| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

金木犀の許嫁

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第三話 お見合いその八

「いいから」
「そうなんだ」
「ええ、それでお茶を煎れて」
「飲みながらお話する」
「そうしましょう」
「それじゃあ」
 夜空の言葉に頷いてだった。
 共に茶の場に靴を脱いで座った、そこで佐京はふと気付いて言った。
「そういえば下駄」
「二人共ね」
「草履でなくて」
「これがいいって言われて」
「そう。正装なら下駄」
 佐京はこう答えた。
「着物なら」
「そうみたいね」
「それで二人共下駄」
「今気付いたわね」
「いいと思う」
 佐京は微笑んで話した。
「それは」
「そうなのね」
「そう、お揃いでいい」
「そうね、二人共下駄でね」
「何か嬉しい。それじゃあ」
 佐京はあらためて言った。
「お茶を煎れるから」
「作法詳しくないけれど許してね」
「いい。俺も煎れるの下手だから」
 佐京はまたこう言った。
「それじゃあ」
「今からね」
「お茶飲んでお菓子食べて」
「お話しましょう」
「そうしよう」
 二人で下駄を見ながら話してだった。
 お茶の場に向かい合って座ってそうしてだった。
 話をはじめた、佐京は静かにお茶を煎れて夜空に差し出した、そして自分のものも煎れていて一緒に飲んだが。
 一口飲んでだ、夜空は言った。
「私こうして一対一でお茶煎れてもらったのはじめてよ」
「そうだったんだ」
「ええ、茶道でね」
「茶道は武士の嗜みで」
 そうしたものでというのだ。
「習った。忍者でも」
「習うの」
「猿飛家は武士だから」
 その家だからだというのだ。
「代々習ってきた」
「それで今も煎れられるの」
「そう」
 実際にというのだ。
「下手だけれど」
「別にね」
「いいんだ」
「ええ、特にまずいとは思わないわ」
 夜空は真面目な顔で答えた。
「本当にね」
「そうだね」 
 佐京は夜空のその顔を見て答えた。
「嘘は言っていないね」
「わかるの」
「表情でね」 
 そこからというのだ。
「特に目で」
「目ね」
「目は口程にものを言うから」
「それ本当なのね」
「そこを見ることも大事だから」
「忍者には」
「そう、相手を見ることも」
 このこともというのだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧