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博士の挑戦状

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第百十三話

               第百十三話  のぞかな中に
 ふとだ、タロは動物園の中を見回してこんなことを言った。
「のどかだけれど」
「旦那も感じたかい?」
 ライゾウも中を見回して言った。
「ここってな」
「のどかで平和でね」
「色々な生きものいてな」
「楽しい場所だけれど」
 それでもというのだ。
「何か悲しいね」
「そんな気配も感じるな」
「ほんの少しだけれどね」
「何だこれ」
「気になるね」
「どうもな」
「それじゃ」
 博士は二匹にまさにという顔と声で応えた。
「わしも皆に観てもらいたいものがあるのじゃ」
「ああ、それでなんだ」
「おいらを連れて来たんだな」
「そうじゃ、後で行く」
 二匹にこう答えたのだった。
「案内する」
「気になるね」
「そうだよな」
 二匹も話を聞いて言った。
「どうもな」
「何かね」
「まさか」
 小田切君は何処か察した顔になって言った。
「博士は僕達を」
「小田切君にはわかったか」
「違うかも知れないですが」 
 それでもというのだ。
「僕もここはです」
「何度か来ておるな」
「両親にも連れて来てもらって」
 そうしてというのだ。
「来ていますから」
「だからであるな」
「はい、ですから」
「答えぬからな」 
 博士はそれは断った。
「わしもな」
「そこに行けばわかるからですか」
「そうじゃ」
 それ故にというのだ。
「わしはな」
「そうですか、それじゃあ」
「後でな」
 博士は多くを見る目で応えた、そうして小田切君達と共に動物園の中を観て学問に励んでいく。今はそうしていた。


第百十三話   完


                     2023・11・9 
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