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飲んで記憶が飛んで

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第一章

               飲んで記憶が飛んで
 朝起きてだ、子安忠夫はまず頭の痛みを感じた、そしてだった。
 リビングに出るといつもと変わらない朝だった、しかし。
「昨日何があったんだ」
「何ってあなた飲んでただけよ」 
 妻の鈴子はこう返した、黒髪を編んで後ろに垂らしはっきりした大きな目と大きめの赤いい唇を持つ色白な顔で背は一六〇位ですらりとした身体である。
「それだけよ」
「飲んだのはわかってるよ」
 夫は答えた、背は一七六位で痩せていて面長の顔に小さな切れ長の目と高い鼻に薄い唇がある。黒髪はショートだ。
「ワイン飲んでたよ」
「白をね」
「昨日お刺身だったからね」
「ご飯の後飲んでたわね」
「ボトル二本空けて」 
 それだけ飲んでというのだ。
「その後歯を磨いて」
「それからはっていうのね」
「何があったのか」
 痛む頭で言うのだった。
「ちょっとね」
「覚えてないの」
「お風呂は入ったよ」
「食べる前にね」
「そうして食べて飲んで」
「歯を磨いて」
「そこからがね」
 どうもというのだった。
「覚えてないよ」
「全く?」
「うん、全くね」  
 こう妻に話した。
「何があったか」
「暴れたとか」
「変なことしたとか」
「そういうことしたか心配なのね」
「僕も飲み過ぎたら」
 その時はとだ、朝ご飯の用意をしている妻に話した。
「記憶がなくなるしその間ね」
「何をしたか気になるのね」
「暴れたこともあるし」
 飲んでというのだ。
「実際にね」
「そうだったの」
「結婚する前にね」
 妻に彼女と出会う前の頃の話もした。
「目が覚めてから言われたことがあったよ」
「そんなことがあったのね」
「だから今回もね」
「記憶がなし間何をしたか」
「凄く心配だよ」
「そこまで心配なら何したか言うわね」
「そうしてくれるんだ」
「まあ座って」
 自分の席にというのだ。
「それで食べながらね」
「話してくれるんだ」
「朝ご飯は食べないと」 
 さもないと、というのだ。
「はじまらないでしょ」
「何もかもね」
「だから食べましょう」
「それじゃあね」
 妻の言葉に頷いた、そうしてだった。
 実際に席に着いた、それで一緒に白いご飯と目玉焼きと味噌汁の朝食を食べはじめたが妻は向かい合っている夫に言った。
「何もなかったわよ」
「なかったんだ」
「あなた歯を磨いたらね」
 彼が記憶のあるまでの話をした。
「それからすぐにベッドに入ってね」
「寝たんだ」
「そうだったわ」
「何をしたか、もっと言えばしでかしたか」
 夫は妻に意外といった顔で述べた。 
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