罵倒

「否定する相手を嫌って」
「そうだね、そしてなおそうとしても」
「難しいね」
「現に中々なおらないよ」
　自分で言うのだった、
「本当にね」
「そうだね、けれどなおそうと思っているなら」
　それならとだ、山田は佐竹に話した。
「きっとね」
「なおるんだね」
「長い時間がかかっても」
「じゃあね」
「頑張っていってね」
「そうしていくよ」
　佐竹は山田の言葉に頷いた、それからお互いの高校時代やそれからどうしたことがあったかを鬼頭に話した、全体的に楽しい飲み会になった。
　そしてそれが終わって店を出る時にだ、鬼頭は言った。
「人を罵ることは駄目ですね」
「うん、ただ人を傷付けるだけじゃないんだ」
　山田は冷静に話した。
「その人に嫌われてさらに」
「その人の考え方や振る舞いにも影響を与えるんですね」
「よくないものをね」
「そうなんですね」
「恥ずかしいよ、けれどそれをね」
　何とかとだ、佐竹も言ってきた。
「僕はね」
「なおしていかれますか」
「そうしていかれますか」
「是非ね、そしてね」
　そのうえでというのだ。
「もっとましな人間になるよ」
「まし、ですか」
「そう、人を嫌って全否定したら」　　
　それこそとだ、佐竹は言うのだった。
「僕を罵った人達と同じだからね」
「自分が嫌う人と同じにはですね」
「なるなんてね」　
　それこそというのだ。
「一番よくないことの一つだから」
「それで、ですか」
「うん、何と過去の性格をなおして」
　そうしてというのだ。
「今よりね」
「ましな人にですか」
「なるよ」
　こう言ってだった。
　佐竹は鬼頭それに山田のジョッキが空なのを見てすぐに追加を注文した、そうした気遣いもしてだった。
　三人で楽しんだ、それからも三人でよく飲んで鬼頭は佐竹に仕事で何かと助けてもらい教えてもらい親切にしてもらった。
　そのうえで彼を見ていると。
「徐々にだけれどね」
「よくなっていってるかな」
「なってるよ」　
　山田は佐竹に飲んでいる時に笑顔で話した、今も鬼頭が一緒である。
「嫌ってもね」
「それでもだね」
「その嫌い方がね」
「ましになってるんだね」
「顔や言葉に露骨に出ることが」
　それがというのだ。
「かなりね」
「ましになってるんだ」
「うん、ただあの時から随分経っても」
「それも完全にはだよ」
「なおらないね」
「きつかったからね」
　佐竹は俯いて暗い顔になって答えた。
「やっぱり」
「罵られることは」
「いつもとんでもないきつさでね」
「まさに全否定で」
「それを受けてきたから」
　だからだというのだ。