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ブラウスの匂いはくる

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第一章

               ブラウスの匂いはくる
 近田美優やや面長の顔で切れ長の大きな二重の長い睫毛を持つ目と赤い大きめの唇と大きな耳に高い鼻と長い黒髪をポニーテールにし一六七程の背ですらりとした見事なスタイルの彼女には独特の嗜好があった。
 サラリーマンの夫の勝道、黒髪を短くしていて眼鏡をかけた優しい小さな目が印象的な顔立ちで一七〇位の痩せた体格の彼に毎晩だ、こうねだるのだった。
「ねえ、今夜もね」
「僕が会社で着たブラウスをなんだ」
「着て寝たいの」
「わかったよ」
 夫は妻にそれならと応えた。
「それじゃあね」
「貸してね」
「それ着て寝るんだね」
「そうするわ」
 こう言ってだった。
 美優は勝道がこの日仕事で着ていたブラウスを着て下は素足でベッドに入った、そして夫と共に寝たが。
 朝起きるとすぐに部屋着に着替えて一日をはじめた、ブラウスは洗濯機に入れて洗ってアイロンもあてるのだった。
 夫はそんな彼女と共に暮らしていたがある日だった。
 仕事から帰って自分の部屋着に着替えて夕食を摂りながら共に食べている妻に尋ねた。
「ちょっといいかな」
「どうしたの?」
「何で寝間着いつも僕のブラウスなのかな」 
 おかずの鯖の塩焼きを食べつつ妻に尋ねた。
「前から不思議に思っていたけれど」
「だって匂いがするから」
 妻はほうれん草と茸のバター炒めを食べつつ答えた。
「だからなのよ」
「匂いって」
「あなたの匂いよ、あなたの匂いも好きなのよ」
 こう夫に言うのだった。
「私はね」
「匂いがなんだ」
「性格が一番好きだけれど」
 まずはこれだというのだ。
「優しくて穏やかで真面目な」
「僕のそうしたところがなんだ」
「約束も守るしね。それでね」
「匂いもなんだ」
「そうなのよ」
「別にいい匂いじゃないよね」
 夫は妻に怪訝な顔になって言葉を返した。
「別に」
「いえ、結構ね」
 妻はそれでもと言うのだった。
「私としてはね」
「いい匂いなんだ」
「独特のね。だからね」
「毎晩僕のシャツ着るんだ」
「そうすると気持ちよく寝られるし」
 夫にさらに言った。 
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