弓道の矢が射るもの
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第二章
「己の心の悪い部分をだ」
「射てですか」
「己を正し高める」
「それが弓道であって」
「弓道の弓が射るものだ」
部員達に確かな声で答えた。
「そのことを忘れずにな」
「やっていくんですね」
「だから人を射るなぞだ」
そうしたことはというのだ。
「以ての他だ」
「絶対にやってはいけないですね」
「そうだ、自分の心の悪い部分を射て倒すのだ」
「そうして自分を正し高めていくんですね」
「そうするものだ」
部員達に話した、そしてだった。
部員達はこの言葉を忘れずに部活をする様になった、当然そこには育美もいて彼女もその言葉を忘れずにだ。
弓道をしていった、矢を放つ度にだ。
己の心の悪い部分を意識した、それを射て自分を正すと思うと。
「自然と心が研ぎ澄まされて」
「真剣になるね」
「はい、これが弓道ですね」
「そうだね、僕もこの気持ち忘れないよ」
渡辺も応えてそうしてだった。
育美も渡辺も他の部員達も自分を正していった、そして育美は成長するととても真面目で高潔な人と言われる様になった。それはどうしてかと本人に聞くといつも笑顔で今も嗜んでいる弓道のお陰だと言うのだった。
「弓道の矢は自分を射るから」
「自分をですか」
「自分自身をですか」
「自分の心の悪い部分をね」
それをというのだ。
「射て正すから」
「だからですか」
「そうした方になられましたか」
「そうなの、弓道は己の悪い部分を射て倒して」
先生に言われたことを思い出しつつ話した。
「正していくの。それをしているから」
「そうした人になられて」
「これからもですか」
「弓道をしていくわ」
そして自分を高めると言うのだった。
そしてそのうえでさらに己を高めていった、そうして周りからさらに素晴らしい人だと言われるのだった。
弓道の矢が射るもの 完
2024・1・16
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