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英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~

作者:sorano
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第167話

18:00――――――



”逆しまのバベル”消滅後、ゾア=ギルスティンとの戦いで瀕死の重傷を負い、パテル=マテルによる治癒があったとはいえ、傷が治り切っていなく、逆しまのバベルから脱出後意識を失ったルーファスはウルスラ病院に搬送され、ルーファスの身を心配して救急車に搬送されるルーファスに同行したラピスを除いた並行世界の面々は合流した”オリヴァルト皇子”達と共に元の世界に帰還するリィン達の見送りをしようとしていた。



~クロスベル・港湾区~



「改めてにはなるが、私達の世界のリィン君達を救ってくれた上この世界に送り返してくれた事……アルノール皇家――――――いや、帝国の全国民を代表して感謝の言葉を述べさせてもらう。本当にありがとう――――――並行世界のリィン君達。」

「恐縮です。それに並行世界とはいえ”イシュメルガ”が俺達の世界で現れた時点で、俺達で対処する必要があったのですから、俺達は当然の事をしたまでです。」

”オリヴァルト皇子”の感謝の言葉に対してリィンは恐縮した様子で答え

「その件についても感謝している。本来は私達が倒すべき相手だったのに、並行世界である君達に任せてしまったのだからね……」

「しかも話によるとあたし達の世界の”全ての元凶”はそちらの世界の”全ての元凶”を滅ぼした直後に現れたのでしょう?実質”全ての元凶”を連戦で滅ぼした上、”全ての元凶”と同化していたリィンどころか、クロウやミリアムまで救うなんて”偉業”には正直脱帽するわ。」

リィンの恐縮に対して指摘した”オリヴァルト皇子”は複雑そうな表情で答え、シェラザード皇子妃は苦笑しながらリィン達を見回した。

「まあ、僕達の場合は”そちらの僕達”の時と違って戦力が圧倒的に充実していたというのもありますが、僕達が”全ての元凶”の元に辿り着いた時点で既にリィン達が決着がつけていましたからね。」

「”剣帝”や”槍の聖女”どころか、異世界の様々な異種族、女神や魔王、挙句の果てには”本物の空の女神”までシュバルツァー達の味方とか、戦力がチート過ぎるだろ、そっちの世界のシュバルツァー達は。」

「そして幾ら内戦の直後とはいえ閣下による”国家総動員法”によって更なる強化をされた帝国を相手に圧倒的な勝利をした所か、共和国をも呑みこんだ異世界の大国――――――”メンフィル帝国”は凄まじい強国ですね………」

「しかもあの盟主(グランドマスター)を討った上、私とアリアンロード以外の”蛇の使徒”達も全員暗殺して結社を崩壊させるなんて、とんでもないわね……」

シェラザード皇子妃の指摘に対してヨシュアは苦笑しながら答え、”レクター”は肩をすくめて苦笑しながらリィン達を見つめ、”クレア”はリィン達から聞かされたリィン達の世界の”黄昏”時の事を思い出して静かな表情で呟き、”クロチルダ”は信じられない表情で呟き

「ま、そのとんでもない”強国”を相手にしても一歩も退かず、”黄昏”を利用しての戦争をしたのはオッサンらしいけどな。」

「…………今思えば、閣下はメンフィル帝国との開戦を決めた時点で、”メンフィル帝国ならば閣下御自身を全ての元凶ごと葬ってくれる”と悟っていたのかもしれません。戦略的・政治的に考えれば内戦の直後のエレボニアがかつて”百日戦役”で大敗してしまったメンフィル帝国とそのメンフィル帝国と連合を組んで共に共和国を呑みこんだクロスベル帝国を相手に戦争等、普通に考えれば”無謀”ですから。もし閣下が御自身の破滅を望んでいなければ、クロスベル侵攻が失敗――――――いえ、内戦後メンフィル帝国から期限までに賠償責任を実行しなければ即刻開戦するという警告も明確に記されていた”内戦の件での3度目の賠償要求”が来た時点で、様々な”代償”を支払ってでもメンフィルに交渉し、開戦までの時間稼ぎをしたと思います。」

レクターは苦笑しながら答え、クレアは複雑そうな表情を浮かべて推測を口にした。



「オズボーン宰相の”自分自身どころか帝国を滅ぼしてでも、イシュメルガを滅ぼす”という想いは水鏡や幻想機動要塞でのやり取りで知ってはいたが………」

「それでも結果的に望み通りイシュメルガを滅ぼす事ができたとはいえ、そちらの世界のオズボーン宰相の決断によってそちらの帝国が今まで経験した事がない”冬の時代”が訪れた件は帝国人として色々と複雑だな。」

”ラウラ”は重々しい様子を纏って呟き、”ミュラー”は複雑そうな表情を浮かべて呟き

「帝国がそのメンフィル帝国との戦争によって敗戦した上、その戦争で学院長を含めて数十万人以上の犠牲者を出して、領土も3割くらい失って、更に”帝国”が”王国”に格下げになったという話は幾ら並行世界の話とはいえ、ちょっと複雑だよね……」

「しかも皇女殿下は内戦の件でのメンフィル帝国の要求を実行する為に”アルノール皇家の一員”としての立場を捨てさせられた上国外追放の処分まで受けさせられて、更にリィンの専属使用人としてリィンに仕えさせられているという話だもんな……」

「そして敗戦後のエレボニアは領土割譲を含めたメンフィル帝国による数々の要求に従い、その要求の一つであるメンフィル帝国による”保護”も受け入れた事で、メンフィル帝国による”総督府”が置かれたエレボニアはこちらの世界のエレボニアに併合されたかつてのクロスベルのような状況に陥っているなんて……」

「そんでシュバルツァーは戦争を終わらせる為にトールズを辞めて、メンフィルとやらの軍人の一人になってエレボニアを徹底的に叩きのめしてエレボニアの”総督”になったとか、オレ達の世界のシュバルツァーと同一人物とは思えないくらい突き抜けているじゃねぇか。」

「この場にラーちゃんがいなくてよかったね~。」

「ああ……彼らの話によれば、ルーファスはクロスベル侵攻時にリィンに討たれたとの事だからな。」

”エリオット”や”マキアス”、”アリサ”は複雑そうな表情で呟き、”アッシュ”は皮肉気な笑みを浮かべてリィンを見つめ、ナーディアとスウィンはこの場にはいないラピスを思い浮かべてそれぞれ複雑そうな表情を浮かべた。



「並行世界の話だから、そっちの世界にとっては”部外者”のあたし達がリィンの件も含めて文句を言う”資格”がないのはわかっているけど………今もこうしてそっちのリィンと一緒にいるという事は、そっちの世界の”黄昏による戦争での結果”も受け入れたのね?」

「ええ。まあ、個人的には色々と”借り”がある”メンフィル帝国のリィンのもう一人の担当教官”であるあの女将軍にはいつか必ず、何らかの形で”借り”を返してやりたいとは思っているけどね。」

「サラ、まだそんな無謀な事を考えていたんだ。」

「そもそもセシリア将軍はメンフィル帝国――――――異世界の国の皇帝の親衛隊長の一人なんですから、ゼムリア大陸側のメンフィル帝国の領土が”戦争”のような非常事態にでもならない限り、僕達どころかゼムリア大陸にも関わって来ないのに、どうやって”借り”を返すんですか。」

「ハハ、並行世界とはいえ、”そういう所”が一緒なのもサラらしいな。――――――というか、そっちの世界の俺には同情するぜ……ユミルの件の責任として降格処分どころかオレドに”異動”させられた事で”黄昏”時のエレボニアに関わる事すらできなかったんだからな。」

「しかもレマンの本部の人達がトヴァルさんを陥れるように暗躍した張本人がよりにもよってレンって………”黄昏”の時も色々と暗躍したって話だし、そっちの世界の”レン”はあたし達の世界のレンよりも相当腹黒くなっているみたいね。」

苦笑しながら確認した”サラ”の確認に対して頷いた後セシリアを思い浮かべて顔に青筋を立てて笑顔を浮かべて答えたサラの様子にその場にいる全員が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中フィーとマキアスは呆れた表情で指摘し、トヴァルは苦笑した後疲れた表情で呟き、”エステル”はジト目でレンを見つめて指摘した。

「失礼ねぇ。レンはメンフィル帝国の皇女の一人として皇家や政府の意向を忠実に実行しただけよ?」

「レン、貴女ね……」

「いや、あんたと同じ”メンフィル帝国の皇女の一人”のプリネもそうだけどリフィアもあんたみたいな腹黒い事はしていないじゃない。」

「同じ”レン”なのに、どうしてここまで違いがあるんだろうね?」

「ふふっ、仕方ないわよ。そちらの世界の”レン”は結社に拾われたレンと違って、メンフィル帝国の前皇帝に拾われた上”養子”にしてもらった事でメンフィル帝国の皇女の一人になって”戦場”では結社時のレンのコードネーム――――――”殲滅天使”の異名を轟かせ続けているという話なんだから、恐らくそちらの世界の”レン”は”結社にいた頃のレンがそのまま成長した形になって、今のレンに到っている”のでしょうから。」

肩をすくめて呆れた表情で答えたレンの答えにプリネは呆れた表情で頭を抱え、エステルはジト目で指摘し、”フィー”の疑問に”レン”は苦笑しながらレンを見つめて自身の推測を口にし

「け、”結社にいた頃のレンちゃんがそのまま成長したレンちゃん”ですか………」

「しかも一国の皇女――――――それも”軍事大国”として有名だった帝国に圧勝した強国の皇女という身分も合わさっているのだから、敵に回せば相当厄介な存在なんだろうな、そちらの世界のレンは……」

「そしてそんなレンさんを相手でも、”親友”になった並行世界のティータさんの懐の広さには脱帽しますね。」

「全くやな。――――――って、そのティータちゃんで気になっていたんやけど、オレ達の方のティータちゃんの姿だけ見当たらへんのは何でや?」

”レン”の推測を聞いた”クローディア王太女”は”結社時のレン”を思い出した後表情を引き攣らせながらレンを見つめ、”カシウス中将”は疲れた表情で推測し、静かな表情で呟いた”リース”の言葉に同意した”ケビン”は”ティータ”の姿が見当たらないことに気づき、首を傾げた。



「この世界のティータなら今、レボリューションの格納庫でパテル=マテルのデータを取っているわよ。」

「え………」

「何?何でティータがそんなことをしているんだ?」

レンの答えを聞いた”レン”が呆けている中”アガット”は不思議そうな表情で訊ねた。

「さあ?どうしてか知らないけど、貴方達がここに来る少し前に来てレン達の世界のパテル=マテルのデータを取りたいって必死に頼んで来たから、特別にレボリューションへの入艦を許可したのよ。パテル=マテルのデータも本来なら軍事機密だけど、レン達が並行世界であるこの世界にもう2度と関わることなんてないでしょうからね。」

「ティータちゃんが”必死になってまで頼んできた”……ですか。一体ティータちゃんはどうしてそこまでしてまで並行世界のパテル=マテルのデータを……」

(ヨシュア、ティータはもしかして……)

(うん、僕達がレンに内密で進めている”プレゼント”の為なんだろうね。並行世界とはいえど、”パテル=マテル本体のデータ”は”プレゼント”を成功させる貴重な参考データになるからね。)

肩をすくめて答えたレンの答えを聞いた”クローディア王太女”が戸惑っている中、察しがついた”エステル”と”ヨシュア”は真剣な表情で小声で話し合い、

「……お前の方はいいのかよ、並行世界とはいえど、かつての”相棒”に話したい事とかあるんじゃねぇのか?」

「いいのよ。レンの相棒(パテル=マテル)はあくまでレンの世界のパテル=マテルであって、並行世界のパテル=マテルは違うし………それに例え世界は違えど、相棒(パテル=マテル)が健在で”レンの相棒”である事を知る事ができた事だけでも十分よ。」

「レン………」

複雑そうな表情で確認してきた”アガット”の言葉に対して苦笑しながら答えた”レン”の答えを聞いた”エステル”は心配そうな表情で”レン”を見つめた。



「それにしてもルーファスさん側の仲間として力を貸していたのが君達だったなんてね……」

「フフ、不思議な縁だな。」

「?何だかナーちゃん達の事を知っているような口ぶりだね~。」

「まさかそちらの世界では、既に”そちらの俺達”との面識があるのか?」

エリオットは興味ありげな表情でスウィンとナーディアを見つめ、ガイウスは静かな笑みを浮かべて呟き、エリオット達の反応が気になったナーディアは首を傾げ、スウィンは若干驚いた様子で自身の推測を確認した。

「ああ。実は最終決戦の時に帝都の状況を私達が知る必要があったのだが……その時に偶然互いの目的が一致して私達に協力してくれた人物――――――ヴァン・アークライドという人物が君達に帝都と繋がっている地下道の探索と帝都に潜入して帝都の状況を探ってもらうように手配してくれたのさ。」

「へ~、そっちの世界ではそんなことがあったんだ~。それにしても懐かしい人の名前が出て来たね、スーちゃん。」

「ああ………確かにたくさんの”借り”があるヴァンの依頼なら、俺達も請けただろうな。」

「あら……まさか貴方達もヴァンさんとの知り合いだったとはね。」

アンゼリカの説明を聞いたナーディアは興味ありげな表情で呟いた後懐かしそうな表情を浮かべてスウィンに視線を向け、視線を向けられたスウィンは静かな笑みを浮かべて頷いて呟き、”レン”は目を丸くして呟いた。



「レン?」

「その”ヴァン・アークライド”という人物はもしかして君の知り合いでもあるのかい?」

”レン”の反応が気になった”エステル”は首を傾げ、”ヨシュア”は不思議そうな表情で”レン”に訊ねた。

「ええ。3年前リベル=アークでレンがエステル達から逃げた後、マイスターの紹介で一時的にお世話になった人よ。結社――――――ノバルティス博士からレンが逃げ切られるように匿ってくれた上、レンがクロスベル入りするルートを確保してくれたのもヴァンさんよ。」

「ええっ!?それじゃあその人はレンにとって”恩人”にもなる人なんだ……」

「ふふっ、リベル=アークを去ってから”影の国”であんたと再会するまでのあたし達の知らないあんたの空白の期間をこんな形で知る事になるとはね。」

「君の口ぶりから察するに、レンもそのヴァンさんという人の事を信頼しているみたいだね。」

”レン”の説明を聞いた”エステル”は驚き、シェラザード皇子妃は苦笑し、”ヨシュア”は微笑ましそうに”レン”を見つめて指摘した。

「そうね。それにしても並行世界とはいえヴァンさんがⅦ組に協力するなんて意外ね。確かあの人はレンやナーディア達のような”訳アリ”の人達の依頼しか受けないはずよ。」

「え、えっと……当時のヴァンさんが受けていた”別の依頼”の関係上、最終決戦時の帝都に潜入するアンちゃん達B班と一緒に行動をした方がヴァンさんにとっても都合がよかったからというのもあるんだけど………」

「そもそもそのヴァンがエレボニアに来たのはわたし達の世界のレンの”依頼”のせいでもあるんだけどね。」

意外そうな表情を浮かべた”レン”の疑問にトワは気まずそうな表情で答え、フィーはジト目で答えた。



「”レン”の?そっちの”レン”は一体何の為にヴァンさんを戦争時のエレボニアに呼び寄せたのかしら?」

「簡単に答えるとしたら、”不動”と一緒に当時の俺達に協力してくれた”エレイン”っていう準遊撃士に対する”嫌がらせ”だよ。」

「へっ!?そっちの世界ではジンさんもⅦ組のみんなに協力していたんだ!?そ、それに”エレイン”って名前の遊撃士の人は確か……」

「共和国で活動しているB級――――――”剣の乙女(ソードメイデン)”の異名で呼ばれている女性遊撃士だね。」

「確かサラに次ぐ新たな最年少A級遊撃士になるんじゃないかって噂だよね。」

「ええ。何でも既に本部から何度も”A級”の昇格の打診をされているけど、頑なに固辞しているという話は聞いているわ。」

意外そうな表情を浮かべて訊ねてきた”レン”の疑問に対してクロウは疲れた表情で答え、クロウの話を聞いた”エステル”は驚き、”ヨシュア”は真剣な表情で呟き、”フィー”の話に”サラ”は頷いてある人物――――――エレインについての説明を捕捉した。

「そのエレインさんという遊撃士に対する”嫌がらせ”と言いましたが、一体そちらのレンさんは何の嫌がらせの為にそのヴァンさんという人物を戦争時のエレボニアに呼び寄せたのですか?」

「オルディスでそのチビ猫とオークレールが実際にやり合って互角にやり合った事に気に入らなかったチビ猫がメンフィルのスパイの連中にアークライドを見つけさせて、幼馴染同士のオークレールとアークライドが”戦場”で敵対し合う関係になるように仕向けやがったんだよ。」

「人聞きの悪い言い方をしないでくれるかしら?ヴァンお兄さんがレンの依頼を引き受けたのも、レンが強制した訳じゃなくてあくまで”レンの依頼がヴァンお兄さんにとっても都合がよかっただけよ?”」

”ティオ”の疑問にアッシュはジト目で答え、レンは肩をすくめて悪びれもなく小悪魔な笑みを浮かべてアッシュの説明に指摘し、それらを聞いた並行世界の面々は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。



「あ、悪趣味………」

「つーか、ナジミ同士がやり合うように仕向けるとか敵側がやるような事じゃねぇか。」

「結社にいた頃のクソガキがそのまま成長しただけあって、皇女としての立場を悪用して碌な事をしてねぇじゃねぇか……」

「しかも”嫌がらせ”の為だけに諜報員達を動かす等、大人げないにも程があるだろう。」

我に返った”ユウナ”と”アッシュ”はジト目でレンを見つめ、”アガット”と”カシウス中将”は呆れた表情でレンを見つめた。

「ハア……並行世界とはいえ、まさか”レン”がヴァンさんにそんな悪趣味な事をしていたなんて知りたくなかったわ。」

「うふふ、貴女(レン)がやった訳じゃないのに随分とヴァンお兄さんの事を気にかけているみたいだけど……まさかとは思うけど、そっちの”レン”はヴァンお兄さんに恋したりしているのかしら♪」

疲れた表情で呟いた”レン”にレンは小悪魔な笑みを浮かべて自身の推測を指摘し

「”そういうの”ではないわよ。ただ、そうね………今思うとレンが”今のレン”になったのも、ヴァンさんに背中を押してもらった事でエステル達と向き合えるようになったから、ヴァンさんにはエステル達やロイドさん達とは違った信頼をしているのよ。」

「レンがそこまで言うなんて……」

「ハハ、機会があれば俺達も会って話をしてみたいな。」

レンの邪推に対して苦笑しながら否定した後ヴァンを思い浮かべて懐かしそうな表情を浮かべながら答えた”レン”の話を聞いた”エステル”は驚き、”ロイド”は苦笑し

(う、う~ん……並行世界のレンがあそこまでまともになっているという事は、ひょっとしたらあたし達の世界の方のレンもヴァンさんと行動させたら性格ももう少しまともに変わったのかしら?)

(幾ら何でもその考えは早計過ぎますわよ……)

(そもそも並行世界のレンと僕達の世界のレンの状況はあまりにも違い過ぎるから、並行世界のレンが歩んだ人生はほとんど参考にならないと思うよ。)

(それにレンちゃんも並行世界のレンちゃんの年になったら、考え方も少しずつ大人に成長する事で性格ももう少し丸くなるんじゃないかな~?)

ジト目で二人のレンを見比べて呟いたエステルの推測にフェミリンスは呆れた表情で指摘し、ヨシュアとミントは苦笑しながらそれぞれ推測を口にした。



「話は変わるけど、この世界のリィンお兄さんの”報償”についてオリビエお兄さんやアルフィン皇太女はどう考えているのかしら♪何せ大戦を終結させた上遥か昔から帝国を蝕んでいた”呪い”を一身に引き受けて己を犠牲にしてでも”呪い”を滅ぼそうとした”悲劇の英雄にして大戦終結の英雄”が帰還したのだから、そんな”英雄”には”相応の報償”があるべきだと思うのだけど?」

「レン、貴女ね……」

「そもそも”報償”とは”相手に求めるものではなく、相手が自発的に考えて授けるもの”なのだがな。」

「あたし達はもうすぐこの世界を去るのに、去った跡を濁すような事をしないでくださいよ……」

「全くよ。レンにとってもいい迷惑よ。」

「”報償”だなんて……俺はそのようなものの為に今まで戦ってきたわけではないのですから、必要ありませんから殿下達が考える必要はありませんよ。」

小悪魔な笑みを浮かべて”オリヴァルト皇子”とアルフィン皇太女に問いかけたレンの問いかけを聞いたプリネは呆れた表情で頭を抱え、レーヴェは呆れた表情で、ツーヤは疲れた表情でそれぞれ指摘し、”レン”は呆れた表情で呟き、”リィン”は謙遜した様子で”オリヴァルト皇子”とアルフィン皇太女に指摘した。

「いや、リィン君には私達アルノール皇家――――――いや、エレボニア帝国から何らかの”報償”を与えるべきだという並行世界のレン君の意見には私も賛成だし、私自身、”黄昏”の件も含めて今まで何度もお世話になってきたリィン君には何らかのお礼をしなければならないとずっと考えていた。帝国はリィン君から決して返し切る事ができない”恩”を受けたのだから、今度は私達がその”恩”を返す番だ。」

「はい。さすがにメンフィル帝国のような”報償”は無理ですが……最低でもリィンさんに勲章の授与や報奨金を支払う事もそうですが、爵位の授与とリィンさんとエリゼのご実家のシュバルツァー家の爵位を陞爵させる事も必要だと思いますわ。……ただ、それでも帝国がリィンさんから受けた”恩”に対して到底つり合いませんが……」

「姫様……」

静かな表情で答えた”オリヴァルト皇子”の意見に頷いたアルフィン皇太女は自分が考えた報償内容を口にした後困った表情を浮かべ、アルフィン皇太女の様子を”エリゼ”は複雑そうな表情で見つめていた。



「あら、”帝国が用意できる最高の報償”を用意するのは簡単だし、帝国にとっても国内外共にメリットが発生するから、そこまで悩む必要はないと思うわよ?」

「リィン教官どころか、”帝国にとっても国内外共にメリットが発生する帝国が用意できる最高の報償”ですか?」

「しかもそれを用意するのも簡単との事だが、一体どのような”報償”なのだ?」

「ま、まさか……」

「その”まさか”だろうね~。」

「クク、これで今後のお前の周りは騒がしくなることは確定だな。」

意味あり気な笑みを浮かべたレンの話が気になった”クルト”と”ラウラ”はそれぞれ不思議そうな表情を浮かべ、心あたりがある”リィン”は表情を引き攣らせ、”ミリアム”は苦笑し、”クロウ”は口元に笑みを浮かべていた。



「その”報償”とはね…………―――――リィンお兄さんをアルフィン皇太女の”皇配”にしちゃえばいいのよ♪」

「「え。」」

そしてレンの提案に並行世界の面々がそれぞれ石化したかのように固まっている中アルフィン皇太女と”エリゼ”はそれぞれ呆けた声を出し

「な、なななななななっ!?リ、リィンをアルフィン皇太女殿下の”皇配”にするって事は、リィンがアルフィン皇太女殿下の結婚相手になるって事じゃないか……!?」

「た、確かに帝国の次期女帝に内定されている殿下の伴侶として選ばれる事は”帝国が用意できる最高の報償”ですし、用意の方法も簡単ですね……」

「それに”その身を犠牲にしてまで大戦を終結させて奇蹟の生還を果たした英雄”が皇太女殿下と結ばれれば、間違いなく”ヨルムンガンド戦役”の件で失ってしまった帝国民の信頼回復を大きく向上させる上、国外に対しても帝国の印象回復にもなるだろうから、シュバルツァーと皇太女殿下の結婚は帝国にとってもいくつものメリットが発生するという話も事実だな。」

我に返った”マキアス”は混乱した表情で声を上げ、”クレア”は冷や汗をかいて苦笑しながら、”レクター”は口元に笑みを浮かべてそれぞれ肯定の答えを口にした。

「リィン教官と姫様の結婚で一番の障害になりうる可能性はやはり教官の出自――――――”平民”に差別感情を抱く帝国貴族達ですが……今の”四大”の当主達の顔触れを考えれば、結婚に反対する帝国貴族達を抑え込む事も容易ですわね♪」

「フフ、何せ今の”四大”の当主の半分はミュゼ君とユーシス君で、ハイアームズ候の性格を考えればリィン君と殿下の結婚による”帝国のメリット”を知れば少なくても反対はしないだろうし、アルノール皇家に絶対の忠誠を誓っている父上も事情を知れば少なくても反対はしないだろうし、いざとなったらそちらの世界の私のように私が父上の爵位を奪って賛成するというやり方もあるからね♪」

「それにドライケルス大帝の生まれ変わりであるオズボーン宰相を信頼していた陛下にとってもそのオズボーン宰相の息子であるリィンがアルフィン殿下のお相手になる事には賛成すると思われる上、ドライケルス大帝の生まれ変わりの直系の子供を皇家に迎える事は皇家にとってもメリットがある話にもなるな……」

”ミュゼ”と”アンゼリカ”はそれぞれ口元に笑みを浮かべ、”ユーシス”は真剣な表情でそれぞれ肯定の意見を口にした。



「フッ、勿論私もリィン君が我が義弟(おとうと)になる事は大賛成さ♪帝国に帰ったら、すぐにでも父上や政府に提案しなければならないね♪」

「いい”っ!?」

「えっと、ミュラーさん?オリビエの奴、冗談抜きで洒落にならない事をやろうとしているけどいつもの突っ込みをして止めなくていいの?」

「……そうしたいのは山々ではあるが、帝国貴族の一員として……そして”アルノール皇家の懐刀”たるヴァンダール家の一員としても、皇太女殿下のお相手をリィンにするという提案に反論はない為、今回に関しては止める事はできんのだ……」

「ハハ……という事はミュラーさんも、二人の結婚は賛成なんですね。」

口元に笑みを浮かべてある提案をした”オリヴァルト皇子”の様子に”リィン”が表情を引き攣らせて声を上げている中”エステル”はジト目で”ミュラー”に確認し、確認された”ミュラー”は頭を抱えて疲れた表情で答え、その答えを聞いた”ヨシュア”は苦笑していた。

「え、えっと……その……わたくし自身は別に構わない……(というかむしろ、望む所な)のですが、リィンさんのお気持ちを無視するような事はできませんし……(それにこんな卑怯なやり方でリィンさんと結ばれるなんて、エリゼ達に申し訳ないわ。)」

「そうよ!本人が望んでいないものをあげるなんて、”報償”にならないでしょうが!?」

するとその時アルフィン皇太女は頬を赤らめて嬉しそうな表情を浮かべて自分の本音を誰にも聞こえないように小声で呟いた後”リィン”と”エリゼ”を気にしながら答え、アルフィン皇太女の意見に頷いた”アリサ”は真剣な表情で反論した。

「ああ、リィンお兄さんに他に想い人ができた場合の事?それならその想い人もアルノール皇家がリィンお兄さんの側室として受け入れればいいだけ――――――いえ、いっそレン達の世界のリィンお兄さんみたいに”リィンお兄さんを慕う女性かつリィンお兄さんもその想いを受け入れた女性達全員を特例という形で側室にしちゃえばいいじゃない♪”そうしたら帝国はリィンお兄さんに”地位、金、女の全てが揃った最高の報償”をあげられるじゃない♪」

「まあまあ、その手がありましたわね♪――――――でしたら、是非とも私が教官の側室の一人として立候補致しますわ♪カイエン公爵家の当主たる私がリィン教官の側室になる事でカイエン公爵家とアルノール皇家に繋がりができる事は、カイエン公爵家にとってもそうですがアルノール皇家にとってもメリットがある話にもなりますわよ♪」

「うふふ、それならばRF(ラインフォルトグループ)からはアリサお嬢様を推薦させて頂きますわ♪会長の娘であるお嬢様がリィン様の側室になる事で皇家とラインフォルト家に繋がりができる事はミュゼ様程ではないにしても、双方にとってもメリットがありますわ♪」

「だから、アンタは()めい!ホント、油断も隙もないわね!?」

「シャロンも悪乗りして勝手に私の名前を挙げるんじゃないわよ!?」

”アリサ”の反論に対して答えたレンの更なる提案にその場にいる全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中”ミュゼ”と”シャロン”はそれぞれ目を輝かせて提案し、その提案を聞いた”ユウナ”と”アリサ”がそれぞれに指摘した。



「あ~あ。あの様子だと”向こうのリィン”もこっちのリィンみたいな状況になるだろうね。」

「というか、これって何気に”並行世界の人物による改変”になって不味いと思うのだけど。」

「え、えっと……”零の至宝”の方のキーアさんが何も言って来ない様子から考えると、多分問題はないのじゃないかしら……?」

混乱している並行世界の面々の様子をフィーは呆れた表情で見つめて呟き、ジト目で呟いたセリーヌの懸念にエマは冷や汗をかきながらレボリューション内で待機している”零の至宝”キーアを思い浮かべながらレボリューションに視線を向けた後答えた。

 
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