金木犀の許嫁
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第三話 お見合いその五
「大きいです、あと山の方なので」
「それでなの」
「土地代は今も安いです」
「そうなのね」
「ここから毎日です」
「学校に通ってるのね」
「あちらに」
眼下に見える巨大な学園を指さして話した。
「歩いて行っています」
「歩いては遠くない?」
「それも修行ですので」
白華は微笑んで答えた。
「自転車も使えますが」
「歩いてるのね」
「基本は。ただお家には車もあります」
この文明の利器はというのだ。
「お買いものの時とかはです」
「使ってるのね」
「そうしています、私も兄さんも未成年なので乗れませんが」
「それ言うと私もだしね」
「そこは当然ですね」
「もうね」
夜空もそれはと答えた。
「そうよね」
「あとお屋敷の中のお掃除は家族全員で」
白華はこのことも話した、
「しますので」
「このお屋敷の」
「お庭もです。暇があれば」
その時はというのだ。
「皆で」
「お掃除するのね」
「していきましょう、うちは広いですが」
白華はこうも言った。
「使用人という様な人はいません」
「そうなのね」
「家族だけで住んでいます」
「この広いお家に」
「ですから素早くかつ的確にです」
その様にというのだ。
「お掃除もです」
「するのね」
「それもまた修行なので」
忍術のそれだというのだ。
「私達は励んでいます」
「何かあらゆることが修行に聞こえるけれど」
真昼はここまで聞いて実際にそう思った。
「違うかしら」
「否定しません、忍者はその生活すべてがです」
白華は真昼にも答えた。
「忍術の修行でありその中で、です」
「鍛錬を積むのね」
「それが真田家の教えで」
「真田家にお仕えしていた猿飛家もなのね」
「そうなのです」
こう真昼に話した。
「真田家も十勇士のお家も」
「そうなのね」
「左様です、ではお屋敷の中に入って下さい」
「そしてお見合いね」
「左様です」
微笑んで話した、そしてだった。
白華は夜空達を案内して庭を進み屋敷の玄関から家の中に入った。家の玄関も大きく広く見事なもので廊下もだった。
全体的に和風の造りでありその廊下を進み奥の間に入ると。
「西宮家の方々をお連れしました」
「おい、別にそうまで堅苦しくなくていいぞ」
「別にね」
紋付羽織袴の痩せた皺のある顔で小さな目と白くなった髪を短くしている一七〇位の背の四十代半ば位の男性とだ。
絹の薄黄色の着物を黄色の帯でまとめた黒髪を後ろで団子にした何処か白華に似た小柄でにこりとした表情の女性がそこにいた、そして。
細面でショートの黒髪とやや小さな穏やかな表情で小さな薄い唇の一七二センチ程の痩せた紋付羽織袴の少年もいた、そのうちの年配の二人が白華に笑って言ってきた。
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