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X ーthe another storyー

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第四十二話 虚無その三

「私知ってるから」
「僕は解かないのですね」
「絶対にね。そして」 
 そのうえでというのだ。
「昴流ちゃんも星ちゃんもね」
「生きることですね」
「自分が死ぬのに攻撃しないよね」
「僕は貴女の信頼に応えられる様な人間ではないですよ」
 これが星史郎の返答だった。
「ですから」
「そうね。星ちゃんは嘘吐きだからね」
「はい。絶対にです」
「それでも信じたいから。二人共ね」
「生きて欲しいですか」
「うん。そのうえで星ちゃんが何よりも嫌っている桜塚護の運命も」 
 このことも知っていて言うのだった。
「終わらせてね」
「そうして二人共生きる」
「絶対にね。私昴流ちゃん大好きで」
「僕もですか」
「ええ。だから二人共ね」
「そして僕はですね」
「私と同じ位好きな昴流ちゃんと会わなくても」
 それでもというのだ。
「ずっとね」
「生きることですね」
「その為に術をかけたから」
 だからだというのだ。
「そうしてね。これは賭けね」
「北都さんのですね」
「賭け。勝てば嬉しいわ」
「嘘吐きに賭けますか」
「負けるかも知れないけれど。それじゃあ」
「はい、さようなら」
「さようなら」
 北都は微笑んだ、そして。
 微笑んだ時に目を閉じていてそのまま頭をがくりと落とした、血はそのまま止まることなく流れていた。
 その回想をしてからだ、星史郎は昴流に術のことだけを話した。
「そのせいですよ」
「姉さんの術が貴方を」
「昴流君を護ったのですよ。これで終わる筈だ」
「貴方は終わらせるつもりで」
「さて。ですが昴流君は優しいですから」
 死相に敢えて笑みを出して話した。
「誰かを殺せません。僕への攻撃は外すつもりでしたね」
「それは」
「北都さんと同じですよ」
「姉さんと」
「そうです。僕は僕で全てを終わらせたのです」
 こう昴流に言うのだった。
「術のことは忘れていました」
「嘘ですね、それは」
「どうでしょうか」
「それにです、貴方は僕を」
「そのことですか。最後ですしお伝えしますね」
 いよいよその時が来ていた、それが誰よりもわかっていたからこそ。
 前に倒れ込みつつだ、星史郎は擦れ違う形で昴流の耳元で囁いた。
「僕に好きな人なんていませんよ・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
 昴流はその言葉に目を見開いた、そして。
 星史郎は倒れた、その死に顔は安らかなものだったが。
 昴流はその顔を見ないで正面を見てだ、涙を流して言った。
「星史郎さん、貴方はいつも僕の思う通りのことは言ってくれない・・・・・・」
「終わったか」
 ここで神威が来て言ってきた。
「今しがた」
「神威君、来てくれたんだね」
「昴流さんの気配があるのはわかったが」
 即ち彼が生きているとだ。 
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