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貰った心臓

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第二章

「これはいい、それならだ」
「もう使えるものは全部使いますね」
「内臓は」
「そして目も」
「そうしてですね」
「少しでも多くの人を助けるんだ、特に心臓だ」
 この部分だというのだ。
「うちの病院に心臓病の女の子がいるな」
「まだ子供の」
「重度の心臓病で何時どうなるかわからない」
「そうした子がいますね」
「幸い血液型は同じでこの人は健康だ」 
 そうであってというのだ。
「それで心臓もだ」
「健康ですね」
「まさにそのものですね」
「この人の心臓は」
「だからな」
 それ故にというのだ。
「すぐにだ」
「移植しますね」
「そうしますね」
「そうして助けますね」
「そうするんだ」
 こう話してだった。 
 実際に譽田の内臓や目は移植出来るものは全て移植された、それで多くの人が助かったのだった。特に。
 心臓病の少女がそうなった、それで彼女も家族も喜んだのだった。
 少女はすくすくと成長しやがて政治学者となりマスコミの偏向や捏造を批判する様になり特にだった。
「譽田はです」
「ああ、あいつですね」
「そういうのの代表ですね」
「そう言っていいですね」
「全くです」
 断言するのだった、講義の時にも。
「ジャーナリストがしてはならないことをです」
「平然と行っていた」
「しかも悪びれない」
「そうして続けていましたね」
「譽田の様な輩がいたことがです」
 まさにそのこと自体がというのだ。
「日本の恥です」
「全くですね」
「そう言っていいですね」
「全く以てその通りです」
 苦い顔でだ、こう言うのだった。だが。
 彼女はある日だ、雑誌のインタヴューで答えた。
「幼い頃私は心臓を患っていまして」
「それで、ですね」
「命が危うかったそうですね」
「移植しないと」
「それで余命幾許もない状況で」
 その時にというのだ。
「ある人が事故で急死してその人がたまたまです」
「臓器移植ですね」
「それに登録していたんですね」
「それで、ですね」
「その人は多くの人に臓器それに網膜を移植してくれましたが」 
 死んだその時にというのだ。
「私いは心臓を提供してくれまして」
「それで、ですね」
「先生は助かったんですね」
「心臓移植によって」
「その人には感謝しています」
 心から言った。
「事故でお亡くなりになったことは残念ですが」
「それでもですね」
「先生をはじめ多くの人を救った」
「そうしてくれたので」
「感謝しています」
 今も心から言った。
「まことに」
「それでその人はどなたでしょうか」
 取材する記者の一人が尋ねた。
「一体」
「それがわからないのです」
 こう答えるのだった。
「これはプライバシーということで」
「その人の」
「一切聞いていません、ですが」
 それでもと言うのだった。
「その人には今もです」
「感謝していますか」
「命の恩人ですから」 
 少女であった彼女は言った、そして学問に励み譽田も批判していった。誰か知らない命の恩人に心から感謝しながら。


貰った心臓   完


                   2023・11・19 
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