問にアニエスは苦笑しながら答え

「そりゃまたとんでもなく頼りになる先輩だな。(学生でありながら最新式(ザイファ)を用意できるツテがあるメンフィル帝国出身のアニエスの先輩………多分……というかほぼ間違いなく”仔猫”の事だろうな。)――――――まあいい、ザイファの実戦運用の指導も兼ねて今後の為にもメイヴィスレインの戦闘能力を確認させてもらうぜ。」

アニエスの答えに苦笑しながら同意したヴァンは心の中でアニエスの話に出た”先輩”がレンである事を想定した後今後の方針を二人に伝えた。



そしてヴァンは魔獣との実戦で二人にそれぞれ指導しつつ、奥へと向かった―――――― 
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