人生コンティニューしたらスクールアイドルを守るチートゲーマーになった
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87話 現実という名のExcuse
前書き
ナムロドが保有するアークの制御装置は、ブロリーの制御装置みたいなのを想像してください。詳細はその他設定に載せてあります。
「私の計画は必ず実行されないといけない!!!これで内浦も全て吹き飛べゴミカスどもガァぁお、酢ふえんヶ!!!!」
この喜びは狂気から来る喜びか……はたまた心を失った脳が叫ぶ悲鳴か————俺にそれは判断しかねる。しかしそんな計画だからこそ用意周到であると言わざるを得ない。
そんな父に魁は怒声とともに問いかける。
「おい!どこで打ち上げる!?いつ打ち上げる!?こんなバカな作戦今すぐやめろ!!」
「教える———ものか!!」
「!?」
手持ちのバグヴァイザーは不意をついて爆煙を作り出し、サウザーの姿を隠す————そして次の瞬間には完全に雲隠れしていた。
「才、急いでロケットを見つけ出して廃棄しに行くぞ!」
「バカ……核弾頭搭載ロケットを早々どこかへ廃棄なんかできねぇよ。放射性物質が漏れ出したらそれこそ一般人に迷惑がかかる。」
「ならロケットを海に投げ捨てればいい!」
普通の人ならそう考えるだろう。実際核実験も海上で行うからだ。しかし—————そんな甘くない。
「爆弾の威力と技術は未知数だが……電磁パルスが発生する可能性がある。」
「電磁パルスだと?」
「これを発生させるEMP兵器……その存在は噂に過ぎないが、もし発動すればその近隣の国の電子機器が全てシャットダウンされ、ライフラインが停止、多数の死傷者が出るだろう———」
「くっそ……!!ちくしょう!!!」
魁は怒りが収まらず、街路樹をザンバットソードで斬り倒してしまう。しかしそれでもイライラは収まらない。
「どうすればいい……おそらくオハラロケットの発射日は10日後だ———」
「10日後?10日後なのか!?」
「あぁ、どうした?」
俺は額に手を当てて、『しまった!』という顔をする。
「その日は……地区予選の日だ。」
「なっ…!」
ライブが再び波乱を呼ぶ——————!
————————※————————
霞みがかった世界………明らかに現実ではない世界で、高海千歌はキョロキョロと見渡す。
「ここどこ……?」
彼女は気づいていない。自分が《《生まれたままの姿》》であることに—————この空間はまさに胎内、胎内回帰した状態は人間の安心を極限にまで高める。
歩き続けた……歩き続けた。
そして辿り着いた—————その場所に、3つの影が映る。
奥に1人、180cm後半をゆうに超えているであろう人が座っている。その隣には80cm程度の赤ちゃんがその人の胡座に頭を乗せる。
そしてもう1人、こちらに向かってくる————沙羅双樹のような花のワンピースを着た女性、背丈が千歌より少し高い程度の。しかしまだその容貌は見えない。
「誰……?」
『運命はもう回り始めています。』
「え…?」
エコーがかった声が響く。優しい……全てを包み込んでくれる母のような声。
『もうすぐわかるでしょう…自分が進むべき道、自分にとってなくてはならない存在も。』
「どういう———-!」
霞が溶けてゆく……光り輝く白金の髪、太陽のような赤い瞳。
〜〜〜〜〜〜〜
「おーい、千歌さ〜ん。」
美渡が虚空を見つめる千歌に応答確認をする。無論半分バカにしている。
「自分が進むべき道か……やっぱり動かなきゃ始まんない。」
「あの〜?」
「あれ?なんで美渡ねぇがいるの?」
「アンタ……」
3人の神秘………夢か真か、それとも—————
———————※———————
『ロケット発射を食い止めろォ!?』
「しょうがないだろ、俺たちは地区予選が迫っている以上まともに身動きできないからな。」
『んなこと言われても俺たちが怪人退治に追われてんのもわかってんだろ?』
通話越しではあるが途方もなく忙しいことは、竜介先生の口調からひしひしと伝わってくる。
『だいたいこっちはアークと滅亡迅雷.netが何かの企みを食い止めねぇといけねぇし!!』
「企み?どういうことだ?」
俺が聞き返すと、竜介先生に代わって虎太郎がそれを答える。
『あいつら、俺たちに挨拶だけして帰っていったんだ。じきに悪意のエネルギーを一気に集めるって言っていたのがどうしても引っかかるんだ————』
「え……!?」
俺は考え込む………限りなく邪悪な計画が俺の頭の中に浮かび上がってきた。そしてそれを確かめるように虎太郎に訪ねる。
「悪意のエネルギーはどこから集めるとか言ってなかったか?」
『!—国中から集めるって言っていた。』
「まずい————アークもといナムロドの狙いもそのロケットだ。」
この話を聞いている皆に激震が走る。そして魁がそれを詳しく話すようせがむ。
「どういうことだ才?」
「さっき話したEMP爆弾……電磁パルスで対象の電子機器をダウンさせる爆弾だ。原理はわからんが、これによってアークが全国のサーバーをハッキングできる可能性がある。オハラスペックってのは脳波に影響を与えて、悪用すれば怪人にさせられる……そしてそいつらが暴れ出し、秩序が崩れれば、より悪意を持った人々が増え、怪人と化す————」
『無茶苦茶だ!!!』
竜介は叫ぶ。対照的にウォズは冷静にその推測に同意する。
『だが、不可能じゃない。』
「そうだ————だからこそ、一刻も早くそれを止めてくれ!これが失敗すれば人々の日常は崩壊する!内浦どころか———世界が危ない!!」
『『『了解(!!)』』』
通話を終了する。
「この忙しい時に次から次へと……!」
「だが……もうこれでサウザーは終わりだ。」
「どういうことだ?」
「もう奴はこの手段しか残されていない…それを邪魔する意味、よく考えてみろ。」
「————————」
静寂を破るように俺の携帯が鳴る。電話の主は…………千歌か。
「はい、もしもし?—————え?」
『だから!————《《東京》》に!もう一回行ってみよう!?」
「お前な……仕方ない、わかったよ。無論、明日以外な?」
『うーん、じゃあ明後日で!他のみんなにも伝えとくから〜!』
「明後日……変わらねぇ〜」
明らかにいつものパターン。この状態の千歌は絶対に止めても言うことを聞かない———そしてやることは大体正しい。だから反論は一切せずに、受け入れて電話を切る。
「才……嘘だろ?」
「嘘じゃない———どうも俺たちは災難とともに東京に行くみたいだな。」
「もう勘弁してくれ……つーちゃんにラブレター送れないじゃねぇか!!」
「つーちゃん?———あぁ、月のことか……てかそんな理由で落ち込んでんじゃねーよ。」
「うるさい!俺は絶対結婚してやる……この王の意地を賭けてな!」
もうこんな忙しさマックスな時に、勝手でいいから足を引っ張らないでくれよ—————俺は心の中で願った。
〜〜〜〜〜〜〜
右手に嵌め込まれた悪意の知能制御装置が疼く————主人の命令を乞うているかのよう。1人孤独……否、1人の夢魔を隣に携えて、1人笑っている。
「もう少し……もう少しですよ。」
「ナムロド様ご機嫌だね〜♪」
「えぇ……私の頭脳が導いた結論が、もうすぐ現実になるからですよ。」
「じゃあこれで……!」
「いよいよ不効率な人間を削除して、悪意を私の一存で自在に起こすことのできるヒューマギアとやらに置き換える日がやってくるのです!」
邪神の嫌な笑いが響く。善意ある心優しい人間ならばまさしく吐き気を催し、気絶するレベルの————神のオーラ。非常に強い精神力を持っていないと倒れそうなほどの。
「伊口才……!お前の守り可愛がってきた人間は間も無く消える……麗しきナムロド様の養分にね♪あぁ……楽しみ♪」
こちらもまた吐き気を催す。今度は才が絶対に嫌がる女—————神に天から落とされた悪魔。
——————※——————
そびえ立つ横長の施設————静岡学校連盟。
俺と魁、浦の星理事長として鞠莉がその門の前に立つ。そして—————
「あの〜私いる意味ある?明らかに場違いじゃない!?」
「ってちかっちが言ってるけど?」
「Aqoursのリーダーのお前を連れて行かないと、堅苦しい会議になるかもしれないからな。ここは雰囲気を思いっきりぶち壊す。」
「あっそう。で、本音は?」
「勝手に東京行きなんて決めた罰だ。」
「私その程度で吊し上げられないといけないの!?」
鞠莉の言葉にフッと本音を言った俺。そして文句垂れる千歌を無視してその施設へと入ってゆく。
途中たくさんの絵画や高価な水瓶、この組織の略年表などが俺たちを出迎える。そして1番奥の部屋が—————第一決戦場だ。
「失礼する。」
4人の躍り出て、扉を開ける魁。中にはこの暑い日に黒いスーツを着た男性たちがびっしりと並んでいる。唯一着ていないと言えば、渡辺祖父が議長席でベストを着用しているが、これはこの中で1番老齢のためだろう。
魁が先頭に出たのは、おそらく俺に変なことをさせないためだ。俺ならまず扉を蹴破って入っていくことを想像していた。厳粛な場所では厳粛に……これも俺と魁の違いの一つだ。
そして俺たちは議長席とは正反対の4席に座る。それを確認した渡辺祖父が会議を始める。
「ではこれより臨時の理事会を開会する。浦の星学院理事長とその関係者は議題を。」
呼ばれた鞠莉と、その補佐人の魁が立ち上がる。まず話し始めるのは鞠莉。
「私たち浦の星学院は男女共学化を実行したものの、未だ入学希望者はゼロであり、来年には静真高校との統廃合が決定しています。私と、同席している高海千歌さん含め9人及びサポーターはスクールアイドルグループAqoursとして廃校阻止を目標にしています。」
「噂には聞いていましたが、理事長自らスクールアイドルグループに入って活動しているとは……」
辺りがざわつく———すると、理事の中で1番若々しい人物が質問してくる。
「しかし合理的に考えれば、浦の星学院は赤字ゆえに経営合理化をするのは仕方ないのでは?」
「Exactly、ですがAqoursが設立されて以降、CDの売り上げやさまざまなグッズの商標権で浦の星自体に増収が見込まれています。それを考慮してそれをあえて廃校にするのはいかがなものか……」
魁は冷静にその質問に返す————しかしここで、爆弾が投下される。
中堅の理事が言い放つ。
「それは今現時点での話。一時期人気になったとて、いつまでその炎が続くかもわからん。」
「さよう。そもそもラブライブ自体が規模拡大したとはいえ新興のモノ。その熱が収まれば、それこそ今より酷い赤字になろう。」
「………!」
同調する2人の中堅理事。3人の裏切り者とは今質問した3人で大方合っているだろう。若年の理事はビジネス的観点から、そしてこの2人は……何かありそうだな。
魁はその反論に返す………感情をあらわにして。
「この連盟はTOBを受けている……私の父がCEOを務めるオハラエンタープライズから。彼と我々は何度も対立している。彼の狙いは内浦の破壊的な再開発及び地域住民の半強制奴隷化。それをわかってその発言をしているのですか?」
「奴隷化とは、したり……雇用も生まれ、過疎地が開発されるのは我々としても良い話ではないか!」
「そのために人々の暮らしを犠牲にしていいわけがない!!」
「犠牲とは……全く、君たちは問題を仰々しく捉えすぎだ。」
メガネハゲの中年理事がメガネをクイっと動かし、そのウザさをアピールする。
「今の内浦の住民の収入はすずめの涙程度……しかし再開発ならば、その収入は劇的に回復する!——議長、そのためにも我々が持つ株式をすべてオハラエンタープライズに売却し、我々が一丸となって内浦をはじめた静岡県全体を盛り上げていこうではありませんか!!」
周りから歓声と拍手が湧き始める………メガネハゲはしたり顔をする。
「こんなの…………こんなのおかしいよ!!!!」
一斉に拍手が無に帰す。メガネハゲと中年理事を始め、その言葉を発した本人————高海千歌の方を向く。
彼女は想いをぶつける。
「内浦の人たちは瞬間瞬間を必死で生きて————でもみんな笑ってる。自分にできる仕事をやって……暖かいキモチで溢れた街。漁師さんに旅館の女将、みかん農家————それを潰しちゃダメ…ダメなんです!!」
「そんな街ごまんと
「だから!!そんな街も……暖かいキモチを———みんなに届けたいんです!!だから私たちはスクールアイドルやってるんです!!!!」
千歌の魂の叫び………それはハゲの台パンで強制的にかき消される。
「子供は黙ってろ!!!スクールアイドルなど……百害あって一利なしだ!!すぐにも廃止すべきところだ!!それに騙される者も騙す者も、夢を見る子供だ!!大人の世界にそんな夢見がちな話を持ち込むんじゃ
バキン!!!
パキパキ…………
長机がささくれだらけなり、今にも粉々になりそうな程破壊される————破壊者は俺だ。
「詭弁で喋りすぎだハゲメガネ。」
「は、はっ、ハゲメガネだと!?ぶ、ぶ、無礼じゃないか!!」
「夢見がちな子供……そう言ったな?」
「そ、それがどうした!?」
「夢など見ない………じゃあお前は何なんだ?」
「は?」
「人間誰しも夢を見る……理想を語り、心を育んでゆく。それもできない貴様は怪物か何かか?—————いずれにしても、詭弁で俺のリーダーの言葉に泥を塗った挙句、泣かそうとするとは————よほど命知らずだ。」
「「え……?」」
魁と鞠莉は千歌の方を見ると、確かに一筋の涙をこぼしていた……しかしそんな一滴の涙をも見逃さぬ俺に驚嘆する。俺は続ける。
「子どもの心を忘れずに夢に挑み続けるのが人間だ。本来人間のあるべき姿だ。たとえ一つを諦めても絶対に譲れないものがある————俺たちにとって内浦と学校がそれだ。」
「だが私たちにとって再開発も廃校もまた君の言う夢ではないか!!」
「違うな。それは一つの目的を叶えるための手段に過ぎない。手段の目的化……これこそ人間にとって恐ろしいことだ。手段に固執するあまり目的のレベルを下げてしまう………目的のない手段で今まで愛と幸せに満ちていた人々の暮らしを奪うなど話にならん!!」
ハゲメガネは押し黙った—————俺の論には証明がいる。それがトドメ……キメワザだ。
「————議長、スクールアイドルを知る機会として、理事全員で………10日後のラブライブ地区予選に視察することを。」
「「は……?」」
「おぉ!それはいい!!」
「是非見てみたいものだ…!」
皆の声が期待の声に変わり、慌てふためくハゲメガネ。そこに議長の渡辺祖父の声が入る。
「ではそれに視察することで、TOBについての是非を決めることに異議ある方はこの場で起立を。」
ハゲメガネはヘナヘナと倒れ込む…………………
「では、視察について賛成多数で可決する!!」
——————※——————
「「「「———————」」」」
会議を思うがままに動かせた俺……と言っても半分力技だが。これに関しては甘んじてツッコミは受け入れよう。
早速魁から苦情が入る。
「お前……マジで空気読め。」
「それは尤もだが、あの状況で空気読んでたらそれこそ丸め込まれていた————理詰めに対抗するには理詰めの皮を被ったパワーで語るほかねぇ。」
「そうかもしれんが……」
「それに、俺の目的は別にある。」
「え?」
「「!?」」
俺は帰路についていた俺たち4人の後ろを指差す————と、先程俺に恥をかかされたであろうハゲメガネが付けてきていた。それに3人は想定しきれていなかったようで、驚く。
そして腰には……見覚えある奴隷のベルトだー(棒)
「何の用だ!?恨み言なら聞かんぞ!」
俺は左腕で通せんぼして魁の口を止めさせる。
「なるほど……スクールアイドルアンチがたまたまあの場所にいて、サウザーにそいつを与えられたか。俺の思っていた以上に考えの実体が脆いみたいだ。」
「黙れ!アイドル風情が…!」
「で、あの中年理事に金で支援を頼んだか。」
「こうなればお前らを怪我させ…ラブライブへの視察を取り止めさせてやる!!」
「そんなこと……!?!?!?」
魁がそれに応答する時……俺は既に隣にはいなかった。
俺の右脚が禿頭の側面を後面へと吹き飛ばす。生身とはいえ、建物を何棟も打ち抜く人間のキックは地面をグリグリと抉って、ヤツの全身の至る所の骨を折る。
こうなれば戦闘不能だ。
しかし流石に突然すぎたのか、千歌が驚いて注意してくる。
「ちょ、まだあの人なんもしてないよ!?悪い人でも生身の人に酷い暴力は良くないんじゃ……」
「バカ、アイツは10秒後にレイダーになってた。その前に俺が生身ライダーキックを喰らわしただけだ。」
「でも……」
「それに————お前らAqoursを傷つけると申告した時点でアイツはもうボコられるのは確定事項だ。」
「「!!」」
『じきに分かるでしょう……あなたにとってなくてはならない人が。』
後書き
Aqoursの1人でも泣かしたら……次なんてない。
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