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英雄伝説~黎の陽だまりと終焉を超えし英雄達~

作者:sorano
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第4話

ゲートの先――――――遺跡になっている地下を徘徊している魔獣や霊体を相手にアニエスはヴァンからザイファの様々な機能を実戦形式で教えてもらいながら進んでいた。



~中央駅通りの地下遺跡~



「ふうっ……何とか、コツが掴めてきた気がします。」

戦闘を終えたアニエスは安堵の溜息を吐いて答えた。

「……悪くはねえな。ただし油断はするんじゃねえぞ。」

「は、はいっ。」

(幾ら護身用の訓練をしていたとはいえ、実戦が初めてのアニエスがあれ程の戦闘能力を発揮するとは………アニエスの芯の強さを抜きにしても、戦術導力器(オーブメント)とやらの恩恵は相当なもののようですね。)

(実際大したタマだぜ。実戦なんざ今日が初めてだろうに。良い所の育ちなのは間違いなさそうだが、妙に腹も据わってやがる……訳アリの依頼品といい、一体――――)

メイヴィスレインはアニエスが見せた戦闘能力に驚きつつザイファについて考え込み、ヴァンは感心した後アニエスの事について考えていた。

「その……ヴァンさん。」

するとその時アニエスが真剣な表情を浮かべてヴァンに声をかけた。



「ああ、なんだ?」

「魔獣や霊体相手に気を抜かないのはもちろんですけど……”A”という方々について念の為伺っても構わないでしょうか?」

「……ふう、そうだな。本来、一般人が知るべき情報じゃねえんだが……あんたの曾祖父さんの遺産が絡む以上、耳を塞ぐってのも確かに違うか。」

アニエスの質問に溜息を吐いたヴァンは真剣な表情を浮かべてアニエスにある組織について話さなければならない事を決めた。

「……はい、そう思ったので。」

「”A"というのは当然、隠語だ。正式名称は”アルマータ”――――カルバードに昔からあるマフィアの名だ。」

「”アルマータ”……マフィア、ですか。」

「つっても、元々はそれほどデカイ組織じゃない。有名な東方系シンジケートに比べりゃ、有象無象の一つだったらしい。だが――――ここ数年で数倍、いや数十倍の勢力へと拡大した。今の北・南両カルバード州の裏社会・暗黒街のトレンドといってもいい存在だ。」

「……そ、そんな人達が……当然、新聞なんかで報道はされていないんですよね……?」

ヴァンの話を聞いたアニエスは真剣な表情を浮かべて確認した。



「ああ、タイレルみたいな大手は勿論、ゴシップ誌すら二の足を踏んでいる。理由は簡単――――下手すればマジで消されるかもしれねえからだ。」

「っ………」

「あんたの曾祖父さんの遺産ってのがどういうものかは知らねぇが……できればギルドか警察に頼っちまった方がベターだろう。それは最初に言った通りだ。」

「そ、それは…………………………」

ヴァンの忠告に対してアニエスは複雑そうな表情で顔を俯かせて言葉を失った。

「ま、無理強いはしねえ。だからこその裏解決屋(オレ)でもある。――――いずれにせよブツは先に回収してギルドを連中にぶつけるのがベストだな。一石二鳥、いや三鳥ってもんだろ?」

「そ、それはあまりにギルドの方々に申し訳ないんじゃ……ふふっ、本当に。ヴァンさんって”悪い人”ですね。」

ヴァンの提案に戸惑ったアニエスだったがすぐに気を取り直して苦笑しながらヴァンを見つめた。

「何よりの誉め言葉だな。――――――そろそろ行くぞ。」

「はいっ。……あ、そういえば。」

「……?」

「”最初に言った通り”って……ひょっとして画像を見せた時からマフィアの事も気づいていたんですか?」

「ああ………(本当に鋭いな。)――――――ただのカンさ。昨夜から妙に匂ったんでな。」

アニエスの質問に対してアニエスの推測に内心驚きながらアニエスに背を向けて答えを誤魔化した。



その二人は協力して魔獣や霊体を撃破しながら先を進んでいた二人は最奥に到達した。



~最奥~



「あ………」

「雰囲気のある場所じゃねえか。中世の石像(ガーゴイル)とはな。こんな場所を隠れ家にするとはジャコモも抜け目ねえっつーか。」

最奥に到達したアニエスは呆けた声を出し、ヴァンは感心した様子で呟いた後周囲を見回すと光を放っている導力器らしき物を見つけた。

「あれは……あの画像と似ているな。」

「はい……曾祖父の手記にあったスケッチとも一致しています。………グスッ、本当にあったんだ。」

導力器らしき物に近づいてヴァンと共に確認したアニエスは感動のあまり思わず涙を流した。

「ハッ……何よりだったな。しかしこの光は……確かに導力器の一種のようだが。っ……下がれ!」

導力器らしき物を見つめていたヴァンだったが導力器らしき物から突如聞こえて来た音を聞くと警戒の表情でアニエスに警告した。

「……!?」

ヴァンの警告に驚いたアニエスがヴァンと共に下がると何と霊体が複数現れ、石像に宿り始めた。

「せ、石像に……!?」

「チッ……ヤベえな。」

目の前の信じられない出来事にアニエスが戸惑っている中ヴァンは舌打ちをした後霊体達が石像に乗り移り続けている中、赤い光を放ち始めている導力器らしき物に気づいた。

(っ……連動してる?)

二人が警戒していると二体の石像が動き出し、ヴァン達と対峙した。

「ヴァ、ヴァンさん……!」

「チッ……面倒だが片づけない限り”お宝”は手に入らなさそうだ。――――曽祖父さんの遺品、何としても取り戻したいんだろう!?なら教えたことを最大限に活かせ!SCLMや戦技(クラフト)も使ってブチのめすぞ!」

「!……はいっ!」

そして二人は戦闘を開始した!



「鈍いぜ―――――喰らいなっ!!」

「「………!」」

先制攻撃にヴァンは指弾の要領でコインを打ち出すクラフト―――――コインバレットを敵達に放ってダメージを与えると共に敵達の注意を自分達に惹きつけ、ヴァンのクラフトによって注意を惹きつけられた敵達はヴァンへと向かい、攻撃を始めた。

「っと!頼むぜ、アニエス!」

「はいっ!ザイファ駆動―――――アイシクルハンマー!!」

「「!?」」

敵達が繰り出す腕の攻撃を次々と回避したヴァンに呼びかけられたアニエスは頭上から氷柱を襲い掛からせるアーツを発動して敵達にダメージを与えて怯ませ

「ハアアァァァァ………ッ!そらよっ!!」

敵達が怯むと側面に回ったヴァンが撃剣による薙ぎ払いを放つクラフト―――――スタンスラッシュを叩き込んでダメージを更に与えた。

「光よ―――――エトワールレイ!!」

更にアニエスが収束した光のエネルギーを放つクラフト―――――エトワールレイで追撃し

「……!」

「っと!」

アニエスの追撃が終わると敵は反撃に炎のブレスをヴァン目掛けて放ち、襲い掛かるブレスをヴァンは側面に跳躍して回避した。

「……!」

「グッ!?」

しかし回避した瞬間に続けて放たれたもう一体の敵の尾による薙ぎ払いは回避できず、ダメージを受けた。



「コォォォォォオ……ハアッ!!」

ヴァンは身体能力を向上させ、更に自動治癒能力もある気功技―――――煉気吼を発動して自身を強化し

「行くぜ………痺れろっ!!」

「「!?」」

続けて発勁による強烈な一撃――――――蒼破崩拳を放って敵達に大ダメージを与えると共に怯ませた。

「光よ―――――エトワールレイ!!」

「ザイファ駆動――――シャドウスピア!!」

「「!?」」

そこにアニエスが再び放ったクラフトとヴァンが放った足元から複数の暗黒の槍を発生させるアーツが敵達に命中し、立て続けにダメージを受けた敵達は一時的に無防備になり、動けなくなる状態――――”スタン”状態に陥った。

「覚悟を決めな!」

「おしまいよっ!」

敵達の無防備な状態を目にして好機と判断したヴァンはSクラフトを発動し、ヴァンがSクラフトを発動すると同時にヴァンのザイファのホロウコアは”ブースト状態”になり、所有者であるヴァンの能力を飛躍的に向上させた。

「セイッ!デヤアアアアアアァァァァ……ッ!!ダアッ!!」

得物である撃剣を空へと放り投げたヴァンは連続掌底を敵達に叩き込んだ後両手の掌底の発勁による強烈な一撃を叩き込み

「ヴァンダライズ―――――レイド!!」

止めに落下してきた撃剣を利き手に持ち、撃剣に込められた導力エネルギーを敵達目掛けて一閃した!

「「――――――!?」」

ヴァンの格闘技と撃剣を混合させたSクラフト―――――ヴァンダイライズレイドによる大ダメージによって限界が来た敵達は暴れながら消滅した!



「はあっ、はあっ…………」

敵達の撃破を目にするとアニエスは安堵や疲労によってその場で崩れ落ちて息を切らしていた。

「中世の魔導師が遺したガーディアンといった所か。あの霊体といい、このタイミングで動き出したのは気になるが……――――――根性見せたじゃねえか、学生。アーツに戦技(クラフト)、SCLMの連携もまあまあ助かったぞ。」

「あ………ありがとう、ございます。ヴァンさんのご指導の賜物かと。」

ヴァンに手を差し伸べられたアニエスはヴァンの手を取って立ち上がり謙遜した様子で答えた。

「へっ………」

アニエスの言葉に口元に笑みを浮かべたヴァンはアニエスと共に謎の導力器へと近づいた。

「……さてと。まずは俺が手に取る。」

「は、はい。」

謎の導力器を手に取ったヴァンだったが何も起こらなかった。

「大丈夫みたいだな。……そら、ご依頼の品だ。」

そしてヴァンがアニエスに謎の導力器を渡すと謎の導力器は一瞬だけ光を放った。

(共鳴……?戦術導力器と同じか。)

「これが”ゲネシス”……ひいお祖父ちゃんが遺した……まだ最初の一つだけど……やったよ、お母さん、お祖母ちゃんも。」

「……………………なあ、アニエス。あんたの曽祖父さんってのは――――――」

謎の導力器を手に持って嬉しそうにしながら独り言をつぶやいたアニエスの様子を見て何かが気になったヴァンがアニエスに訊ねたその時、何かに気づくとアニエスを抱え込んで倒れ込んだ!



「きゃっ……!?」

ヴァンがアニエスと共に倒れ込むと同時に二人がいた場所に銃撃が放たれた!

「……っ……」

「てめえら……」

「ほう、よく躱したな。」

ヴァンがある場所を睨むと、なんとジャコモを殺害した二人のマフィアが姿を現して立ち上がったヴァンと対峙した。

「……ぁ……」

「噂の二人組――――――”アルマータ”の面々か。」

二人のマフィアの登場にアニエスが不安そうな表情を浮かべ、ヴァンは警戒の表情で二人のマフィアに声をかけた。



「フフ……俺達も有名になったものだ。」

「そちらは『裏解決屋(スプリガン)』、ヴァン・アークライドだな?」

「知っているとは光栄だ。一応、アンタたちみたいな筋からも営業は受け付けてるぜ?一線を超えない相手なら――――――今の銃撃でてめえらは失格だが。」

「フフ、それは残念だ。手足を狙っただけだが。」

「そちらの娘は殺しはしない。装置の関係者のようだからな。お前の方は死んでもらうが。」

「っ………」

(……そろそろ私の出番のようですね。)

二人のマフィアがヴァンを殺そうとしている事にアニエスが息を呑んでいる中メイヴィスレインは目を細めた。

「プロだねぇ。反吐が出るくらいに。――――――それならこっちも対応しやすいってもんだ。」

「っ……?」

ヴァンの言葉に二人のマフィアが眉を顰めたその時ヴァンは瞬時にマフィアの顔にコインを打ち出した!



「がっ……!?」

「ぐうっ……!?」

ヴァンの奇襲に二人が怯んだ瞬間ヴァンは跳躍からの叩き込み、そして薙ぎ払いへと連携してマフィア達を地面に叩きつけ、そして起き上がろうとしたマフィア達に武器をつきつけた。

「おっと、動くなよ。」

「っ………」

「…………」

「あ………」

ヴァンの勝利にアニエスは安堵の表情を浮かべた。

「コインによる”指弾”……”月華”あたりの使い手か。」

「それとその武装……軍用白兵術とのミックスだな?」

「詳しいねえ。俺は”月華流”じゃないが。――――――さて、装置についてそこまで詳しくはなさそうだが。何の目的で狙っていたのか洗いざらい喋ってもらおうか?」

マフィアたちの分析に感心したヴァンは真剣な表情で問いかけた。

「ヴァンさん……―――――その、私も気になります。どうして貴方がたのような裏社会の人達がこれを……?」

「さて……俺達は上に指示をされただけだからな。」

「だが、それが”彼”の指示なら――――――死んでも達成するだけのこと……!」

アニエスの問いかけに片方のマフィアが答えた後もう片方のマフィアは歯に仕込んでいた薬を噛みしめ、もう片方のマフィアも薬を噛みしめた!



「っ……!?」

「え……」

マフィア達の異変にヴァンが気づき、アニエスが呆けたその時何と二人は起き上がった!

「チイッ……!」

起き上がった二人に舌打ちをしたヴァンは次々と攻撃を加えたが二人は平気の様子だった。

「っ……!?がっ!?」

「きゃあっ……!?」

するとマフィアの強烈な一撃を受け止めたヴァンが背後のアニエスごと地面に倒れた。



「おいっ……!」

「……大丈夫ですっ……でも、ヴァンさんの方こそ―――」

ヴァンの心配の声に対して答えたアニエスは心配そうな表情でヴァンに声をかけた。

「………即効性の薬物強化(ドラッグブースト)。まさかそっちにまで手を出しているとはな……それで破滅した外国の馬鹿共を知らねぇのか?」

一方ヴァンは立ち上がってマフィア達を睨んだ。

「クロスベルのルバーチェだったか。そんな小物と一緒にするな。」

「組織の格も効能も比較になるまい。――――――切り刻まれて死ね。」

そしてマフィア達はヴァンに激しい斬り付けを放ち

「ぐっ……がっ……!?」

「くハハ!どウシタ、さッキの威勢ハ!」

「こノまま嬲り殺してヤル!」

「あ……ああ………」

二人の激しい斬り付けによって次々と傷ついていくヴァンを目にしたアニエスは表情を青褪めさせ

「フフ、トドメダ……」

「死ネ――――――裏解決屋(スプリガン)!!!」

「っ……!」

「だめえええええええっ!!」

そして二人がヴァンに止めを刺そうとしたその時、アニエスが悲鳴を上げながらヴァンの前に出て両手を広げてヴァンを庇った!



「……!?」

(アニエス!?全く、貴女は”こういう時の為に”私と契約したのでしょうが……!)

アニエスの行動にヴァンが驚いている中ヴァン同様驚いたメイヴィスレインはすぐに気を取り直してアニエスの全身を結界で覆ってアニエスを守護した。

「小娘……!?」

「ダッタラマトメテ――――――!!」

一方アニエスの行動に驚いた二人はアニエスごとヴァンを葬ろうとし

(シャード防御――――――いや、間に合わねえ……!ふざけんな……!”俺なんか”の為に――――――)

一方アニエスの結界に気づいていないヴァンが焦りと悔しさを感じていると謎の導力器が突如音を出すと共に光を放った。

「え……」

「……!?」

突然の出来事に二人が驚いたその時、何とその場はまるで時間が止まったようになり、マフィア達の動きが止まっている中アニエスとヴァンは動くことができた。



「こいつ、は……」

(時空間の停止!?)

周りの空間が停止している事にヴァンが戸惑っている中メイヴィスレインは驚きの表情を浮かべていた。

「この光……ひいお祖父ちゃんの……!?」

「ふーん。大変なことになってるわね~。」

謎の導力器が光を放っている事にアニエスが気づくと突如声が聞こえた後、ヴァンの背後に妖精のような姿をしたシャード体が現れた!

「……!?お、お前は……」

「ヴァンさんのザイファの支援AI(ホロウ)……?」

謎のシャード体に見覚えがあるヴァンとアニエスはそれぞれ驚きの表情を浮かべた。

「それでどうするの、ヴァン?悪夢を纏う、纏わない?」

シャード体――――――メアはヴァンに問いかけた。

「ヴァ、ヴァンさん………」

「クク……トンデモ装置にトンデモ現象と来たか……―――いいだろう、悪夢なんざ十何年も前から見続けてる……」

不安そうな表情を浮かべたアニエスが見守っている中ヴァンは苦笑した後自身の過去を思い返した。

「とっととやれ――――――!」

「りょーかい、アタシに任せて!シャード解放―――――悪夢を纏え(テイク・ザ・グレンデル)!」

「グオオッ!?」

「ナンダっ……!?」

そしてヴァンの指示に応えたメアがヴァンの頭上で”力”を解放すると時空間は戻り、襲い掛かって来た二人はメアが解放した力によって吹き飛ばされた。一方ヴァンの背後に(あおぐろ)い鬼らしき幻影が一瞬顕れた後ヴァンは全身が黎の装甲を纏った姿――――”(くろ)を纏いし魔装鬼グレンデル”へと変身した!



「あ………」

(!?あの”姿”は一体………いえ、それよりも今のあの男から感じるこの凄まじい禍々しき力……上級魔族―――いえ、”魔王”……!?)

”グレンデル”へと変身したヴァンをアニエスが呆けた様子で見つめている中メイヴィスレインは驚いた後グレンデルから感じる力の正体に気づくと厳しい表情を浮かべた。

(……この感覚―――――は………)

「グッ……ボスたちに比ベレバドウということはナイ――――!」

「蹂躙スル―――――!!”アルマータ”の名に懸ケテ!!」

グレンデルに変身した自分の姿にヴァンが戸惑っている中マフィア達は態勢を立て直してグレンデルに襲い掛かり

「ヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲンンンッ!!!」

対するグレンデルは咆哮を上げて迎撃を開始した。グレンデルの力は余りにも圧倒的で、薬物によって強化されたマフィア達をまさに”蹂躙”して地面に叩き伏せた!



「馬鹿ナァああっっ……!」

「……バ、化物………が………」

地面に叩き伏せられたマフィア達はグレンデルの強さに信じられない思いを抱きながら気を失った。

「ぁ……―――――っ!」

グレンデルの勝利に安堵の表情を浮かべたアニエスだったがグレンデルから元の姿に戻ったヴァンが疲弊した様子で地面に崩れ落ちるのを見ると慌ててヴァンに駆け寄って声をかけた。

「ヴァンさんっ、大丈夫ですかっ!?身体の方は……」

「……ああ……消耗はしたがダメージはねえ。薬物強化した連中を子供扱いとは…………文字通りの化け物かよ。」

アニエスの言葉に答えたヴァンは倒れているマフィア達を見つめながら自分が先程振るった力の凄まじさを感じていた。

「……今のって……メアちゃんも現れましたよね?」

「ああ――――」

「はいはい、なんなの?用件をいいなさいよね。」

アニエスの言葉に頷いたヴァンはザイファを取り出して画面を開いたがメアはただのパターン反応をした。

「そりゃそうだ……ただのパターン反応だからな。自由人格なんぞ無いし、そんな技術も確立されてねぇ。」

「でも……だとしたら――――――」

ヴァンの話を聞いたアニエスは少しの間考えた後地面に落ちている謎の導力器――――――”ゲネシス”に近づいて手に取った。

「この”ゲネシス”のせい、でしょうか……?」

「関係してるのは確かだろうな。それより――――――”ゲネシス”って言うのか、それは。」

「はい……曾祖父の手記に書かれていた名前です。”オクト=ゲネシス”――――――全部で8つあるとありました。」

「おいおい……マジかよ。」

アニエスの話を聞いたヴァンは驚いた様子で呟いた後立ち上がってアニエスに近づいた。



「……メアの出現、そして俺が妙なバケモノになっちまった現象。それ以前に、この地下遺跡に霊体なんかが現れてたのも……恐らくその装置が原因だろう。」

「はい……”実験観測”に使うものだとかで詳しくは判らないんですけど……」

「なるほど、肝心なことは手記でもボカしてたわけか。あんたの曾祖父――――――C・エプスタイン博士は。」

「!!???」

ヴァンが自分の曾祖父を言い当てた事にアニエスは驚きの表情を浮かべた。

「どうやら当たりみたいだな。――――――半世紀前の導力革命と同時期くらいに造られた骨董品。とんでもない精度の超絶技巧でくみ上げられてるのは一目瞭然だ。何より、確かに導力器(オーブメント)でありながら古代遺物(アーティファクト)顔負けの超現象を起こす。その時期にそんな代物を造るのは有名な”三高弟”にも無理だろう。彼らの師にして導力革命の父――――――クロード・エプスタイン以外には。」

「……………………黙っていてごめんなさい。ヴァンさんには全てお話しします。そもそものきっかけは……」

「いや――――話は後だ。そいつを仕舞っとけ。」

ヴァンの推測に少しの間黙り込んだアニエスはヴァンに謝罪した後説明をしようとしたが、背後へと振り向いたヴァンの忠告によって制止された。



「ヴァン、大丈夫……!?」

するとその時エレインの声が聞こえた後その場にエレインとジャケットの遊撃士、キンケイドとスーツの女性が駆け付けた。

「これは……!」

「やれやれ……一足遅かったようだな。」

その場の状況を目にしてすぐに何があったかを悟ったエレインは驚き、キンケイドは溜息を吐いた。

「そ、そいつらはあの……!」

「アルマータ構成員……!やっと尻尾が掴めましたか!」

「じゃ、邪魔するな!こちらの縄張りだぞ!?」

「そちらこそ……!民間組織は下がって下さい!

一方倒れているマフィア達を目にしたジャケットの遊撃士とスーツの女性は血相を変えてマフィア達に近づこうとしたが、それぞれ立ち止まって互いを睨んで言い合いを始めた。



「いったい何が……彼らと交戦したみたいだけど。」

一方エレインはキンケイドと共にヴァンに近づいて訊ねた。

「ああ……薬物強化までしてきた。”運よく”凌げたが注意しとけ。」

「……!」

「フッ……どう凌いだか気になる所だが。そちらのお嬢さんの依頼も、無事達成できたようだな?」

自分に忠告した後痛みに耐えた様子で片腕を庇っているヴァンの様子を見たエレインは血相を変え、キンケイドは苦笑した後アニエスに視線を向けてヴァンに確認した。

「っ………」

「守秘義務につきノーコメントだ。それぞれ借りがあったはずだが、プラマイで貸しにしとくぜ。末端とはいえ”A”の構成員――――――一人ずつ引き渡してやる。」

「なっ……」

「な、何を勝手に……!」

ヴァンの提案にスーツの女性は絶句し、ジャケットの青年は反論をしようとしたが

「……確かに標的(ターゲット)の無力化は彼の功績でしょう。」

「フフ、ならばGIDとギルドで遠慮なく引き取らせてもらおう。」

エレインとキンケイドはそれぞれヴァンの提案に納得していた。

「もし吐いたら情報もな。――――――そんじゃあ行くぞ。」

「あ……わ、わかりました。せめて肩を――――」

「あー、大丈夫だっつの。」

そしてヴァンはアニエスと共にその場から去ろうとしたが

「今回は手始め……”何か”が動き始めているのは間違いない。精々研ぎ澄ませておけ――――――ヴァン。」

「わーったよ、ルネ。」

「だから名前で呼ぶなっ。」

キンケイドに呼び止められてキンケイドの忠告に頷いた後アニエスと共にその場から去って行き

「……………………(やっぱり認められない。自分一人だけが背負って……わかちあわせもしない在り方は。これならまだ、灰獅子隊にいた時の方が……)」

去っていくヴァンの様子を心配そうな表情で見つめていたエレインはヴァンの身を心配していた――――――

 
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