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博士の挑戦状

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第九十三話

                  第九十三話  読書三昧もまた
 カーミラは読書をしつつ自身の使い魔達に話した。
「今私は文庫本を読んでいるけれど」
「手頃なですね」
「大きさが実に」
「それを読まれていますね」
「お金も安く済むわね」
 こちらの話もした。
「そうね」
「左様ですね」
「カーミラ様の資産からすれば何でもありません」
「そもそも賢者の石で富は幾らでも生み出せますし」
「文庫本を幾ら買ってもです」
「さして問題になりません」
「そして財産にもならないわね」
 カーミラはこうも言った。
「文庫本だけでなく今の本は」
「はい、確かに」
「言われてみますと」
「今の本は只の本です」
「誰でも買えます」
「そうしたものです」
「昔の本はね」
 カーミラはかつての時代を思い出しつつ話した、それは今生きている人間がそれこそ誰も生きていない時代のことだ。
「もうね」
「一冊一冊が非常に高価で」
「それ自体が財産になりました」
「装飾も豪華でした」
「そうしたものでした」
「印刷技術が普及しても」
 そうなってもというのだ。
「まだね」
「紙も高価なもので」
「また読める者も限られていて」
「非常に高価なものでした」
「左様でした」
「だから読書をすることは」 
 今の様にというのだ。
「特別なね」
「趣味でしたね」
「限られた者だけが可能な」
「資産も教養もある」
「そうした人だけが出来る趣味でしたね」
「そう考えるとね」
 それならというのだった。
「今こうして私は本を読んでいるけれど」
「あの頃はそうでしたね」
「特別な趣味でした」
「それを満喫されていましたね」
「そうだったわ」
 このことを言うのだった、本を読みながら。


第九十三話   完


                   2023・9・1 
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