色々と間違ってる異世界サムライ
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第5話:ギンコ、初めてダンジョンに挑む
月鍔ギンコperspective
「これがだんじょん?」
るんたったと言う町の中心にある異形の塔が、どうやらノノ殿が言っていただんじょんの様です。
「そう。この中に僕が探しているレベル上限を激増させるアイテムが―――」
「邪魔だ!退け!」
なんだ?
某達の前で揉め事が起こっておる様です。
「駄目だ駄目だ。レベル上限が7しかない奴が高難易度ダンジョンに挑むなんざ自殺行為だ」
「だからこそ、未踏破ダンジョンの中にあるかもしれないアイテムが必要なんだ!私の―――」
「その前に死んだら意味が無いだろ!帰れ帰れ!」
どうやら、この異形の塔は資格が無いと入れない様です。
それより、兵に追い払われた女子の耳の方が興味がある。
と言うか……明らかに他の者が違うし、こころなしか尻から犬の尻尾が生えてる様に見えてしまう……
某はもう、人を斬り過ぎで頭がおかしくなったのかもしれぬ……
が、ノノ殿は臆せず異形の櫓に向かう―――
「レベル上限3だと!?さっきの娘よりもっと駄目じゃないか!」
「……ダメですか?」
「駄目だ駄目だ!帰れ帰れ!」
でも、ノノ殿は食い下がります。
「レベル300な上に聖剣持ちが同伴でもですか?」
「300だと!?何処……」
異形の塔を護る兵が某と目が合った途端、
「レベル300だと!?本当にいたのか!?」
な……何か驚かれているのですが……と言うか、れべるとは本当に何なのだ!?
しかも、周囲の目が一斉に某に向けられる。
れべるが三百もある事がそんなに珍しい事なのか!?
その結果、某達は異形の塔の中にすんなり入れました。
「待ってくれ!」
「ん?」
どうやら、先程異形の塔を護っていた兵に追い払われた女子が付いて来た様です。
「私も連れて行ってくれ!」
「そなたも?」
「そうだ!私には必要なんだ!レベル上限を増やすアイテムが!」
「君も!?僕もなのに!」
今度こそ断ろう!
某は強くそう思いました。
「だめです」
「え!?」
「これは某と『だんじょん』なる陣地にいるマモノとの合戦!合戦です!手打ちは無い。どちらかの命が潰えるまで続くのです。侍の戦とはそうしたもの。遊びではないのですよ!」
「……ツキツバさん……ハッキリ言い過ぎです……」
が、女子は食い下がります。
「レベルが既に300もあるお前には解るまい!レベル上限が低い者の苦しみが!しかも私は誇り高き『氷狼族』なのにレベル上限が7しかないから……私は……私は……」
この女子……泣いてる?
某はただ、合戦がどれ程危険かを説明しただけだと言うのに。
「解る!……解るぞ!」
ノノ殿も!?
「僕は勇者セイン様の仲間になって一緒に魔王を斃したいのに、まだレベル3なのに『レベル上限達成者』になっちゃって……だから、僕は欲しいんだ!レベル上限を激増させる方法を!」
気付けはノノ殿と女子が手を握り合っていた。
「同士!」
その時、ノノ殿の手が光り、
《報告:レベル上限40倍が発動しました。対象者のレベル最大値が280となりました》
《報告:対象者が『レベル上限達成者』の称号を剥奪されました》
「……え?……」
ノノ殿が呆然としております。
すると、先程の兵がやって来て、
「そこのレベル3の子!君は『レベル上限40倍』と言うスキルを持ってるぞ!」
某は意味が解りませんでした。
ノノ・メイタperspective
『レベル上限40倍』……
どうやら、僕は他人のレベル上限を40倍にするスキルがあるらしいです。
で、僕のスキルでレベル上限が7から280になった氷狼族の子はメキメキと実力を現わしていた。
その子は『セツナ』って言うんだけど、戦闘の際は巨大な氷で形成された爪を両手に纏って戦うらしいんだけど……
「はあぁー!」
「ぐぎゃぁー!?」
氷狼族は戦闘に特化した獣人だと聞いていたけど、予想してた以上にセンスが良い。
しかも……
「あ、レベルが14になった」
「はぁ!?」
ちょっと待って!入って1時間で7も上昇したのか!?
そう考えてもおかしいよ!いくら低レベルが上がり易いからって常識ではありえないスピードだよ!
う……羨ましいわーーーーー!
「なんだかお前達と一緒にいると、凄い速さで成長するみたいだ」
そう言われてステータスを開く僕。
Lv 3
名前 ノノ・メイタ
年齢 12歳
性別 男
種族 ヒューマン
ジョブ 民間人
スキル
経験値倍加・全体【Lv50】
スキル経験値倍加・全体【Lv50】
レベル上限40倍・他者【Lv50】
称号
レベル上限達成者
非道い!
不味い!
このペースでレベルアップしたら僕はそうなる?
1か月後には、セツナのレベルがどうなるかを考えるだけでも恐ろしい……
それに……
「骸骨が人の様に動くのは確かに面妖だが、力量は下の下の下だ」
通常のスケルトンがレベル1~43なので、レベル300のツキツバさんが相手では歯が立たないのは当たり前だ。
それに、ツキツバさんは経験値貯蓄と言うレアスキルを持ってる。
戦闘で獲得する経験値のほぼ全てを吸収し、貯蓄の限界に達すると溜め込んだ経験値を100倍にして払い戻す……大器晩成型のスキルだ。
もし……その真価が発揮されたら……
あー!レベル100で英雄扱いなのにー!
悔しーーーーーい!
羨ましいわぁーーーーー!
セツナperspective
「うわぁー!?」
私のレベル上限を280にしてくれた少年がまた勝手に宝箱を開けて、ミミックに食われそうになってる。
そして、それを珍しい服を着た少女がいとも簡単に真っ二つにした。
「マモノと言うのは、箱にも化ける事が出来るのか?」
「そうなんだけどね……」
氷狼族はワーウルフの仲間だから、宝箱とミミックの違いを臭いで解るけど、あの少年は必死に目に映る宝箱をこじ開ける。
でも、気持ちは解る!
目の前の宝箱の中にレベル上限を激増させるアイテムが入ってるかもって。
かつての私なら、必ずそうしていただろうから。
一方、少女の方は冷静沈着にこのダンジョンを攻略する。
「持ち込んだ食べ物がもう底をつきました。一旦引き返しましょう」
「待って!まだ目標を達成してない!」
「その前に腹ごしらえです。腹が減っては戦は出来ませぬ」
新人と達人の会話としてはよくあるパターンだ。
もう少し、もう少しだけ、そんな風に戻れない所まで入り過ぎて全滅する。
達人はそれを避けたがる。
だが、好奇心旺盛な新人はそこまでのリスクを考えない。
「まだ進める!今日中に目標―――」
「駄目です!腹が減っては戦は出来ませぬ!」
少年の方が折れた。
「……はい……」
でも、その背中は未練に満ちていた。
だけど、引き返してこのダンジョンを出た頃には私のレベルは40に到達した。
たった1日で33も上昇するなんて異常だ。
それは、あの少年のスキルの影響だ。
確かにレベル上限が3なのは悲惨の極みだ。でも、あの少年のスキルは『強さは種類は1つじゃない』って言ってる気がする。
あの少年のスキルは仲間の成長に欠かせない物だ。その証拠に、レベル上限がたったの7だった私がレベル40に達した。
が……今日集めたアイテムの整理と換金をしている間、
「あと少し進めれば……あと少し進めれば……」
どうやら、あの少年は自分の本当の利用価値に全く気付いていない様だ(笑)……
自分のスキルが勇者セインに大いに貢献出来ると思うんだけどなぁ(笑)……
ま、私はあのウンコセインは好きじゃないけどね!
後書き
回復術士のやり直しのセツナも加え、本作は題名道理に異世界サムライから遠ざかっております。
で、トール・エイバンの『経験値倍加・全体』担当であるノノ・メイタ君。
本作のセツナの言う通り、自分の本当の『強さ』に全く気付いてません。その設定は闇堕ちの危険性を帯びており、何も知らない読者にとっては十分な不安要素でしょう!
ですよね?
後、ウンコセインを信ずるノノと懐疑的なセツナ……
この2人がウンコセインの本当の姿を見たら……
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