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儚き運命の罪と罰

作者:望月
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第二章「クルセイド編」
  閑話「コラボwith銀の守護騎士」その一


注!コラボとか言いながらリオンは出てきません!そしてケイジも少ししかでてきません!
  勿論ハーメルンの黒やん先生からの許可は貰っています。
  主人公はエレギオ!もし彼が銀の守護騎士の世界で能力そのまんまで傭兵やってたらって話です!
  勿論完全オリジナルストーリーです!
  ではどうぞ!


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「ああーヒマだヒマだ、ヒマすぎる」

職場のソファーの上で寝て壁を見上げる日々。礼儀も糞も無い態度にその言葉、『閑古鳥』と言う種類の鳥を連れてこなければならない事だろう。きっと激しく鳴き出すに違いない。

「ううークソッ。リベールは平和すぎるぜ。
 あのクーデター事件だって結局俺達傭兵のでる幕は無かったしなあ」

傭兵、それは戦いを金で得る世界一物騒なビジネスマンと言える人種だ。
そんな彼が働くには、このリベールと言うこの国は余りに平和でしかも軍も庶民の味方なのでとてもやり辛い。それでなくとも遊撃士と言う存在が溢れかえってる今このゼムリア大陸の何処に言っても傭兵と言う存在は胡散臭がられる。凶暴で知られる『猟兵』と響きが似てしまっているのも原因の一端か。
故にエレギオは仕事が無い。勿論こんな看板を掲げていくだけの実力はあるし、本人もA級遊撃士にだってクロスベルの『風の剣聖』アリオス・マクレインなんて化け物を除けば勝てる自信がある。(ちなみにかの『剣聖』カシウス・ブライトはついこの間遊撃士からリベール王国軍に戻ったので除外する)
仕事がないということは貧乏と言う事だ。日々を魔獣の肉で腹を満たしどこぞのクロスベルの爺さんみたいに好きな訳でもない苦トマトジュース(しかも生絞り)で喉を潤す日々には某暴食法剣使いも涙を滝のように流してエレギオに食事を恵む事だろう。
今の彼が食い扶持を繋いでるのはなけなしの貯金と副業(アルバイト)の孤児院の先生のみ。いっそそこで誘われるがままにそっちを本業にしてしまおうかとも考える今日この頃である。

「ああー……いい仕事来ないかなぁ……」

もし仮にいい仕事が来たとしてもこのだらしなさでは仕事のほうが逃げていくと言う事に気が回らないような馬鹿ではエレギオは無いがもうかれこれ二ヶ月もこんな調子である。一ヵ月半はピシッとした服装で事務所の掃除もちゃんと行き届いていた彼は寧ろ良く持ったほうだと褒められるべきだ。

「ああー……なんかドデカイ仕事(ヤマ)に巡りあえないかなぁ……」

なんかもう宝くじを買ったほうが望みがあるんじゃないかと言う風にまで思えてくる。とりあえず日々を頑張って生きて行こうとこの状況(シチュエーション)では安っぽいことこの上ない決心をして服の襟を正した。そこまではまあ良かったのだが。

「…………………………………あぢい」

平和ならお日様さえもカンカンと活発に人を照らしてくれるらしい。吸血鬼ではないが、それでも日に焼けるのが大嫌いなエレギオにとって日光は天敵である。かと言って日傘を持っているような女々しい男でもない。
結論として外に出る気力を粉砕された。
総じてエレギオ・ツァーライトの心情を表すなら。

「…………めんどくせえ」

この一言に集約されるのだろう。

--------

怠惰。
辞書にはその意味として「すべき事を怠けて、だらしがないこと」とある。
エレギオはその意味はともかくとして実に良くできている言葉だと思った。
『怠』で怠ける事を表して『惰』でだらしなさを表している。醜くも実に調和が取れているではないか、と。

「………って何で俺は言葉の勉強なんかしてんだよ」

エレギオは勉強が嫌いだ。そんなこと誰だってそうなのだが、それでもあれから三時間がたって未だ尚一人の依頼人も訪れないどころか通りかかる事すらしない。ここまでくるといっそ何かに呪われているんじゃないかとさえ思ってしまう。そして勿論外出する気にもなっていない。
そんななか暇を持て余して

「思いがけず眼に入った辞書を手に取りましたと、さ」

自分で言って苦笑した。余りにキャラじゃない、こうもう少し不良的なキャラだった筈だと自分であれこれ思案し出す。とりあえずそれに従って辞書を放り投げて、800ミラをドブに捨てた気分になった。ソファーからは立ち上がらないでどうにか拾おうとする。足を伸ばして指先で引き寄せようとしたり届かない手を伸ばしたり……無駄な努力一分の果てに僅か五秒で立ち上がって回収した。

「………何で俺は最初っからこうやって立ち上がって取ろうとしなかったんだろうな」

一度ソファーに寝転んだら中々立ち上がれないのが人間である。そのことを理解するエレギオはその誘惑を断ち切って仕事の受付に腰をおろした。……座った所で、誰も依頼しになんかこねえよと内心で自虐しながら。
頬杖を付きながら眼を瞑る。
再び開いた時にはエメラルドのような緑色に染まっていた。

「ま、どうせ意味無いんだけどな」

その眼を通してエレギオは真実を見る。街を行く人々、その人数、性別、服装、体格、年齢……様々な情報が脳に伝達される。そしてその足が何処に向かっているかさえも。

「……………………………ってアレ?」

その中から約一名、こちらに向かって歩いてくる。

「え、え、え」

驚きでそれしか言えなくなっている中、確かにその足取りはこの事務所に向かって伸びていた。

「え、え、え、え、え、え」

その足は事務所まで来て、それと同時にドアが開いた。

「あの……エレギオ・ツァーライトと言う方はいらっしゃらないでしょうか?」

おずおずとしながら、青い髪の少女が一人立ち止まる。
確かにエレギオが夢にまで見た依頼人だった。

「あ、あ、あ、あ、あ、あ」

ところが当のエレギオは手も届かないような希望が一気に現実に落ちてきた反動で言語中枢に何らかのバグが発生してしまったらしい。あ行を途切れ途切れに連呼する彼を流石に依頼人の少女も不審に思ったのか明らかに疑っている眼でエレギオを見た。

「えーと、ここはエレギオ・ツァーライトの事務所で合ってますよね」

「お、お、お……そうだけど」

漸く調子を取り戻して普通の口調に戻る。やっと現実が正しく認識できたのだ。努めて普通の口調で話しているが内心では「遂に俺の時代がキターーーーーーーーーー!!!!!!」と絶叫している少年がここに一人。まあ事実上の無職と言うのは外聞は良くても保障が受けられない以上ホームレスよりある種辛い物があるのをこの一ヶ月近くで思い知った彼がそうなるのも無理はあるまい。

「それで、依頼か?」

「あ、はい。それでその………エレギオ・ツァーライトと言う方はどちらに…」

エレギオは黙って自分を指差した。何だか口を開いたら余りの嬉しさに叫んでしまいそうな気がしたからだ。

「え、貴方が?」

コクッと一回だけ頷いた。

「あ、そうなんですか!よかったぁ……」

そう言ってその女の子はホッとしたように来客者用の椅子に腰掛けた。エレギオからしてみたら「いえいえ『よかったぁ』此方の台詞でございます。だってお客様は神様ですから!」と言ってやりたい位に嬉しい。もし今この少女から求婚されたら何の躊躇いも無く受け入れられそうなほど。そして勿論彼女いない歴=年齢のエレギオにそんなステキイベントは無い。

「あ、あの……私」

「ん、どうかした?」

「傭兵の方に依頼を頼むのは初めてで……こう言った時何を言えばいいのか……」

「………とりあえずお茶でも飲む?粗茶しかないけどさ」

「え、でも……」

「順を追って説明してやるから、さ。ホレ飲みな」

「あ、ありがとうございます……」

そう言ってエレギオの入れたお茶を口にして、漸く落ち着いたような様子になった。それを見てエレギオはやっと頭が正常に回り始めて話を聞くと言う基本的なことを漸く思い出した。

「まあ自己紹介から。改めてエレギオ・ツァーライトだ。見ての通り傭兵やってる、お前は?」

「私はクローゼ。クローゼ・リンツと言います」

丸でお見合いでもしてるかのようにガチガチに緊張していた二人は漸くお互いのペースを整えた。すかさずエレギオが切り出す。

「それで、依頼内容を聞かせて貰いたいんだけど。
 あ、先に言っとくけど遊撃士とは違って俺は依頼人だろうとこんな口調で話すんだが、
 それが嫌だって言うなら言ってくれ。頑張って敬語使うから」

「あ、いえ大丈夫です。そっちの方が何だか自然だし聞きやすいですよ」

「お、そうか。そりゃあ助かる。それで依頼内容は?」

このクローゼという女の子はかなり裕福な暮らしをしているのだろうとエレギオは踏んでいたので護衛じゃないかと思った。と言うのも彼女の服装はリベールの名門ジェニス王立学院の制服だったからだ。ちょっとした仕草にも育ちのよさが表れている。

「……人探しを頼みたいんです」

「人探し?」

逆にその答えは最も予想から外れていた。育ちがいいのならばかなりの伝手が親なり先生なりとある筈だろう。そうでなくとも傭兵よりは遊撃士か軍に頼むような話だとエレギオは考えている。
だがエレギオは内心でガッツポーズをした。人探しは彼がもっとも得意とする分野だからだ。たとえ相手がA級の遊撃士だろうとエレギオは100%見つけられる自信がある。早くも依頼完了して金を受け取る自分まで見えてくる。もういっそのこと前払いにしてもらおうかとも考えたがそれは流石に図々しいと心の中でその案を却下した。

「ふーん、その人って元カレかなんか?」

「も、元じゃないです!」

「こ、これは失礼」

小さくなって頭を下げたエレギオだったが、その頭の中には

(カレ、の方は否定しない訳ね)

そんなデバガメ的な思考が渦巻いていた。

「……もう」

「ははっ、悪かったよ。それで本題なんだが……ソイツの名前はなんていうんだ?」

「………驚かないでくださいね?」

「驚かねえよ(仕事が来た以上の驚きなんてあるかい)」

「ケイジ・ルーンヴァルト」

「へえケイジ・ルーンヴァルト君、ね。名前はあんま珍しくねえな。そんでもって苗字は……へ?
 『ルーンヴァルト』?」

クローゼはしっかりと頷いてエレギオは思わず天井を振り仰いだ。
……この話がS級の厄介事だといつもの彼ならその名前を聞く前から気づけたかもしれない。
だがヒマで死にそうになっていた彼にとっては依頼人が来たと言う事実自体が劇薬染みた代物であっためそんな余裕は何処にも無かった。
総合してエレギオ・ツァーライトは。
物凄く不幸だった。

--------
傭兵家業にとって情報と言うのは生命線である。エレギオも慢心することなくコツコツと情報屋には通っているし新聞も10年分は保存している。最先端から迷宮入りしてしまった事件まで網羅できてはいるのだ。

「あ、あのさ」

「何でしょうか?」

「ケイジ・ルーンヴァルトってさ……もしかして『白烏(びゃくう)』?」

「……………ハイ」

ケイジ・ルーンヴァルト。階級は十七歳にして王国軍大佐で更には王国王室親衛隊の大隊長と言う異例中の異例。その事からも分かるとおりリベール女王の懐刀。嘗ての百日戦没にて多大な功績をあげ、電撃作戦にも参加。常に前線に在り続ける姿は味方に希望を、敵に絶望を与え続けた。
白烏(びゃくう)。純白の翼を掲げる悪魔。
紛れも無い、『剣聖』カシウスと並んで評されるリベールの英雄だ。間違えようも無い。
そして此方はエレギオも実際に見た話だがその剣技は圧倒的でコレはエレギオの目算だが単純な武術のみで恐らくリベール最強クラスだろう。また純白の翼なんて物は知らないが恐らく何らかの異能は持ち合わせていると見て間違いない。あんまり知られてはいないが眼が紅く変色するとの情報もある。そしてその眼は奇跡さえも呼び起こすとか。
無論尾ひれは付いているかも知れない。情報は全てエレギオが自分の手で手に入れた物ではないし見た事があるのは剣術の一端のみ。
だがそれでもコレだけは言える。

ケイジ・ルーンヴァルトは大陸最強クラスの化け物だ。

とても一介の傭兵がどうにかできる相手ではない。真正面から彼の相手ができる人間などこの国にはもう一人の英雄であるカシウスしかいないだろう。
最早唯の人探しではない。コレはもう超S級の依頼だ。『白烏』と戦闘なんてことになったら命が幾つ有っても足りない。当然断るのが懸命だ。
だが――――――

「白烏、か。まあ良いだろう」

今のエレギオに仕事を選ぶ権利はない。例えその仕事がSランクの難易度を誇るとしても。ここで引く訳には行かないのだ。……そこだけ聞けば少しは格好良いのだが

(さーて、こんだけの大仕事なんだ。当然報酬もがっぽり貰えそうだ)

傭兵の誇りなんてものではなく、そんな風に頭の中で算盤を弾いていたのだ。

--------

「んで、さ」

改まってクローゼの方にエレギオは向き直った。机の上には一枚の紙がおいてある。契約書……確かに依頼を引き受けた、と。エレギオは紙に筆ペンで書く古めかしい契約の方法が好きだった。

「ざっとでいいから事情を聞かせて貰いたいんだけど、良いよな?」

「…………ハイ」

クローゼから聞いた話を纏めると次のようになった。

この少女クローゼ・リンツとケイジ・ルーンヴァルトは幼馴染なのだそうだ。そしてこの間のクーデターの際にもひょんな事から一緒に闘うことになったのだと言う。
ついこの間までは二人でジェニス王立学院に通っていいると言うのには流石のエレギオも驚いた。ジェニス王立学院は名門だが如何に名門と言えど普通軍の大佐が学校に通うか?と言う疑問である。ともかく何ら何時もと変わり無かったのだと言うのだ。
ところがクーデター事件の直後。突然ケイジは彼女の目の前から姿を消したのだと言う。

「『俺の幻影(かげ)は追うな……お前には辛すぎるだけだ』……ケイジは最後に、そう言って去って行ったん…です」

そう言ってクローゼは泣き出してしまった。エレギオはハンカチを黙って差し出してやるとクローゼは礼も言わずに受け取る。マナー違反と言えばマナー違反だがこの際そんな事には眼を瞑るべきだろう。彼女は直ぐに泣き止んだがそれでも眼は赤く充血していて間抜けな…本当に間抜けな事にエレギオは漸くこの少女が軍でも遊撃士でもなく自分を頼ってきてくれたのだと知った。
実力はどうあれ、エレギオはそれ程名が知れている方ではない。彼女がエレギオ・ツァーライトと言う名を知ったのも唯の偶然だろう。
エレギオには一つの切り札がある。『天上眼(セレスティアイ)』、例えどんな穏行だろうと幻術だろうと破る事ができるゼムリア大陸最強の探知能力。何に由来するかは知らないがどんな暗闇(うそ)も照らし出す真実の双眸。ケイジの能力がどんな物かは知らないが確かにエレギオなら見つけ出す事ができるだろう。

だが、逆に言えば見つけてやることしかできない。

真っ向勝負になればケイジ・ルーンヴァルトに勝てる気なんか微塵もしないし、遊撃士や軍のように人員が豊富な訳でもない。少なくともケイジと言う知り合いがいる以上軍にかなりの伝手もあるだろうに、クーデター事件に関わっていたのなら遊撃士の知り合いがいるかもしれないのに。
なのにエレギオ・ツァーライトと言うしがない一介の傭兵を頼ったのだ。

「……………ガラにも無く燃えてくるじゃねえの」

それはエレギオをやる気にさせるのには充分すぎる話だった。だって、言ってしまえば、それはこのクローゼと言う少女にそれだけ評価されたと言う事だから。今初めてエレギオはこの依頼を受けてよかったと心の底から思った。勿論同じくらいケイジ・ルーンヴァルトを恐れてはいたが。
心の半分の不安を消し飛ばすようにエレギオは笑った。

「エレギオさん?」

どうやら少しばかり突然笑い出したエレギオの事を少しばかり不審に思ったらしい。
エレギオは立てかけてあった大型の銃剣『ドラゴンソウル』を担いだ。

「じゃあ早速お仕事を始めるとしようか。よろしく依頼人(じょしゅ)

「は、ハイ……ってえ!?私も仕事する側なんですか!?」

ここに真理を見抜く眼の男と
白き(ハヤブサ)の姫君の
正史ではありえないコンビが結成された。 
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